「初めての歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog

すばらしき日本の芸能、歌舞伎。初心者にわかりやすく説明します♪

六段目 与市兵衛内 勘平腹切の場

2021年5月第2部 は仮名手本忠臣蔵の、「道行旅路の花聟」と、六段目です。

この稿では、六段目の説明をします。

「道行旅路の花聟」では、おかると勘平は、手に手を取っておかるの実家に逃げていきましたね。

詳しくはこちら。

munakatayoko.hatenablog.com

では、六段目にGO!

 

 

五段目では、ある夜、事件が起こり、勘平は自分がおかるの父親を殺したと勘違いをしてしまいます。六段目はその続きです。

六段目の登場人物(五段目の動きから)

判人 源六 祇園よりおかるの迎えに来た

一文字屋お才 祇園よりおかるの迎えに来た

勘平 今はおかるの実家に身を寄せているが、先崎弥五郎らが敵討ちを画策していることを知り、御用金を調達して仲間に入れてほしいと思っている。

おかる 御用金を調達するために、身売りを決意。

おかや おかるの母。

与市兵衛 おかるの父。勘平が敵討ちのためのお金を調達したいことを知り、祇園に行っておかるの身売り話に話をつけたが、帰る途中に斧定九郎によって殺されてしまった。

勘平 イノシシを狙った銃弾が人に当たり、うろたえる。しかし、袂から50両のはいった財布を取って、逃げかえってしまう。

原郷右衛門 塩冶家家来。

先崎弥五郎 塩冶家家来。五段目で勘平と偶然会い、亡君供養の石碑建立の資金(というたてまえの軍資金)として勘平から50両を受け取った。

 

 六段目では、勘平が自身で義父を殺したことに責任を感じて、切腹をしてしまうのですが、勘違いで、死ななくてもよかったのに死んでしまう勘平の哀れさ。勘違いで勘平を責め立ててしまったおかや(義理の母)の悲しみ。何も知らずに身を売られていくおかるのいじらしさなど、千々に心が乱れまくります。暗い場面ですが、最後は少しは救われるのかな。そうでもないか。

今回は、勘平を菊五郎!親父様がやるんですね。これは見なくっちゃイケません!

また、こういう役をやらせると天下一品の東蔵のおかや。情にもろく、一途で正直者のお母さんです。お見逃しなく。5月3日の紀尾井町家話で、東蔵さんの息子の松江さんが「(父、東蔵は)おかやをやるために準備をしてきたのに、初日が延期になってとてもがっかりしている」というようなことをおっしゃっていました。

 

東蔵さん!観に行きますからね!幕があくのを待ってます!(涙)

 

あらすじ

 帰ってこない与市兵衛

おかるの家に、祇園から源六とお才が来ています。ふたりは身売りの決まったおかるを迎えに来たのです。身請けのお金は100両。そのうち50両は、昨日のうちに与市兵衛に渡したということでした。

 

ところがまだ与市兵衛は帰ってきません。お才の話によれば、なるべく早くこの金を渡したいということで、昨日のうちに帰ったというのに、まだ家についていないというのはどういうことかとおかやは気をもんでいます。

 

そうはいっても源六たちは、早くおかるを連れて祇園に戻りたい。残りの50両を置いて、おかるを駕籠に乗せ、無理やり行こうとしたところを帰ってきたのは勘平です。

 

 

「与市兵衛は、50両もって帰ったということなら、おかるを連れて行くのは与市兵衛が戻ってその50両を確認してからでもいいのでは」

と主張する勘平。

「ともかく契約は成立したのだから、早く行きたい」源六。

一触即発の雰囲気となります。

 

舅殺しの疑惑に震える勘平と次第に婿を怪しむおかや

 

お才が、おちついて事の次第を確認していきます。証文もある。印形も与市兵衛のものに間違いがない。そして、

「前金の50両を腹巻きに入れようとするので、物騒だから財布を貸した」と、貸した財布と同じ柄の財布を見せます。

 

その財布を見てぎょっとする勘平です。

 

昨晩、銃で誤って殺した男。その顔までは、暗くて自分は確認しなかった。しかし、その男から盗んだ財布は、まさにこの目の前にある財布と同じ柄……。ということは、自分は舅どのを殺して、金を盗んだということか……!?

 

勘平は呆然自失、鉄砲で胸を打たれるほどの衝撃を受けます。

とっさに、夕べ、舅殿と会ったといい、一応その場の皆を安心させて、源六、お才は、かるを連れ、祇園に戻っていきます。

 

おかやと勘平がふたりきりになったところで、何気なくおかやは「一体どこで親父殿に会ったのだ?」と聞きますが、うろたえて、はっきり返事もできません。おかやが次第にいぶかしく思うところに、やってきたのが猟人たち。

おかや、勘平を責め立てる

 彼らが戸板に乗せて運んできたのは、なんと与市兵衛の死体でした。

 

はじめのうちこそ、「婿殿、この仇はしっかり討っておくれ」と泣くおかやでしたが、死んだ与市兵衛を見ても、驚きもせず呆然としている勘平の様子を見て次第に、気づきます。

