「初めての歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog

すばらしき日本の芸能、歌舞伎。初心者にわかりやすく説明します♪

女鳴神

3月の歌舞伎座。昼の部最初の演目は予習不要の肩ひじ張らずに楽しめる「女鳴神」です。もともと歌舞伎十八番に『鳴神』という作品があります。この主人公の男女が入れ替わった作品です。

・登場人物

鳴神尼 片岡孝太郎

雲野絶間之助 中村雁治郎

・あらすじ

松永弾正の娘が、尼となって龍王ヶ峰の山深く籠っています。松永弾正は、信長に滅ぼされたため、鳴神尼は信長を恨んでいます。

法力で信長を困らせようと、近くの大滝の滝つぼに龍神たちを封じ込めたのです。龍神たちは雨を降らせる神様ですから、世の中には雨が降らず日照りが続いてしまっています。

 

信長はその呪いを解くために、イケメンの雲野絶間之助を鳴神尼のもとに遣わします。

 

鳴神尼は、最初のうちこそ、弟子の白雲尼、黒雲尼に向かって話をしている絶間之助を無視して、修業中を装っています。しかし次第に気になって、ついつい話に引き込まれ、しかも絶間之助は、許婚の富若丸に似ていて、とっても素敵じゃないの♪ 次第に夢中になって戒壇から転がりおちるところがかわいいですね。そこは鳴神と同じです。

 

気絶している鳴神尼に気付けの水を口移しで飲ませる、ニクイ絶間之助。

 

鳴神尼はすっかりポーっとなり、二人は奥の座敷へしっぽりと…。

 

しばらくして一人ででてきた絶間之助は、「今だ!」とばかりに滝つぼにあるしめ縄をばさーっと切ります。どーっと龍神たちが天にのぼり、雨が降り、雷が鳴ります。(作り物の龍神たちがちょっとかわいいです)

 

「はて、雨が降る。雷が鳴る!さては行法やぶられしか!」

鳴神尼は怒り狂います!かわいさ余って憎さ百倍!そりゃそうですよね。鳴神尼の怒りはごもっとも!

 

そして、恐ろしい姿に変身するのです。衣裳は白地に真っ赤な炎がグアラグアラ燃え盛っています。髪は派手に逆立ち、隈取はこの世のものではない青の筋が入り、おお怖!

 

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荒れ狂う鳴神尼!怖いよー!

 

鳴神尼を退治にしに来た佐久間玄蕃盛政が、ノシノシと花道から舞台へ鳴神尼を戻していく「押し戻し」と言われる演出でさらに盛り上がります。

松嶋屋によく似た化け物めーーー!」なんて台詞も飛び出し、丁々発止で見得でおわり。

鳴神と女鳴神。演目はどっちが好きかと聞かれたら、個人的に言えば鳴神のほうが好きかな。どうしてかと考えたのですが、なんだか女鳴神は、鳴神尼がかわいそうになっちゃって(笑)。

 

男鳴神の場合は、強そうな人(男)に、弱そうな人(女)が勝つから痛快。女鳴神は、なんだか男にだまされてかわいそう!って思っちゃうんですよね。まあ私が女だからかもしれませんが。

 

・見どころ

・尼さんが、ポーっとイケメンに騙されていく様

・弟子の白雲尼、黒雲尼も結構コミカルな役回りで楽しい

・ぶっかえり(衣裳の糸をさっと引き抜き、着物の上半身を裏返すと、衣裳も変われば性格や状況も変わる演出) しおらしい尼さんが、恐ろしい化け物に変身!

・押し戻し 荒れ狂う妖怪や化け物を花道から舞台へ押し戻す演出

 

 

楽しめますよ!!どうぞお気楽に!

 

 

 

・上演時間

11時から12時5分(65分)

 

幕見なら

チケット販売開始は10時半。1200円です。やっすー!

