「初めての歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog

すばらしき日本の芸能、歌舞伎。初心者にわかりやすく説明します♪

『夏祭浪花鑑』その2 ちょっと気になる疑問に答える

昨日『夏祭浪花鑑』のあらすじと見どころを書きましたが、長くなっちゃって。

なかなか読んでもらえないのではないかと思ったので、芝居を観たあとでちょっと「?」と思いそうなところをピックアップしてQ&Aで書いてみました。昨日書いた部分と重複する部分もありますがあしからず。

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Q団七は、どうしてつかまっていたの?

団七は、大鳥佐賀右衛門の家来と喧嘩をしてけがを負わせたため入牢していた。相手は牢の中で死んだが、傷が原因ではなく傷がいえてから病死とのことで死罪を免れた。お梶の機転で釈放。

Qどうして磯之丞は、駕籠に乗っているのにお金も持たず、武士なのに刀も持っていないの?

前日、父玉島兵太夫に刀を取り上げた上、勘当されたため。

―どうして勘当されたの?

放蕩三昧をしていたから。二日酔いならぬ三日酔いで磯之丞が帰った日はちょうど城主が帰国した日で、お土産を家中のものに下された。各々十分に役目を果たしていたものにはそれなりのものを。碁や将棋にうつつを抜かしていたものには碁盤を。碁も戦には違いないけれど所詮は遊び。しっかり武芸に励むように。などと戒めの意味を込めてそれぞれのものを下された。

磯之丞にはなんと傾城の姿絵。佐賀右衛門がここぞとばかりに遊蕩三昧を言いつけるのを、じっと聞いていた父、兵太夫怒髪天を衝く勢いでブチ切れる。

磯之丞を白洲へはったと蹴落とし。刀すらりと抜きはなし。不所存な倅真っ二つにぶったぎる迫力であったものの、「殿の戒めでもあるのだから、ここで息子を斬るのはやめておけ」と説得され涙ながらに門外より安房払いを命じたのだ。安房払いとは刀を取り上げて門前払いのこと。家来にも「情をかくれば同罪。大坂辺りであっても情けはかけるな!」と厳しく命じる。とはいうものの、言葉の様子からは逆の気持ちも察せられる。

 

だから磯之丞は刀も持たずにいたわけだが、親の心子知らずとはよく言ったものだ。お金も刀もないのに、駕籠に乗ってのこのこお梶を訪ねてきたのは、おそらく佐賀右衛門に命じられた駕籠かきにうまく乗せられてきたのだろう。反省も改心もない礒之丞なのだ。

Qどうしてみんな、磯之丞のために尽くすの?

団七・お梶は、兵太夫の口利きもあって釈放されたので恩を感じて、兵太夫の息子磯之丞を何があっても守ろうと決意する。

お辰・徳兵衛にとっては郷里の主、兵太夫。三婦は団七と強い絆で結ばれている。兵太夫への恩返しからみんなあほボンを守ろうとするのだねえ。

しかし、恩返しだけではない、どこか磯之丞には人たらし的な母性本能をくすぐる的な魅力があるのかもしれない。

Qどうして琴浦と礒之丞は喧嘩をしているの?

その後磯之丞は、三婦の手配で道具屋に奉公に出された。ところがそこの娘と深い仲となり、その上、50両だまし取られ、人を殺し、心中をしようとしているところに三婦に助けられてかくまわれていた。浮気を知った琴浦がぷんぷんするくらいは当然のことなのだ。てか、どんだけ阿保なの?磯之丞。でもどこか憎めないのかしら?

Q三婦は、磯之丞に付き添って国まで帰ってくれるというお辰を、色っぽいからという理由で断るけれど、三婦はどうしてそこまで磯之丞を信じられないの?

前述したとおり、磯之丞の尻ぬぐいで計画殺人までした三婦。磯之丞の天然、女好き、軽薄、考えなしという性格を知ってしまった以上、お辰と一緒に旅をさせるのは心配と思うのも当たり前のことである。

Qどうして義平次は、いきなり雪駄でぶちぎれるの?

義平次は、ヤンキーでかっこつけている団七、勝手に娘お梶とできてしまった団七が昔から気にくわない。いつもボロボロの着物ですり切れた草履で地べたをはいずるようにして生きてきた義平次だ。ところが団七が履いているのが雪駄だった。雪駄とは、竹の皮の草履の下に獣皮をつけた履物。いいものを身につける見栄っ張りの若者だったからこれでカチーンと来てしまった。

Q「悪いやつでも舅は親」ってどういうこと?

悪い奴でも舅は親なので申し訳ないという気持ちも、もちろんあるだろうけれど、親殺しは昔は普通の殺人より罪が深い。だから「やっちまった…しかも親だし」みたいな気持ちもあるのではないかなと思う。

Qこのあとどうなるの?

Qこのお話元ネタあるの?

Q上方と江戸のやり方の違いはあるの?

などについては、こちら~

munakatayoko.hatenablog.com

詳しいあらすじは、こちら

munakatayoko.hatenablog.com

夏祭のお話。お芝居のその後、どうなるの?と気になる方はこちら!

munakatayoko.hatenablog.com

磯之丞のこと

ずっと磯之丞のことを考えている。

あまりにもあほなので腹が立っていたけれど、周りの人たちが一生懸命支えているのは、兵太夫への恩義だけではなくてやっぱりこの人に、どこか人たらしというかかわいらしくてほっておけない魅力があるからなのかなあなどと思ったりもした。

 

種之助は、このかわゆらしさにはピッタリなのだけれど、殺人するの?という感じは正直ピンとこないので、とはいえうまい役者さんなのでこのカットされる場面(殺人、心中未遂)もぜひ種之助でやってほしいなどと思う。

 

夏祭が実写化されたら、女好き、軽率、計画性なし、だまされやすい、殺人もいとわず(いとわずってことはないか)なのに、どこかかわゆらしい、母性本能を刺激される、ほっておけない が成立する役者は誰かな?綾野剛かな?筒井道隆あたりもいいかな?などと考えて眠れない。