 

「昨日、どこで親父殿に会ったのだ。その時親父殿は何か言っただろう。何を言ったのだ。金を渡さなかったのか。何もお前にはこたえられないだろう。なぜならお前が、親父殿を…」

 

と勘平の袂に手を入れ、財布をひきだします。血の付いた財布を手に、お前が親父殿を殺したのだなと詰め寄るおかや。

 

「この財布に入っていた金は、もともとお前に渡すはずだった金なのだぞ。飼い犬に手をかまれるとはこのこと、ようもようもこのようにむごたらしゅう殺したものじゃ。やいやい、ここな鬼よ、蛇よ。親父殿を戻してくだされ」と叫びます。

 

普段温厚で、やさしかったおかやだけに、この怒りが、痛々しくも切実に胸に響きます。

 

勘平とて、おかやの怒りを真っ向から受け止めてしまいます。

 

〽身の誤りに勘平は、五体に熱湯の汗を流し、畳に喰いつき天罰と思い知ったる折こそ

 

そんなところに侍が二人やってきます。それは原郷右衛門と先崎弥五郎。

「浪人の身でありながら50両という大金を調達したのは感じ入るが、不忠不義を働いた者の金子を使うことはできないので、封をしたままお返しする」との由良助の言葉を告げるのでした。

 

おかやは、身も裂けんばかり。50両を渡しただと?やっぱりお前がやったのか。

「夫が婿のために娘を売って作ったお金。それをこいつは待ち伏せして殺して取ったのです。仇を討ってくださりませ!」

 

と腹の底より振り絞るようなおかやの叫び。

勘平切腹。「色にふけったばっかりに」

 

弥五郎と郷右衛門は驚き、その非道を責めますが、勘平は必死に観の潔白を述べるのでした。そして、刀を腹に突き立てます。!

「色にふけったばっかりに、大事の場所にも在り合わさず、その天罰にて心を砕き、御仇討ちの連判に加わりたさに、調達の鐘もかえって、石瓦」と嘆きます。

 

弥五郎たちは子細を聞いて、詳しく与市兵衛の死体を調べると、死因は鉄砲傷ではなく、刀傷であることがわかります。

 

切腹する前に調べてよ~~~(叫)

 

二人の侍、よくよく考えると途中の道で鉄砲を受けた死骸を見たことを思いだします。顔をみたところ、斧定九郎でした。斧定九郎といえば、強欲非道の九太夫の息子。(九太夫は塩冶家の家老ですが、高家に寝返っています) 定九郎はその九太夫が勘当したというほどの、どうしようもない悪党なのです。

疑い晴れて、仲間として認められる

 与市兵衛を殺したのは定九郎に違いない。それを撃ったのであれば、勘平は舅を殺したかたき討ちをしたことになる。あっぱれな働きといえるのではないか。

と晴れて勘平は汚名をそそぐことができました。連判状に血判を押し、勘平は仇討ちの仲間として認められたのです。しかし、傷は深く皆に見守られながら息絶えるのでした。

 

みどころ

勘平が「舅殿を殺したかも」と悟った瞬間

 しかし勘平という男は、運がないというか、勘違いが過ぎるというか。殿の一大事のときにたまたまデートしていたために、はせ参じることができなかった。今度は、舅殿を殺していないのに殺したと勘違いして切腹とは…。

 

自分のために、金を調達してくれた恩のある舅を、自分は故意ではないとはいえ殺してしまった。しかも自分のために用立てた金を死体から盗んでしまった。

 

このショックというのは、どれほどのものなのでしょうか。結局勘違いだったというから余計悲しいですね。

 

みどころは、「おれ、舅殿を殺しちゃったの?」と悟る瞬間です。

それは、お才が与市兵衛に持たせた財布と同じものとして見せた財布。その柄をみて、ふと不安になり、袂の財布と見比べると全く同じ柄。

〽さては夕べ鉄砲で撃ち殺したは舅であったか、はっと我が胸板を二つ玉で打ち貫かるるより切なき思い

 

おかるはお茶を汲んできますが、煙管を落とし、慌てた勘平はお茶を飲んでむせてしまいます。そこからオタオタにうろたえてしまうのです。

おかやのショック

 おかやのショックにも心を寄せて見ましょう。

かわいく、頼りにも思っていた婿殿が、夫を殺した。しかも夫はその婿殿のために娘を身売りさせ、金を調達したというのに。婿殿にあげるお金だったというのに。なんということだろう。責めて責めて責めたあげく、勘平は切腹をしてしまいました。

その後わかった事実は、勘平が殺したのではないということでした。これもまたねえ。自分を責めてしまいますよね。おかやはまっすぐで清らかな人だけに。はあ、辛い。

 

死んじゃっては、どうしようもありませんが、せめて敵討ちのメンバーに入れてもらえたということが、救いということで、六段目は終わりです。

 

ところでおかるは…

おかるは、父が亡くなったことも勘平が亡くなったことも知らず、祇園の街へ売られていきました。おかるがそれらの事実を知るのは、次の七段目になります。

 