 

3月27日まで。ぜひどうぞ。

3月の歌舞伎一幕見ツアーは、3月20日に開催♪

2月が千穐楽を迎えました。

昼の部も夜の部も素晴らしかったですね…。

昼の部をもう一度観たいと思いつつ、それはかなわず。夜の部は千穐楽に2回目を幕見で通しで観ることができました。

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待ち時間なし。通しで買えば寒い思いもせず、楽々ゲット。

吉右衛門の熊谷陣屋で涙を振り絞り、当年祝春駒で華やかにほっとくつろぎ、そして名月八幡祭で、名人芸を堪能する。どれも素晴らしかったです。

 

ああ。その余韻もいまだ冷めやらずではありますが、歌舞伎座は3月へと飾り付けも終わっているようです。

2月は辰之助追善ということで松緑さんが大活躍でした。今頃はほっと一息ついていることでしょう。千穐楽の夜、さっそくアップされていた松緑さんの日記に涙した人も多いはず。

 

blog.shouroku-4th.com

ほっとする間もなく、3月の歌舞伎座は、3月3日より27日まで、かかります。

私もツアーやります。2月は告知が遅すぎて、申込者がゼロだったので(;'∀')

今月は早めに告知します。

3月20日(水)10時より。申し込みはこちらから。

tabica.jp昼の部の一番最初の演目「女鳴神」を観ましょう!

「鳴神」はちょっとエロチックで楽しくて、初めて歌舞伎を観る方でも親しみやすいお芝居ですが、その女版。イケメンの色仕掛けに堕落してしまう尼さんのお話ですよ。

お楽しみに!

 

さて、 こちらは、本日渋谷で見かけた麗しい仁左衛門丈(´▽`*)

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かっけー!思わず立ち止まってパチリ。

 

夜の部の一番最初の演目「盛綱陣屋」でその雄姿を拝めます。

ツアーで観る「女鳴神」で鳴神尼を演じるのは仁左衛門丈の長男孝太郎丈です。

 

 

 

 

 

 

地口行灯と尾上辰之助三十三回忌追善狂言 2019年2月歌舞伎座

2月の歌舞伎座は、いつもとちょっと違う雰囲気です。

木挽町広場、歌舞伎座内部、特に3階に地口行灯が灯されています。楽屋にも灯されているそうですよ。

 

何とも言えずいい雰囲気です。地口行灯というのは、祭礼のときに飾られる行灯で、要するに駄洒落と絵の遊びなんですけれど、味があって私は大好きです。

 

むずかしいことが書いてあるわけではないですよ。よく見てみて。

 

 

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▲えんましたの力持ち

 

縁の下の力持ちならぬ「えんましたの力持ち」えんま様の舌が、そんなに!?

 

 

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おおかめもちだ

 大金もちじゃなくて、大きな甕をもっているだけかーい。

 

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ひょうたんからゴマが出る

 

瓢箪から駒じゃないのかーい。

 

クスっと笑える地口行灯。楽しんでみてくださいね。

 

さて、今月の歌舞伎座尾上辰之助33回忌追善供養。尾上辰之助という人は、本当にかっこいい人でした。当時、三之助と言って、辰之助菊之助新之助 が歌舞伎役者のスターで、幼き私は、辰之助が一番好きでした。今でも昔の録画を観るとかっこよくてほれぼれします。その父、松緑もおおらかで素晴らしい名優でした。

しかし、辰之助は昭和62年3月に40才でなくなってしまいました。今年はその33回忌に当たるということで、辰之助にゆかりのある演目やゆかりのある人が演じています。

辰之助長男である当代松緑が、中心となり、ひと月の追善興行を盛り上げます。松緑は、まだ12歳で父を亡くし、さらにその2年後には祖父である2代松緑を亡くし、後ろ盾を失いながら苦労して精進してきました。

 

昼の部の「義経千本桜すし屋」と「暗闇の丑松」、そして夜の部の「名月八幡祭」が、そのゆかりのある演目としてかかっています。また、夜の部の「當年祝春駒」では、当代松緑の息子である左近クンも曽我五郎のお役をりりしく勤めています。

 

「暗闇の丑松」は、丑松と女房お米の物語ですが、以前お米役を演じた菊五郎(当時菊之助)が、今回丑松を演じました。菊五郎の深い演技力、原作の持つ厚みのあるストーリー、宿場の女郎屋、湯屋などの情景の美しさ、などなど、見どころがたくさんあります。

 

