「初めての歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog

すばらしき日本の芸能、歌舞伎。初心者にわかりやすく説明します♪

狂言『鎌腹』と能『土蜘蛛』を観る

毎月一度は、なにか引っかかるフックを手掛かりに能を観ようという決意のもとに、もう10か月ほどたちました。

で、今月は、4月13日の狂言「靭猿」(大蔵流)と「吉野静」(金春流)と19日の狂言「鎌腹」と「土蜘蛛」(観世流)。今月のフックは当然吉野静と言えば、「義経千本桜」、「土蜘蛛」と言えば歌舞伎でもよくかかるもの。なので選んだのですが、残念ながら13日は撃沈。

哀しみのあまり、もう能なんて観るのはやめようかなと思ったのですが(涙)、捨てる神あれば拾う神あり、19日は大変楽しめました。
19日は初心者向けのショーケース。事前にロビーで体験コーナーもあって、私も太鼓をテンテン叩かせていただきました。

プレトーク

始まる前のプレトークも大変面白かったです。

鬼などが橋掛かりから出てきますが、出てくるときは地獄から出ていき、帰っていくときは心穏やかに成仏して帰っていく。そのため能面の右側は険しい顔、左側は若干穏やかな顔に作られているとのこと。初めて知りました。左右対称と思っていましたが今度は面もじっくり見て、違いを感じてみたいです。また橋掛かりは西に設置されており、必然的に鏡松は北、観客席は南だそうです。
ちなみに、「南」の語源って「皆が見る」なんですよね。ひとつずつわかっていくたびに感動があります。

『鎌腹』

仕事をしない夫に文句をいう女房と、朝ご飯を女房が作らないから仕事に行けないのだという男の夫婦喧嘩から始まる狂言で、なんともまあ。
女房へのあてつけで切腹をしようと鎌でちょいちょいと腹をつつくものの、痛くて腹を切ることもできません。情けないやらおかしいやら。ちょっぴり、女房が自分のことのようにも思えて、日頃文句ばかり言っていないかこっそり反省をしたりしました(;^_^A

『土蜘蛛』

これは、歌舞伎で何度も観ていますし、実は能で観るのも2回目。派手なので、初心者向けで寝る暇もありません。
源頼光が、土蜘蛛に襲われ、それを退治するというお話ですが、土蜘蛛はもともと大和朝廷に従わなくて滅ぼされた土着の民族と聞くと、気の毒でしんみり。

能で作られた蜘蛛の糸、歌舞伎でも使ってみたいと五世菊五郎は考案者である金剛唯一(1815~1884)(金剛流21世宗家)に直接作成法や糸の繰り出し方などを教えてもらい、今では歌舞伎でもプシャープシャーと勢いよく蜘蛛の糸が放たれます。特に澤瀉屋のときは盛大です。

気のせいか、能の蜘蛛の糸のほうが弧が美しかったような気がしますが、どうでしょうか。本家本元は違うのかな?また、面白かったのは、歌舞伎ではぷしゃーと糸が放たれると、後見が鮮やかにくるくると糸を回収しますが、能はそれはなく、床がもしゃもしゃと蜘蛛の糸だらけで、ひっかからないか心配になりました。

あの糸回収も見ものの一つですから、歌舞伎で作られた演出は面白いなと思います。ちなみに歌舞伎では『土蜘』となります。
また『蜘蛛絲梓弦』という演目もあります。

違いはこちらに書きました。

munakatayoko.hatenablog.com

来月もまた観に行くのを楽しみにしたいと思います。