いよいよ七段目。幕が開くと、そこからうっすら暗かった五~六段目からは一変して、豪華絢爛、華やかな祇園の一力茶屋に舞台が移っていくのです。

 

5月の上演時間や、そのほかの演目についてはこちら

munakatayoko.hatenablog.com

 

 

小鍛冶

楽しい!これはぜひ、子ども達に見てほしい!初めての歌舞伎は、小鍛冶でいかが?もう終わっちゃったけれどオンデマンドでは、5月21日まで見ることができます。

ステイホームのお供に、お子様といかが。

 

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mirail.video

 

 

小鍛冶は、澤瀉屋十種に選定されており、とてもユニークで初心者にも楽しめるのに意外と上演されていないのですね。前回が平成9年(1997年)というから24年ぶり。

 

内容は、刀鍛冶の男、小鍛冶宗近が稲荷明神の助けを得て、名刀を作り上げるという伝説を舞踊にしたもの。

 

今回(2021年4月歌舞伎座)では、小鍛冶宗近は中車。童子と稲荷明神は猿之助猿之助が、縦横無尽に動き回ります。縦横無尽ってオーバーじゃないですよ(笑)。跳躍するし、カニさんのように横走りするし、ぴょんと飛び出して消えるし。前半の前髪ぱっつんの童子もかわいいですが、後半の稲荷明神こそ、猿之助の本領発揮。

 

あらすじからめて、ご紹介します。

 

かわいい童子の出現が、ミステリアス♪

 

前半。

小鍛冶宗近が、天皇一条院に剣を打つよう命じられたのだが、どうも自信がありません。刀を打つには、トンテンカンテン打つときに、お餅つきのように相棒が必要なのだか、そのよき相棒がいなかったからです。

 

そこで、どうしたものかと稲荷明神のところに祈りにやってきました。

 

一生懸命祈っていますと、そこに突然童子が現れます。そして「家に帰って自分を待ってくれれば、必ず力を貸すであろう」と告げ、姿を消します。

 

この前半シーンは、最初から太棹三味線がベンベンと力強く演奏され、圧巻です。4人の演者が一斉に右に傾くことが何回かあり、「なんだ?この演出は!」と思ったのですが、撥をすくって角度をつけて弾かなければならないため、体を右に傾けて弾くそうです。

一斉に右に傾けるので「お!」という感じです。キレイです。

 

澤瀉屋の面々が、華やかに。

 

後半に入る前の間狂言では、巫女と弟子たちが出てきます。宗近の家で、各々鍛冶の準備にかかっているというところです。

 

今までの上演記録を見てみると、巫女のほか、弟子は二人。でも今回(2021年4月)は4人。コロナ禍で大概人数は減らしていることが多いのに、ここで増やしているのは、出番の少ない人たちに少しでも出演機会を増やそうという考えからでしょうか。4人+巫女さんの衣裳も色とりどりで、コロナネタもあり、きれいで楽しくて、いい間狂言でした。クルクルと踊りながら花道を消えていく5人に拍手が惜しみなく送られていました。

 

いよいよ猿之助の本領発揮。

 

後半は、いよいよ刀を打つところです。宗近が祈りを捧げると稲荷明神が現れます。狐の化身です!頭には狐をかたどった飾りがついていて、隈はおどろおどろしく、カっと口を開けると、ピカっと光る。なんと金歯です。金のマウスピースでしょうか?

 

宗近がトンテントンテンと打てば、狐もトンテンカンテン。それを相槌というのですが「相槌を打つ」の語源ですね。

 

トンテンカンテン、トテトテトテトテ。二人の呼吸はピッタリです。

 

音楽は、太鼓、笛、三味線。胡弓まででてきて、脳内で小人さんが踊りまくってくれるような感じです。

 

狐はリズミカルに拍子をとり、踊りながら、跳ねながら、楽しそうに宗近と息も合って刀を打つのでした。

 

ついに刀は出来上がり、「小狐丸」と名付けられました。

 

ザザザーンっと狐は雲に乗り、鎮守の森に帰っていくのでした。

 

とにかく色彩がきれいで、音が楽しい

弟子たちの衣裳も、それぞれピンク、黄色、白、赤、モスグリーンとそれぞれ違っていてきれいだし、稲荷明神ときたら頭に狐乗っけているし、カニさん走りするし、口を開ければ金ぴかだし、おまけに音がとても楽しい。

ピーひゃら、ぴーひゃら。トンテンカンテン、テンテンたいこに、胡弓までフイーンっと。

 

ちょうど大阪では文楽で「小鍛冶」をやっているとのこと。見られなくてとても残念ですが、こちらもとても評判が良いようでした。

【祈・収束】 5月歌舞伎座演目のご案内

 

緊急事態宣言が発令され、毎日中止のご連絡のハガキが来ます。こちらもつらいが、このハガキを送る側の想いを考えると、もっとつらい。

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 5月の公演

歌舞伎座の5月の公演に関しては、5月3日~11日までが中止となりました。
12日から、また再開することを心より祈りますといいたいが、はてどうなんでしょうか。

29日の東京の感染者は、1027人。国内では5918人感染し、78人が死亡。昨年と全く違う様相を呈しているし、インドも気になります。

12日から再開してほしい気持ちはやまやまですが、緊急事態宣言を解除して大丈夫なのか、正直言うと「できるわけないじゃん」と思う。

でも再開してほしい。

気持ちはあっちにゆれこっちにゆれ、落ち着きません。

緊急事態宣言が解除されても、コロナが収束しなくては意味がないわけですからね。堂々めぐりはもうイヤでござんす。

 

5月の演目

でも、気を取り直して5月の演目のご紹介です!