30年前にはお米を演じた菊五郎は、当時は女方として辰之助の相手を演じることが多かったのですが、辰之助の死後、次第に立役が増えて行った(それだけが理由じゃないと思うけれど)とも言われています。可憐で薄幸なお米を演じていた菊五郎が、今回は丑松。それも年月の積み重ねを感じられて、胸にずんとくるものがあります。暗闇の丑松の古い映像を少し観る機会がありまして、菊五郎の可憐さにノックダウンしました。

 

比して夜の部の、「名月八幡祭」。

30年以上前に共演した辰之助玉三郎仁左衛門。今回、辰之助の長男である松緑が父親の演じた縮屋新助を演じます。相手役は、当時辰之助と共演した玉三郎仁左衛門です。この舞台で、玉三郎仁左衛門は、30年前の若々しさそのものです。

男を悪気なくもてあそぶ三代吉。ヒモの見本のような三次も、20代30代のヤンキーに見えます。

一体「時」ってなんなんだろう?という不思議な感覚に陥ります。

30年前のお役とまったく違う菊五郎もすばらしいが、まったく同じの仁左玉もすごい。もうなんと形容していいかわからないレベルです。

 

これもまた、歌舞伎の魅力のひとつなんですね~。

 

ぜひとも、昼でも夜でもいいから観て!と言いたい2月の歌舞伎座です。

役者の皆さまも、最後まで駆け抜けてくださいませ!

 

「名月八幡祭」のあらすじとみどころについてはこちらです。

http://munakatayoko.hatenablog.com/entry/2017/06/05/231809?_ga=2.11162228.1599533200.1549873392-10846504.1513241271

文楽「鶊山姫捨松(ひばりやまひめすてのまつ)」と「壇浦兜軍記 阿古屋琴責の段」

昨日は、文楽第3部「鶊山姫捨松(ひばりやまひめすてのまつ)」と「壇浦兜軍記 阿古屋琴責の段」を観てきました。

 

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今月は、3部制なので、時間も短い。「せわしない」と感じる方もいるかもしれませんが、心身ともに楽で、お財布にも優しいので、初めての方にもおすすめです。

 

今回はどちらも素晴らしく、文楽の世界を堪能できました。「阿古屋」は、勘十郎さん操る阿古屋の指の先まで神経が行き届いており、演奏が終わるたびに誰にもわからぬように「ほっ」とする表情、しぐさ。3曲を弾く寛太郎さんとの息の合い方など。玉助さんの重忠は、じっと阿古屋の演奏に耳をすませている様子などが素晴らしかったです。清助さんの三味線。

最後、岩永が「なんでこれで許すのよ。納得できねえ」というところ、重忠が、また丁寧に「三味線では、ここポイントにきいてたのよ、琴は、これな」と丁寧に説明する部分が入っていてよかったです。

阿古屋についての説明は、昨日アップしたこちら。

munakatayoko.hatenablog.com

 

そして、前後しましたが、「鶊山姫捨松(ひばりやまひめすてのまつ)」。これは、継子いじめの話なので、昨今の事件とイメージが重なり、そこはつらくなってしまいます。けれどもうれしかったのは簑助さんの名演。昨年の玉助さん襲名時よりずっとずっとお元気で、その演技が素晴らしく、感動的でした。40年以上前からのファンですから!また復活してくれたのかと思うと、単に演技だけではなくその心根、裏で重ねた日々の努力に感動しかないです。

 

中将姫の出から、

「梢の雪がひと積もり、背に打ち掛かればどうど伏し、起きれば」

 

というところでは、ゆらゆらふらふらと歩く様。ああ!背中に落ちた雪が冷たそうです!

 

「手足もしびれ身も縮み、命も息も絶え絶えにて」

 

この後もさんざん割竹でたたかれたりして、突っ伏して荒い息を吐く中将姫の姿に、こちらも涙で袂をしぼるばかりなりですよ…。簑助さん…。そして、義太夫の千歳太夫さんに、拍手…。

 

さて、始まる前に、玉助さんにバックステージを案内していただき、興味津々で舞台裏を見てきました。

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▲楽屋口からはいると、すぐにお稲荷さんがあります。出演者はみなここでお参りをしていきます。

 

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▲着到板。ここに来て名札をひっくり返します。赤い木札の人は、ただいま不在。

上から、太夫、三味線、人形の順に並んでいます。

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▲楽屋です。一番手前は勘十郎さんの楽屋。暖簾も刺しゅう入りで素敵です。

 

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床山=人形の髪を結ったり、人形用の鬘を作ったりするお仕事をする方たちの部屋です。お人形の頭もぶら下がっている!

