「初めての歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog

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『夏祭浪花鑑』その3 さらにQ&A

『夏祭浪花鑑』についてさらに。

 

Qこのお話元ネタあるの?

このお話は、延享2(1745)年に竹本座で初演された人形浄瑠璃です。作者は並木千柳、三好松洛、竹田小出雲の3人。もとになったネタはあります。

 

まず、元禄11(1698)年に、『宿無団七』という歌舞伎作品がありました。団七という名前の男が父親を殺したというストーリーです。団七を演じたのは初代片岡仁左衛門

この作品は評判がよかったようです。

その46年後、延享元(1744)年に、堺の魚売りが賭場の争いで、長町裏で人を殺したという事件がありました。それは冬のことで、沼に落とされた死骸は凍り付き、翌春に氷が解けて初めて事件は露見したのです。

 

この事件の翌年延享2(1745)年、『夏祭浪花鑑』が人形浄瑠璃で初演されました。『宿無団七』の主人公の名前を取り、長町裏の話を取り入れてできた作品なのです。

前年の事件は、冬でしたがそれを夏に置き替えています。夏のべたつく暑さ、祭囃子などと見事な相乗効果を生んで、名作になりましたね。すごいですねえ。

Q上方と江戸のやり方の違いはあるの?

大坂を舞台にしたお芝居です。どちらで上演されても上方言葉ですが、最後の「ちょうさやちょうさや、ようさやようさや」という祭囃子が「わっしょいわっしょい」となります。

 

今月の夏祭は、愛之助。上方役者が、地元の大阪弁を駆使して演じる『夏祭』です。上方役者が歌舞伎座で『夏祭』を演じるのは、戦後初めてだそうです。おめでとうございます。見事に大坂の空気をあぶり出していましたねえ。

本人もインタビューで「言葉の苦労はありません」と言っていました(「ほうおう」5月号)。愛之助さん、以前見た「封印切」の八右衛門もよかったなあ。叩きつけるように繰り出す上方言葉の迫力は、ネイティブならではですね。

 

このほか、今回の『夏祭』では、住吉鳥居前の場で設えてある髪結床の位置が真ん中に来ています。いつもは下手側に寄っていて、私などはその方が目に慣れているので少し違和感があったのですが、これも上方風だそう。違和感があったとはいえ、団七が身なりを整えて、大鳥佐賀右衛門の手をぎゅーっとひねりながらパーンと出てくるところは舞台のど真ん中ということになり、舞台映えがしました。

Q 役者によって違いはあるの?

上方か江戸かで、今書いたような違いはありますが、このほか役者による違いは、衣裳などにもあらわれますが、大きな違いは碇床ののれんです。これは、団七が演じる役者の紋が染め抜かれますから、お家が違えばその都度暖簾は替わります。

今回は松嶋屋。大きく松嶋屋の紋が染め抜かれた暖簾を見て上方歌舞伎ファンは大いに喜んでいたのではないでしょうか。夜の部は仁左衛門だし、孝太郎はソロで踊っていたし、上方松嶋屋大活躍ですね。千之助はいずこに…。

松嶋屋の紋は、「七ツ割丸に二引」。暖簾の中にどんな紋があるかチェックして見てみてくださいね。

 

『夏祭浪花鑑』のあらすじと見どころについて

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このほかの疑問について

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