華やかに! 第1部 11:00~
三人吉三巴白浪~大川端庚申塚の場

三人吉三の中の有名な場のみです。
今をときめく若手勢ぞろいで、バシっと決まるといいですね。
お嬢吉三が右近、お坊吉三が隼人、夜鷹おとせが莟玉、和尚吉三が巳之助と、まあ、人気者がそろいました!

「ひゃー!かっこいい!」だけでもいいけれど、ぜひ前後の話の流れもつかんでから見てください。

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・土蜘蛛

舞踊劇ですが、糸ビュービュー繰り出す迫力の面白さです。昨年、一昨年と土蜘蛛がらみの演目がいくつかかかっているので、すでにおなじみになっている方も多いかもしれません。病に侵された源頼光のところに、怪しい僧が現れ、蜘蛛の糸を吐き出して消えていく。後半は、平井安正と四天王が土蜘蛛と戦い、退治します。

1時間ほど。

土蜘蛛が松緑。頼光が猿之助という顔合わせ。がっぷり四つに組んだ戦いが見られそうですね。
また四天王には松緑の長男、左近クンが出ます。注目です。また太刀持音若は、寺嶋眞秀くん。こちらも見逃せませんよ。

 

忠臣蔵だよ! 第2部 14:30分~

仮名手本忠臣蔵 道行旅路の花聟

塩冶判官が切腹した四段目の後の演目となります。ご主人の一大事のときに仕事をさぼっておかるといちゃついていた勘平。二人はその場から、おかるの実家へと逃避行をするのですが、その道行です。踊りと立ち回りがキレイですよ~。

とても楽しめると思います。

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仮名手本忠臣蔵 六段目与市兵衛内勘平腹切りの場

道行旅路の花婿の後の5段目をすっとばして、6段目となります。
5段目では、おかるの実家に身を寄せたおかると勘平ですが、ある夜、事件が起こり、勘平は、自分がおかるの父親を殺したと勘違いをしてしまいます。それが5段目です。

6段目は、そのことを悔やんで、勘平が切腹をしてしまいます。
勘違いで、死ななくてもよかったのに死んでしまう勘平の哀れさ。勘違いで勘平を責め立ててしまったおかや(義理の母)の悲しみ。何も知らずに身を売られていくおかるのいじらしさなど、千々に心が乱れまくります。くらい場面ですが、最後は少しは救われるのかな。そうでもないか。

今回は、勘平を菊五郎!親父様がやるんですね。これは見なくっちゃイケません!
また、こういう役をやらせると天下一品の東蔵のおかや。情にもろく、一途で正直者のお母さんです。お見逃しなく。詳しくはこちら!

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菊之助だよ! 第3部 18:20~

・八陣守護城(はちじんしゅごのほんじょう) 湖水御座船

播磨屋だよ!と言いたいものの…。
八陣守護城 湖水御座船では、吉右衛門が出演予定でした。発表もないまま、どうなっているのか不安が募っていましたが、本日、松竹より発表がありました。

www.kabuki-bito.jp

3月末に心臓発作を起こし、現在入院中、しばらく療養に専念とのことです。

どうぞ、ゆっくり静養をされてください。

代役は、歌六がつとめるとのこと。盤石ですね。

 

「八陣守護城 湖水御座船」のもとになったお話は、加藤清正徳川家康から勧められた毒酒を飲んだ後も100日も生き続けて、秀頼を守ろうとしたという伝説からきています。

加藤清正ならぬ佐藤正清が主人公。船の上の正清一行のところに探りを入れにくる敵。毒を盛ったはずなのに、まだ元気だなあ?と首をかしげながら帰っていく。そのうちについに毒が回ってきて…という場のお話です。

短いですし、話が面白いというよりは、役者の大きさを見るという感じの演目です。吉右衛門の替わりに歌六がドーンと存在感たっぷりの見せ場にしてくれることでしょう。

・春興鏡獅子

尾上菊之助が、鏡獅子を踊る!