 

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▲文字通りげた箱!人形遣いさんは、この下駄をはいて舞台に出ています。背の高い人は低い下駄。低い人は高い下駄を履いて、高さを揃えます。玉助さんはまだ襲名前の幸助の名前でした。背が高いから下駄は低いよ

 

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▲お人形が乗る籠。小さくてかわいい。

 

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▲小道具いろいろ

 

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▲舞台裏。天井は高い。演目ごとの背景が並んでぶら下がってる

 

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▲阿古屋の背景は、すでに舞台袖にスタンバイ!

 

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▲舞台を案内してくれる玉助さん。逆光で真っ黒~。

 

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くるりと板が回ると義太夫さんが出たり引っ込んだりするあれの裏側。円盤は手動で回します。

 

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▲お‼お人形のみなさん。待機中ですね!ご苦労様です。楽しみにしています!

 

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▲玉助さんのおせんべいいただきました!

イラストは奥様のらつこさんが描いてます。

 

 

5時35分に楽屋前に集合して、ささっと案内してくれて、6時開演。お忙しい出番前にありがとうございました。

歌舞伎役者さんと違って、文楽の技芸員さんたちは、割と直前までラフな雰囲気です。お顔は作らないということもありますけれど。

 

楽しかった2月の文楽。1部2部は、予定が入れられず行けませんが、5月の妹背山婦女庭訓は通しなので、ぜひ行きたいと思いますー。みなさんもぜひ!

阿古屋 壇ノ浦兜軍記より

昨年はずいぶんと阿古屋が話題になりました。12月の歌舞伎座で、玉三郎・児太郎・梅枝と3人が日替わりで演じました。今まで、玉三郎しかできないと言われていた難しい役「阿古屋」をついに、若い世代に継承するという試み。次代への継承という意味でも、興行的にも大成功をしたといえるのではないでしょうか。

玉三郎は自身が阿古屋を演じないときには、赤ッ面の岩永を演じるということも話題作りとなり、児太郎もみたい、梅枝もみたい、もちろん玉様も!というわけで、3回歌舞伎座に行った人も多いようです。

 

玉三郎丈の次代へ継承の想いは、本当に素晴らしく、若手に教えるだけではなく、観客へもまた「阿古屋」の魅力について多く語った1年だったように思います。おかげで私も含め多くの人が「阿古屋」の魅力について知ることになったと思います。

 

というわけで、これはしっかり予習をしておきましょう!12月終わったのになんで今頃?と思うかもしれませんが、12月の歌舞伎座に続き、1月と2月は大阪と東京で文楽の「阿古屋」、そして3月には京都南座玉三郎の「阿古屋」がかかります。

 

見逃している方は、ぜひ見てください。文楽の阿古屋もとってもすばらしいですよ。

 

さて、阿古屋です。

  • 1732年大坂竹本座で人形浄瑠璃初演。すぐに歌舞伎でも上演。

 

■時代背景 源平時代

 

<あらすじ>

 

平家の武将 悪七兵衛景清の行く手を追う源氏。行方を知っているはずと恋人の阿古屋が引っ立てられて、居場所を教えるように責められる。拷問の道具は、琴・三味線・胡弓という3つの楽器。嘘をついていれば演奏が乱れるはずだとして、3つの楽器の演奏を命じられるが、一片の乱れもなく見事に弾きおおせる。

 

<登場人物>

■阿古屋 景清の恋人。知識も教養も高い最高級の遊女。

秩父庄司重忠 温厚で理路整然。教養も高く、心根も優しい。

■岩永左衛門致連(いわながざえもんむねつら)重忠の助役。赤ッ面で意地悪く、阿古屋に水責め、塩責めなどの拷問をしようとする。詮議の途中でウトウトしたり、一緒に楽器を弾く真似を見せたり、笑わせてくれる。歌舞伎では、岩永は人形振り。2019年12月の歌舞伎座公演では、玉三郎の岩永の人形振りが話題を呼んだ。

 

