「初めての歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog

すばらしき日本の芸能、歌舞伎。初心者にわかりやすく説明します♪

「土蜘」 「土蜘蛛」 「蜘蛛絲梓弦」 違いは?

なんだか魑魅魍魎的なタイトルになってしまいましたが…(;^_^A

2022年5月、團菊祭の2部でかかる「土蜘(つちぐも)」は、音羽屋にとって大切な演目です。

 

音羽屋にとって大切な演目

明治14年、3世尾上菊五郎の三十三回忌追善狂言として5世菊五郎によって初演されました。(ちなみに当代菊五郎は、七代目です。今回は、菊五郎の息子である菊之助が土蜘を演じます。)

 

能の「土蜘蛛」をベースにし、菊五郎家の「新古演劇十種」の最初に選ばれています。

古くからあった能の「土蜘蛛」ですが、派手な演出である千筋の糸(プシャープシャーと蜘蛛が繰り出す糸)が考案されたのは、明治時代のこと。五世菊五郎は考案者である金剛唯一(1815~1884)(金剛流21世宗家)に直接、作成法や糸の繰り出し方などを教えてもらったそうです。

誠に音羽屋にとって大切な演目。團菊祭にふさわしい演目と言えるでしょうね。

 

歌舞伎では似たような演目に「蜘蛛絲梓弦」がありますが、どちらもベースは同じ能の「土蜘蛛」。

病に臥せる源頼光にとどめを刺そうと、土蜘蛛の精が姿を変えてやってくる。

そうはさせじと、四天王など家来と一丸となって戦い、やっつける。

というのは、同じです。

「土蜘」は、「蜘蛛絲梓弦」に比べて、より能の「土蜘蛛」に近いです。

あらすじ

源頼光は病床に臥せっています。侍女の胡蝶が薬を持ってきて、慰めに舞を舞っています。そこに僧智(ちちゅう→読み方が蜘蛛(ちちゅう)とおなじだぞ!)が忽然と現れます。病気平癒を祈願すると言いますが、なんともおどろおどろしくいかにも怪しい雰囲気。

 

そのとき、太刀持ちの音若が異変を察し、

太刀持ち「のうのうわが君、御油断あるな!」と頼光に声をかけます。にわかに緊張が走る舞台!!

頼光「なに、油断すなとは」

太刀持ち「火影にうつる僧の姿、いといとあやしく存じ候!」

 

といったとたん灯火は消え、頼光が一太刀を浴びせると、智はプシャープシャーと蜘蛛の糸を繰り出して消え去ります。

 

その後四天王と平井保昌と頼光は、古塚へと向かい、おどろおどろしい姿をし、日本を魔界に変えようとする土蜘の精と対峙、必死に戦い、ついに成敗するのでした。

みどころ

太刀持ちに注目

昨年の5月にも「土蜘」はかかったのですがそのときに太刀持音若を演じたのは寺島眞秀くん。今年は丑之助クン。どちらも尾上菊五郎のかわいい孫です。音羽屋~~っ!

 

昨年の眞秀くんの

のうのう、わが君。御油断あるな!」もとって~も声がよく通ってよかったですよ。今でも耳に残っているくらい♪

 

今回の丑之助クンも期待大。太刀持ちは、そこまでずっと太刀をもってじっとしていなければいけないツライお役。パッと立って怪しい土蜘の精を見定めるとても大事なお役ですからね、頑張って!

畜生口の見得に注目

智籌が、頼光に一太刀浴び、二畳台の上に上がって数珠を使った見得をします。これは口が裂けた恐ろしい形相をあらわし「畜生口の見得」と言います。いよいよ土蜘の精が本性を顕しましたよ~。

出てくる土蜘の精に注目~!

大薩摩のあと、舞台には大きな作り物が出ています。ここから蜘蛛の巣を破って出てくるのが土蜘の精。わあ。足の動きがちょこまかしていて、蜘蛛みたいですよ~。顔はこわいこわい。その隈取は、赤でも青でもない茶色。これは妖怪変化の隈取です。すごい迫力ですね!

 

最後に、軍兵たちが土蜘の精にとりつくと、黒と黄色の衣裳なので蜘蛛の足のように見えるところにもご注目!

蜘蛛とは。

土蜘蛛っていったいなんでしょう?土蜘蛛に関する記述は古事記日本書紀風土記にも数多く出てくるそうです。

実は、大和朝廷に屈しない未開の人間集団という説もありますが、能や歌舞伎の「土蜘」が未開の人間集団をあらわしているのかどうかはわかりません。

源氏に屈しない抵抗勢力だったとするなら、ちょっとかわいそうな気もしますね。

 

蜘蛛絲梓弦の説明はこちら

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