鏡獅子は、明治26年初演だそうですから、意外と新しいのですね。昔からあった「枕獅子」を作り替えた作品だそうです。

前ジテは、女小姓の弥生が、余興に引き出されて踊り、そのうちに獅子の精霊が乗り移って後ジテでは獅子に変身し、毛ぶりも鮮やかに、勇壮に踊ります。

今回は、菊之助が踊ります。まず見て後悔のない絶品の鏡獅子だと思います。
国立劇場にある大きな鏡獅子の像を知っていますか?平櫛田中のこの作品は、六代目尾上菊五郎がモデルです。菊之助のおじいさんです。

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6代目尾上菊五郎をモデルに20年かけて作られた!平櫛田中作・国立劇場(東京)

 あの像のように凛々しく美しい鏡獅子が見られるはずです。

そしてもう一つ。今回楽しみなのは、間狂言で胡蝶を勤めるのが、かわいい亀三郎君と丑之助君であること。丑之助クンはいうまでもなく菊之助の長男。順当にいけば、菊之助が8代目菊五郎、そして丑之助君は将来の9代目菊五郎候補というわけです。2013年生まれの小学校3年生かな。

亀三郎クンは、彦三郎丈の長男。これまたかわいくて達者なボーイです。こちらも2013年生まれ。

もう3ヵ月も前から二人は一生懸命練習をしているそうですよ。それがこの状況でいつ初日が開くともわからない。大人だってきついストレスなのに、小さな二人は何を思っていることでしょう。無事踊らせてあげたいものです。

 

上演スケジュール

 初日2021年5月12日(水)~千穐楽  28日(金)

第一部午前11時~

第二部 午後2時半~

第三部 午後6時20分~

休演日

19日(水)

チケット金額、売り場

  • 1等席15,000円
  • 2等席11,000円
  • 3階A席5,000円
  • 3階B席3,000円
  • 1階桟敷席16,000円
  • ※開場は開演の40分前を予定

チケットは、歌舞伎座木挽町広場チケット売り場、または
チケットWeb松竹
にて購入できます。

歌舞伎座アクセス


東京メトロ日比谷線・都営浅草線銀座駅[3番出口]
東京メトロ銀座線・丸ノ内線日比谷線 銀座駅[A7番出口]徒歩5分
◯ JR・東京メトロ 東京駅 タクシー10分


歌舞伎座の感染予防対策

歌舞伎座は厳重な対策をとっています。くわしくはこちら

 

 

 

 

 

完全保存版 ザ 歌舞伎座

さて、緊急事態宣言が出ると、図書館も閉まるかもしれないので、慌てて行ってきた。

うちの最寄りの図書館は、今年の4月にリニューアルオープンをした。場所も若干移動して、今までよりさらに近くなって、きれいになってホクホクである。

 

図書館も緊急事態宣言で休館になるのかどうか聞いてみたが「まだ何にも云われていないので、明日以降どうなるのかわからないんです」とスタッフも当惑顔。とりあえず本を借りておくことにした。

 

新しくなった図書館は、本当は4階建てくらいの図書館であってほしかった。ワンフロアだけというのが、とても残念だ。荒川区のゆいの森あらかわという図書館が4階建てで素晴らしいので、あれを目指してほしかったな。

 

でもきれいだし、子ども用のブースもかわいらしい。みんな物珍しさもあって、結構人が入っているが、歌舞伎関係の本があるコーナーは、一番隅っこなので人がおらず、とても落ち着く。この図書館に行くと、必ず座って、お気に入りの写真集を眺めるのだが、お定まり。その本が

「完全保存版 ザ 歌舞伎座」という写真集である。

https://www.amazon.co.jp/%E5%AE%8C%E5%85%A8%E4%BF%9D%E5%AD%98%E7%89%88-%E3%82%B6%E6%AD%8C%E8%88%9E%E4%BC%8E%E5%BA%A7-%E7%AF%A0%E5%B1%B1-%E7%B4%80%E4%BF%A1-%E7%8E%89%E4%B8%89%E9%83%8E/dp/4062155141/ref=sr_1_6?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&dchild=1&keywords=%E3%82%B6%E6%AD%8C%E8%88%9E%E4%BC%8E%E5%BA%A7&linkCode=qs&qid=1619250353&sourceid=Mozilla-search&sr=8-6

 

これが素晴らしいの上に爆とか超とかバリとかつくレベルだ。撮影は篠山紀信で、案内役が玉さまなので推して知るべしなんだけれど。

 

歌舞伎座をくまなく見せているのだが、歌舞伎座を愛する玉三郎が「歌舞伎座のあらゆる風景、あらゆる思い」を撮ってもらおうと案内役となって、篠山紀信が撮影しているのだ。

 

きっとみなさんは「きれいな玉三郎がいっぱい載っているんだろうなあ」と想像されていると思うが、まあ、事実そうですけれど、この本のすばらしさはそこではない。

 

あらゆる風景ということで、俳優、地方、絵描き、大道具、照明、小道具、床山狂言作者、といったスタッフが、それぞれの職場、持ち場で撮影されている。絵の具だけドーンと写されているページもあれば、スタッフがお風呂に入っているところなど、ありとあらゆる人とモノが写されていて、そのどれもが汚れていて(不潔という意味ではなくて、汗が染みこんでいるという感じで)美しい。子役の楽屋では、一人の子役が腰元に化粧をしてもらっている。とんぼ道場では、若者たちがとんぼの練習をしている。海老蔵は大屋根の上に座っていて、クイっとこちらを振り返ってみている。