<みどころ>

口を割らせる拷問が、清らかな楽器の演奏という発想。阿古屋の美しい豪華な衣裳。岩永の人形振りなど、みどころはたくさんあるのですが、義太夫で語られる文章も美しいので、ぜひ阿古屋の衣裳にだけ目を奪われることなく、義太夫と、三味線・琴・胡弓の楽器にも耳を傾けてみてくださいね。

 

阿古屋が花道から出てくるところ

 

姿は伊達の打掛や。戒めの縄ひきかえて、縫いの模様の糸結び。小褄取る手もままなれど、胸はほどけぬ思いの色。形は派手に、気はしおれ。筒に活ける牡丹花の。水あげかねる風情かな

 

豪華な着物を着ているけれども、恋人とも連絡はとれないし、つかまっちゃったし、としおれている様子がよくわかりますね。

とはいえ、「気はしおれ」というのは、がっくりくずおれている様子をあらわしているわけではありません。豪華な牡丹の花が少しだけしおれている。水あげがうまくいかなくて、すこしだけ傾いている、それが余計に風情があり、美しさを際立たせているというような意味だそうです。

 

そこに岩永、

「そんなに拷問で参った様子もないし、さては拷問を生ぬるくやったなーー?そうとなれば、自分が吐かせてやるー。自分の屋敷へ連れていけー」などとバタバタ言うのです。

 

重忠は、まあまあ。と押しとどめて

「白状しないらしいけれど、まあそれは無理はない。そうそう言えないでしょうね。でも知っていることを白状すれば、頼朝公にも覚えもめでたくなるし、悪いことにはなるまいよ」と諄々と説くものだから阿古屋はそのやさしさにほだされて

「もし、知っていたなら、ぽーんと言ってしまいそうだけれど、本当に知らないんだからしょうもない」

 

そこに岩永

「このやろう、塩煎責めにしてくれよう」と脅すと、凛として高らかに笑い飛ばし、

「そんなことを怖がって、遊女をやっていられるものか。同じように座っていても、(重忠と岩永では、まるで対照的で)雪と墨」と言い放ち、「知らぬことはぜひもなし、いっそ殺してくださんせ!」とたんかをきるのです。

 

ここで階段にどんと身を投げ出すところが実にかっこいいですね。

 

そして、重忠が拷問の道具として持ってくるのが、なんと楽器三種。嘘をつくなど心にやましいことがあれば、演奏が乱れるだろうということで、演奏をさせられるのです。

 

弾き始めたのがまずは琴。

 

影といふも、月の縁。清しというも、月の縁。かげ清き、名のみ映せど、袖に宿らず

 

景清にかけた歌ですが、「蕗組」という歌の替え歌です。

 

この場ですぐに蕗組の歌が出てきてぱっと替え歌ができる阿古屋もあっぱれなら、すぐに「あの歌の替え歌ね」とわかる重忠も教養が高いのですね。

 

解説がこちらのブログに大変詳しく載っていました。

http://koremitsu54.cocolog-nifty.com/blog/2015/10/post-1768.html

 

月があったら影ができるはず。月が出るのに私の袖に影は映らない、景清はいないと阿古屋は嘆きます。

 

次に、重忠は、阿古屋と景清のなれそめについて語れと言います。

 

これはまた、思いもよらぬ変わったことのおたずね。何事も昔となる恥ずかしい物語。平家の御代とときめく春。馴れにし人は山鳥の終わりの国より長々しき、野山を超えて清水へ日毎日毎の徒歩詣で(かちもうで)。下向にも参りにも道は変わらぬ五条坂

 

この後が好きですね。

 

互いに顔を見知り合い、いつ近づきになるともなく、羽織の袖のほころびちょっと、時雨のからかさお易いご用。雪の朝の煙草の火、寒いにせめてお茶一服、それが嵩じて酒(ささ)一つ、こっちに思へばあちからもくどくは深い観音経。普門品(ぼん)第25日の夜さ必ずと戯れの言葉を結ぶ名古屋帯。終わりなければ始めもない。味な恋路と楽しみしに寿永の秋の風立ちて、須磨や明石の浦船に漕ぎ離れ行く縁の切れ目、思い出すも痞え(つかえ)の毒。ああ、疎まし

 

長く引用してしまいましたが、すごく美しいですよね。

 

最初はいつも道で出会う間がらだったのが、

あっちょっと袖がほころびていますよ

雨が降ってきましたよ、傘どうぞ。

たばこの火をどうぞ。

寒いですね。お茶でも一服いかがですか?

お酒を少し、飲んで行かれますか?

こちらが想っているばかりではなく、あちらも想っていてくれたようだ

 

と日毎に少しずつ惹かれ合っていく二人の様子がまるで映画を観るようではありませんか。

 

普門品(ぼん)第25日というのは

法華経のなかの 『観世音菩薩普門品第二十五』という一章のことかと思いますが、この中には念波観念力とい言葉が何度も出てくるようです。それは観世音菩薩の名前を唱えていれば、救われるというようなことらしいので、願っていればまた会えますねみたいなかんじでしょうか?

 

素敵な恋だわと楽しんでいたのに、寂しい秋がきて離れ離れになってしまい、思っただけでも胸が苦しい

 

と阿古屋は言っているのです。

 

重忠は

「うん、わかるよ、わかるけれど、詮議は続けるよ。じゃあ、三味線ね」と言って促します。

 

翠帳紅閨(すいちょうこうけい)に枕並ぶる床のうち、馴れし衾の夜すがらも、四つ門の後夢もなし。さるにても我が夫の、秋より先に必ずと、仇し詞の人心。そなたの空よと詠むれど、それぞと問いし人もなし

江戸時代の遊郭では、四つ(午後10時ごろ)に太鼓を打ち鳴らして門を閉じました。四つ門のあと、朝までずっといっしょにいたのに、今はそれもない。秋以降必ず(会おうね)といったあの人が訪れることもない今。と嘆きます。

 

重忠

「もういいわ。次、胡弓」

胡弓という楽器がまた、物悲しい響きがありますね。

 

吉野山 龍田の花 紅葉更科、越路の月雪も夢とさめては跡もなし。仇し野の露鳥辺野の、煙は絶ゆる時しなき これが、浮世の誠なる

吉野山の桜、紅葉、すばらしく美しいものすべて。夢から覚めては跡形もないのです。と、語る阿古屋に、重忠は、「拷問これでおしまい。景清の行方を知らないというのは、嘘偽りがないと見届けた。」と言って、詮議をやめるのです。

 

本当に文章が美しいですね。。。

 

阿古屋は、シネマ歌舞伎としても2017年に公開されています。また観る機会もあると思うので、楽しみです。

 

実は私、何年か前の阿古屋は、グースカ寝てしまったのです。文章の意味がよくわかっていなかったため、動きが少ないこの演目、眠くなりがちなのです。けれども昨年の阿古屋ムーブメント((笑)の中で、次第に詳しく内容を知ることができ、12月の歌舞伎座の阿古屋は本当に感動しました。

 

玉三郎丈に感謝です…

 

で、今から文楽の「阿古屋」みてきまーーっす!

 

 

熊谷陣屋 一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)

 熊谷陣屋は、毎年のようにかかっている人気の演目です。「のように」と言いましたが、今調べてみると平成になってからだけでも、昨年の2月までで43回もかかってる!

このほかシネマ歌舞伎にもなっていますので、見たことがある方はかなりいるのでしょうね。ただちょっとむずかしいですよね。初見の方は少し予習をしておきましょう!

 

1751年12月 大阪の豊竹座で初演(人形浄瑠璃)。歌舞伎では1752年5月江戸の中村座森田座で初演。源平の一谷合戦のうち、「陣門・組打」と「熊谷陣屋」がよく上演されます。

「熊谷次郎直実が平敦盛を討った」という史実をもとに作られた物語です。

 

<登場人物>

 

熊谷直実:源氏の武将。義経から与えられた隠されたメッセージを実行。苦渋の決断。藤の方に恩義を感じている。

 

■相模:熊谷の妻。初陣のひとり息子を案じて、戦地まで来てしまう。

昔藤の方に仕えており、恩義を感じている。

 

■藤の方平敦盛の母。

 

義経:熊谷に、あるメッセージを与える。

 

■梶原平次景高:頼朝の家来。

 