 

構成もすごくいい。一枚一枚の説明は、一番最後にまとまって書かれている。その文章も、玉三郎歌舞伎座への愛にあふれている。

昨年秋の、歌舞伎座での玉三郎歌舞伎座ご案内を思い出す。本当に、どれだけこの人は歌舞伎座を愛しているのだろう。泣ける。

 

そして、特筆すべきは表紙の写真。豪華絢爛な阿古屋の衣裳をまとった玉三郎の周りをズラリと取り囲んでいるのは竹田奴たち!!「この日のために、みな顔を念入りに作っていたようです」との玉三郎のコメントがあるが、本当にへんちょこりんな顔ばかりでものすごいインパクトだ。

 

この本を、図書館に行くたびに眺めていたが、借りてきた。このほかにも何冊か本を借りて、巣ごもりをする。巣ごもりのお供としては悪くない。毎日眺めるとしよう。

 

あ。巣ごもりといっても、まだGWは始まってもいなかったし、仕事が終わっているわけでもなかった(;^_^A 真面目にやろう。

 

でも正直言って、今日は全然手につかないよ…。

 

 

 

 

緊急事態宣言vol.3 4月25日~5月11日

緊急事態宣言が、明日4月25日より発出されることになった。

 

歌舞伎座では4月28日が千穐楽だったが、あと3日を残して上演中止となってしまった。

それにしても急である。

金曜の夜宣言で、日曜から中止とは。

私が持っていたのは楽のチケットだったので、これは無理かと思っていたが、まさか明日から中止とは。周知期間とかないのか。

「明日より中止」と歌舞伎美人で公式発表があったのは本日土曜のお昼ごろ(正確な時間はわからないが、少なくとも朝ではない)だった。

 

全く、胸が痛い。

特に歌舞伎座は、本当に慎重に慎重を重ね、役者もスタッフも感染なきよう十二分に注意をしていたし、観客もまた手指消毒と検温はもちろん、おしゃべりもせず、飲食もせず、マスクをして黙って着席をして黙って観劇をしているだけという努力を重ねた上で、クラスターなどを出さずに今まで来た。

 

おしゃべりせず、黙ってみているだけなのに。。。

 

25~28のチケットだけ持っていた人もたくさんいるだろうに。

36年間楽しみにしていた人もいるだろうに。

5月も3日から11日まで中止となったが、平日働いているからGWにがっつり見ようと思っていた人もたくさんいるだろうに。

事実、TLにはそんな人たちの嘆きがあふれている。

 

役者さんたちも。

昨夜は紀尾井町夜話を聞いていたが、どれだけ役者たちが気を遣って1年間過ごしてきたか。移動一つとっても、食事一つとってもそれはそれは気を遣っている様子がうかがえたのだが。

 

歌舞伎美人によれば

www.kabuki-bito.jp

 

4月歌舞伎座は、4月25日より4月28日まで公演中止

5月歌舞伎座は、5月3日から5月11日まで公演中止

シアターコクーン「夏祭浪花鑑」が初日5月6日から11日までが中止

とのこと。

 

国立劇場

国立劇場小劇場の5月文楽公演が5月9日~11日

そして、国立文楽劇場の4月文楽公演の千穐楽4月25日 が中止となった。

www.ntj.jac.go.jp

大阪の国立文楽劇場では、人形遣い吉田簑助さんがこの千穐楽をもって引退することとなっていた。

最後の一日が前倒しになることとなってしまった。

 

辛い。

 

11日で事態が収まればいいが、どう考えてもそう簡単にはいかないだろう。去年の3月のようにずるずるずるずると延期延期となるのではないか。考えたくはないが。

そして、その一方でオリンピックだけは開催するらしい。

 

こんなことを続けていたら、役者もスタッフもみんな本当に壊れてしまう。

 

悲しみがだんだんと怒りに代わってきています…。

 

松緑さんブログを挙げておきます。932を読んでください。

blog.shouroku-4th.com

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やるせない!

 

仮名手本忠臣蔵 道行旅路の花聟 美しい踊りとコミカルで華やかな伴内・花四天との立ち回り

2021年5月の歌舞伎座2部は、仮名手本忠臣蔵です!長いお話の中で「道行旅路の花聟」と六段目がかかります。この稿では「道行旅路の花聟」のお話をします。こちらは、塩冶判官が切腹した四段目の後の演目となります。

 

ここの段は40分ほどで、美しい踊りと後半の伴内とのやり取りが見せ場です。

「きれい!後半華やかで楽しい!」で終わってもいいのですが、なぜここにこの二人がいて、どういう状況なのかを知っておくと、もう少し楽しめますよ!

そこまでのお話。

 

「道行旅路の花聟」の主人公勘平とおかるが、物語に初めて出てくるのは三段目です。

 

早野勘平は塩冶判官の家来。おかるは、塩冶判官の妻である顔世御前に仕える腰元でした。二人は恋人同士でしたが、オフィスラブはご法度ですから、なかなか会うこともできません。

 

顔世御前から高師直にあてた手紙を渡すよう頼まれたおかるは、これ幸いと小躍りします。登城の口実ができて、恋人勘平と会えるからです。

 

果たしておかると勘平が、仲睦まじく逢瀬を楽しんでいたころ、場内では塩冶判官が松の廊下で高師直に切りつけ、大騒ぎとなっていました。

 

すわ!何かあったかと職場に戻ろうとした勘平でしたが、すでに緊急事態発生ということで裏門は閉められていました。

 

大変!ご主人様の一大事のときに、オフィスの外で恋人と逢瀬を楽しんでいて、なにもできなかったのですからこれはもう大失態です。

 

ご主人を追って切腹するしかないと思いつめた勘平でしたが、おかるはそれを止めます。

 

「まずは私の実家に逃げましょう」と。なんというか楽天的というかポジティブというか軽いというか、だからおかるなのです。

 

お詫びをするにしても、まずは生き延びてというおかるの進言に従い、二人はおかるの実家に身を寄せることにしたのです。

そして、判官切腹、お城明け渡しの四段目が終わり、この道行となります。

 

内容と見どころ

 

前半美しく、後半華やかで楽しい

前半は、美しい二人の踊りです。後半は、おかるに横恋慕をしている鷺坂伴内が手下を連れて追いかけてきます。花四天やこっけいな鷺坂伴内とのやり取りが楽しく華やかです。

微妙に違う二人の感情

愛し合ってはいるものの、二人の気持ちは微妙に違います。おかるは、大変なことになったといいつつも、ついに二人で旅に出ることができ、ずっといっしょにいられて、しかも頼りになる実家に行くことになったので、どこかウキウキうれしさがにじみ出てきてしまいます。

 

一方勘平は、そこまで浮かれてはいません。なんということをしてしまったという後悔、恥辱、情けなさ。そんなものがチラチラと表情に現れては消えるのをお見逃しなく。

 

道行の途中でも、勘平は

「主君の大事を余所にして、しょせん生きては居られぬ身の上、そなたは後に永らえて死後弔いをたのむぞや。おかる、さらばじゃ」

 

なんて、刀を構えたりするのですが、おかるは必死に止めます。

 

「私のせいであなたは不忠者になったのですから(おかるが誘ってイチャイチャしてたからね)、あなたが死ぬなら私も死ぬ。そうしたら、心中で死んだとみんなに言われて、誰もあなたをほめませんよ」

と屁理屈でもなんでもこねて、必死に止めるのです。

 

勘平は、ムムと言い返すことができません。とにかく私の実家まで行こうと言われて、従う勘平も、ちょっと弱いというか、なんというか(;^_^A

色彩美しく、華やかな立ち回りとこっけいな鷺坂伴内

そこへおかるに横恋慕をする鷺坂伴内が花四天を引き連れ、追いかけてきて、立ち回りとなります。

敵に向かえば、勘平は凛々しく、雄々しく、かっこよくバッタバッタと敵を倒していきます。

とても華やかで、鷺坂伴内の道化的なふるまいが楽しいです。

 

最後の花道はどうでしょうか。ウキウキおかると、ふっと辛そうな表情を見せる勘平をチェックできましたか?

2021年5月歌舞伎座での役者

2021年5月の歌舞伎座では、おかるが梅枝で勘平が錦之助ですから、とても美しい道行になると思います!

 

浮世絵から抜け出たような二人の道行がとても楽しみです。中村錦之助は、中村梅枝のおじにあたります。

また鷺坂伴内は萬太郎。梅枝の弟です。錦之助おじは、若い甥っ子二人を引っ張り、チームワークよくまとめてくれるのではないでしょうか。

萬太郎が伴内をどれだけそつなくこなせるか、こちらもちょっぴり心配でもあり楽しみです。いい意味で裏切ってほしいですね!

 

2021年5月の歌舞伎座2部の仮名手本忠臣蔵では、この「道行旅路の花聟」と六段目になります。五段目を飛ばして六段目になるので、そこらへんも予習しておくといいですよ。後で書きます。

哀れ勘平の運命やいかに。

桜姫東文章(3)上の巻 セリフに見る権助のワルっぷり

桜姫東文章って、すれちがいの話ですね。

すれちがう人々の想い

白菊丸は清玄と心中する気だったが、清玄は生き残る。
清玄は、白菊丸が転生した桜姫に心を奪われるが、桜姫は全くその気はない。
桜姫は権助に惚れるが、権助は桜姫に惚れているわけではない。
長浦と残月も、思い思われているわけではない。

ポスターを見てロミオとジュリエットのような燃え上がる純愛物語を想像した人がいたら、それは大間違いで、どれもこれもすれ違っている。

一方が思いを寄せれば、一方はかなた遠くを見ている。その先にはまた別の景色があって、どこまで行っても誰の気持ちも重ならない。が、運命の糸だけはつながっているのですね。

桜谷草庵の場について。

さて、色気たっぷりな場なので、意識が飛んでいる方が多いと思いますが(笑)、台本をみると、桜姫の色気と権助のワルっぷりが、さらによくわかるので、書いておきますね。

 

桜姫の本人無意識の色気「まちゃ」と「おじゃ」

桜姫は、権助の入れ墨を見つけて、ハッとし、権助が恋しい男であることに気づく。

みなが別室へ移ろうとするところに、さらに
「ああ、待って」と声をかけるところからは、もう剃髪する気はさらさらなくなっている。
ゆっくり、局たちに休息するように言って下がらせる。

権助も下がろうとするところ

「いいや、そちは去なさぬ。まあ、待ちや」の桜姫の言い方の色っぽいこと。玉三郎すごっ!