■弥陀六:石屋だけれど、どこか品格のある謎の老人。実は平宗清。平家方の人間だが、以前頼朝と義経の命を助けたことがあり、今はそれを後悔している。

 

<あらすじとみどころ>

平敦盛は、平家方の武将ですが、実は後白河法皇と藤の方の子であるため、殺してはならない。皇室と密接な関係にある義経は、そんな敦盛の出生の秘密も知っていました。そこで、そうははっきり言わずに熊谷直実に敦盛を殺さないようにメッセージを送ります。それが「一枝をきらば、一指を斬れ」という制札です。

桜の木の横に立ったこの制札は一見したところ、「桜の枝を折ったやつは、指切るぞ!」という看板にみえますが、実はそこには「一子(敦盛)を斬るときは、もう一子(直実の子)を斬って身代わりにせよ」という指示が込められているのです。

 

敦盛と小次郎はともに16歳。

 

直実は、苦渋の末、敦盛を生かし、自分の子どもの小次郎の首を討ちます。ここまでが一谷嫩軍記「陣門・組打」です。

 

悄然として自分の陣屋に帰ってきたところからこの「熊谷陣屋」は始まります。

 

熊谷を迎えるのは、妻相模。相模は、小次郎の母です。「なぜおまえ、こんな戦場に来たんだ」。温厚なはずなのに相模に怒る熊谷。それはそうです。子どもを殺しちゃったのに「あの子の初陣はどうだったかしら」なんて、母親が来ちゃったのですから…。

 

そこで、熊谷は敦盛を討った、小次郎も立派だったと話していると、突然藤の方が現れて熊谷は斬りつけられます。

それもそうですよね。藤の方は「なに?私の息子を、あなた、殺したの? 許せない! 殺してやる!」となります。

 

嘆く藤の方。慰める相模。

 

実は相模は以前、藤の方に仕えており、そのころ熊谷と知り合ってねんごろな仲になったのですが、藤の方がうまくとりなしてくれたので、二人はお咎めを受けることもなく夫婦となれました。だから熊谷と相模は藤の方に恩義を感じています。

 

藤の方にしてみれば「あの時の恩義も忘れて、なんてことをしてくれた!」というところです。

 

熊谷は、藤の方を制して、合戦での敦盛の最後の模様を語ります。

 

そこへ義経が登場。本当に敦盛の首であるか首実検をすることとなります。

 

もし!もしもですよ、義経のメッセージだと思った「一枝をきらば、一指を斬れ」がホントに桜のことだけを言っているのだとしたら!今首桶に入っている首は、敦盛の首ではなく、小次郎の首ですから、熊谷が嘘をついたことにお咎めを受けてしまう。

 

熊谷は、制札を引き抜き「このメッセージに従って、敦盛を斬ったのだ!」と首桶の蓋を取って見せます。気迫あふれる緊張の一瞬です。見得が決まります!ここで舞台は最高潮。

 

しかし、義経は敦盛の首ではない首を見て「敦盛の首に相違ない」というのです。やはり、義経は、制札にメッセージを託していたのですね。

 

先ほどまで、藤の方を慰める側だった相模は、今度は立場が逆転。自身の子どもを亡くした身の上となってしまい、泣き崩れます。悲劇です。

 

さて、そこにいた梶原景高が、これはおかしい。頼朝さまに知らせなくっちゃと駆けだしたところ、どこからか石の鑿が飛んできて死んでしまいます。石の鑿を投げつけたのは、弥陀六という石屋でした。

 

実は、この男、弥平兵衛宗清と言って平重盛の家臣でした。平家一門の供養の石塔を立てるために石屋に身をやつしています。昔義経と頼朝を助けたことがあり、「あー。あんなことをしなければ平家が今のように落ちぶれなかったのに…」と後悔をしていますが、義経は自分たちを助けてくれた宗清に恩義を感じていました。弥平兵衛宗清だとわかり、義経は鎧櫃を渡します。そのふたを開けるとなんと、中には死んだはずの敦盛の姿が!駆け寄る藤の方。制する弥陀六。感謝する弥陀六。

 

熊谷はといえば、気持ちは相模と同じ。戦のむなしさと子を失った哀しみに呆然としています。

 

義経は、熊谷の気持ちを思いやり、いとまごいをやるのです。熊谷は、鎧兜を脱ぎ、剃髪し、お坊さんとなって去っていきます。ラストシーンは幕がしまったあと、花道をゆっくりと歩んでいく熊谷の独白で終わります。「送り三重」という美しくも寂しい三味線と遠くから合戦の声も聞こえます。

「今ははや何思うことなかりけり、弥陀の御国に行く身なりせば。16年はひと昔、ああ、夢だ、夢だ」という最後のセリフが哀しく響きます。ちなみに16年というのは、息子が生まれてから死ぬまでの時間でした。夢のように過ぎ去っていってしまいました。

 

2019年2月の歌舞伎座は、中村吉右衛門の熊谷陣屋です。戦のむなしさ、親子の情の深さをズシンと見せてくれることでしょう。

1月の幕見ツアー開催しました。

こんにちは。宗像陽子です。

 

今年の最初の投稿で

「役者の皆様のご健康をお祈りしつつ、私も元気に体調管理をしつつ、観劇をし、さらに皆さんに歌舞伎の楽しさをお教えし、かつ教えていただければと思っております。」

なんて書いたにもかかわらず、先週風邪をひいてしまい、今年最初の一幕見ツアーを中止せざるを得なかったのです。

新年しょっぱなこれですから、本当に情けない。参加予定だった方には本当に申し訳ありませんでした。

 

さて、今日は2回目のツアー。tabica以外の依頼案件でした。

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ヤッホー。いいお天気。青空も似合う歌舞伎座

 

働いている人たちばかりなので、あまり時間はとりたくないとのことで、演目説明と観劇に集中するプランとしました。

3人のうち、ふたりは歌舞伎観劇は初めて。そのうちひとりは、海外に行ったときに自分が日本文化について全然知らないことに愕然とした! わかりますね~。そういう方多いです。

 

来年はオリンピックも開催される。外国人もたくさん来るだろう。仕事ももっとグローバルに広がるかもしれません。そんな今の時期、なるべく日本の伝統文化を吸収して引き出しを増やしておきたいとのことでした。

本当ですね。

来年を前にして、今年から、今月から、歌舞伎少しずつ観て行きましょ。

 

もう一人は、ずーーーっと前、中学生のころに学校で「勧進帳」を見たんですって。

それから「気になるなーーーーーー」と思って、今に至る。ン十年ですかっ!?

でもこれもわかりますよね~。なにかきっかけがないと、どうやったら歌舞伎座に行けるのよってことすらわかりませんもん。

そういう人のために、私はいるのです、はい。

 

それにしても、ん十年前に観た「勧進帳」が今でも脳裏に焼き付いているって、やっぱり歌舞伎ってすごいな~と思います。そう思いませんか?

 

さて、この時期の幕見。ツライのは待ち時間が寒いことだと思ってませんか?

私は思っていましたよ。でも、そう思う人が多いのか、いつもよりすいている!という利点もあります。

今月は特に、あちこちで歌舞伎をやっているせいもあって、歌舞伎オタが分散しているんでしょうかね。すいています。

10分くらい前に行けば大丈夫な感じでしたよ。外では寒いので下の木挽町広場でゆったりと説明させていただき、売り出し時間15分前くらいに行きましたが、余裕でチケットを買うことができました。

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幕見席から。


 

さて、「廓文章 吉野屋」。わかりやすいけれど、ちょっと説明を聞いているとやっぱりずっと楽しめますよ。3人とも

「おもしろかったー」「大満足」と大喜びでした。

 

いつもバリバリ働いている人たち、左脳ばっかり使っているのでいつも使わない脳みそを使ってすごくリフレッシュできるんですよ。

 

携帯もばしっと電源オフして、たまにはリフレッシュしましょうよ~。

 

さて、2時に解散。時間に余裕のある人は、その後、2時半から3時15分まで1階のお土産処があいていますよとアナウンス。

ちょっと時間が空いているので、銀座の玉三郎展を見てから東銀座に戻ろうとしたのですが、玉三郎展が、まさかのお休み。

実は2回目なんですが、2回とも玉様に振られています。

その後、歌舞伎座お土産処に戻り、無事お写真購入(´▽`*)

天気も良く、気持ちのよい一日となりました。