先ほどまで出家すると言っていた人とは思えない。権助にさらに
「くるしうない。ここへおじゃ」
と近づけさせる。この「待ちや」と「おじゃ」が、ねっとりと絡みつくようです。無意識ながら桜姫も何とか男を近づけようとしているさまは、そうだ野生動物を捕まえようと必死にさりげなくふるまいながら餌を投げかけているようです。

半端でない権助のワルっぷり

桜姫に呼び止められて、どういうことか訝しく思いながら、草履を脱いで座敷に上がる権助ですが、そこでぞうりを置きっぱなしにせずに、左右を見て草履をたもとに入れるのは、さすがワル。

いつでもどこでもさっと逃げ出せるよう常に前後左右にアンテナを張って注意深くしているのは、そう、まるで野生動物のよう。

確かにここで草履をたもとに入れておいたのは、野生動物のよい勘で、後でとっとと逃げることに成功するわけですね。

自分と同じ彫り物を桜姫も彫ったことを、桜姫の告白で、権助は知ります。


桜姫 「(1年前)怖うて、ぞっと慄う手を」
権助 「いやおうなしに引き寄せて、まだ初物の七十五日、生き延びるとは延喜の好い、無理な仕事と思わずも、手間をとるのも思案の外、鶏のなく音に驚いて、そのままずっと出で行くを」
桜姫 「心づかねば引きとむる」で、そのときに桜姫は男の彫り物をみたのです。

この権助のセリフ、どういう意味かといいますと、


問答無用に引き寄せて見れば、バージンだったぜ。初物を食えば75日生き延びるというからこりゃ縁起がいいわいと、手間をとってしまったがちょうだいしたよ。朝になったのでそのまま出て行ったけどよ

と言っているのです。バージンであることをカツオの初物かなにかのように言う、まさにクズな男なんですね。

 

では、権助は、桜姫のところに悪五郎の手紙を届けてきたときに、桜姫が「あのときの手籠めにした女」であることを認識していたのでしょうか。

 

桜姫が同じ彫り物をしていたことを知り、はいたセリフが
「わっちと同じ入れ黒子。そうとは知らず、どんな気で居るやらすびいて見ようぞとわれと望んで入間の使い」

とあります。入間悪五郎に頼まれて、文を桜姫に届ける役目を自ら手を挙げたのは、以前手籠めにした桜姫がどうなっているのか、さぐりを入れてみようと、使いに来ることにしたという意味です。「すびいて」という言葉は「誘って。試して。気をひいて。探りを入れて」という意味だそうです。

いやあ。ワルイやつですねえ。

それでも桜姫は、恋に盲目状態です。

権助に「坊主になるのはやめるの?じゃあまたお姫様になるのか?」と聞かれて
やだ、そんなと顔を赤らめる桜姫。
なんだよ~?と権助が問うと
そなたの女房とやら!と 顔を隠してやっとのことでいうのです。

なりたいのは、そなたの女房だと。

純情にもほどがある!

にんまりするのは権助です。またもう一発できるわなと。←たぶんこれしか考えていない。

そして抱き寄せ、絡まり、桜姫の帯くるくる、桜姫も権助の帯をくるくるです。

すだれが下りて、着物の裾がはみ出て見えていますが、するすると中に入っていくのがすごいですね。

この後、さっさと権助はとんずら。清玄が濡れ衣を着せられて、売僧坊主とののしられて追放されます。
売僧坊主は「まいすぼうず」と読みます。堕落した坊主のことです。

いつも左右を確認して舌なめずりをしている権助はワルですが、清玄はまっすぐ前をみている凡人です。下の巻では、この二人の関係も明らかになります。


おまけ
すてきな言葉遣い

「ええ、煙管をおとして尋ねるので、すてきに手間をとった」
「なに。ぽてれんになった。アノたった一度で、そいつはすてきに飛んだ話だ」

すてきにという言葉は、今は魅力的だという意味ですが江戸時代には「はなはだ。ひどく。ばかに。たいそう。めっぽう。たくさん」という意味で、当時流行していた言い回しだそうです。今時の言葉を遣うヤンキーなんですね、権助
そいつはすてきに飛んだ話だ。ってなんかいいなあ。使ってみたいです。

毎日8時半を過ぎると、3部を観終わった人たちの感想がツイッターに上がります。「桜姫東文章」という毒にやられた累々たる屍が、今夜も積み重なっていくことでしょう。

 

ああ、そいつはすてきに飛んだ話だ!