「初めての歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog

すばらしき日本の芸能、歌舞伎。初心者にわかりやすく説明します♪

「藤戸」 背景・あらすじ・みどころたくさん・感想レポ

3部の「藤戸」。初めて観ましたが、とても素晴らしかったです。

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あらすじ見どころ感想です。

 

■概況

原作は、平家物語巻第十にある「藤戸」。能「藤戸」にもなっている。これを松貫四が構成、川崎哲男が脚本を作り、1998年に厳島神社で行われた「宮島歌舞伎 厳島神社中村吉右衛門奉納公演」で初演。

平家物語「藤戸」

平家物語を読んでみると、「藤戸」は、源範頼が平家追討のために西国へ赴いたときの話でまだ頼朝も義経も生きています。

ここに載っています。

 

このときの範頼軍には、北條義時、三浦義澄、息子平六義村、畠山重忠、稲毛三郎重成などなどずらりと今大河ドラマで活躍、死闘を繰り広げている面々が参加しています!

そうそうたる面々で、思わず出演者の顔ぶれが浮かんでリアルですね。

その中に佐々木三郎盛綱もいます。ドラマでも出てきたじいさんの4人の息子の中のひとりですね。

この中で、先陣をとったものが恩賞をもらえるので、皆必死になります。味方にこれだけのメンツがそろっていたら先陣を取るのも大変そうです。

 

源氏方は、海上の向こうにいる敵陣まで行きたいのですが舟がなく、手をこまねいていました。

佐々木盛綱は、地元の漁師を手なづけて、浅瀬で馬でも渡れる箇所を聞きだしました。船がなくても馬で渡れれば向こう側に行けると考えたのですね。

親切な漁夫は、浅瀬を教えてくれましたが、盛綱は、このままこの漁師を逃がせばほかの者にもこの秘密ルートを教えてしまうだろうと考え、先陣の功を自分だけのものにしようとこの漁夫を殺してしまったのです。

果たして先陣の功を遂げ、盛綱は
「馬で河を渡った者はいても、海を渡った者などインド・中国はいざ知らず、わが国では聞いたこともない」とたいそう頼朝にも褒められて、児島の地を恩賞として与えられました。

 

さてここからが、歌舞伎「藤戸」です!!能仕立てではありますが、セリフもわかりやすいので、ぜひしっかりと味わってくださいませ。

佐々木盛綱、自分が殺した漁夫の母に会う

児島の新領主となった佐々木盛綱又五郎)が郎党を従えてやってきました。新しい領主として何か訴えたいことがあれば言うようにとお触れを出します。

そこにやってきたのは、藤波(菊之助)という女。盛綱に我が息子を殺されたと訴えます。

〽巡る月日も幾歳ぞ
と子育ての楽しかった過去を思い出して舞います。赤子に模した蓑を抱いたりおんぶしたりして、過ぎた昔を懐かしみます。

そこで、盛綱は確かに漁夫を殺したことを思い出します。その最後を藤波に語り、その亡骸を隠した浮洲へ連れていきます。嘆き悲しむ藤波を不憫に思い、行く末長く世話をすることを約束して別れます。

一行は漁夫の菩提を弔うため、寺へと向かいます。

 みどころ 品格のある舞台

先陣を焦って漁夫を殺すとは、非道なやつと思われるかもしれませんが、先陣を取るということが、その後の暮らし向きにも関係あるとなれば真剣にならざるを得なかった時代なのでしょう。決して盛綱が非道な奴とは描かれていません。むしろ、情のわかる懐の深い武士として又五郎が演じていますね。

 

不憫とは存ぜしかど、これみな戦の習いなれば、何事も前世のこととあきらめたまえ

と盛綱がいうところでは、いやいやそりゃないでしょうってちょっと思いますが(;^_^A。でもそれでもひどい奴とは思えないのは、役者の力かなー。

 

美しい母菊之助。初演のときは、老婆として吉右衛門が演じていますが、なぜ今回黒髪の若い母にしたのか、聞いてみたいですね。まあ、漁夫が若ければ母が若くてもおかしくはないのかな。漁夫が18歳、母が38歳とかね。

薄汚い蓑を赤子に見立てて踊るところでは、本当に抱いたりよしよししたり、おんぶをしたり愛情たっぷりなしぐさに驚きます。扇の使い方、手のひらの返しも美しい。

四天王も舞台を引き締めます。朗々とした声の彦三郎。イヤ本当に素晴らしい声です。歌舞伎座の隅々まで響き渡るので、心にまでしっかりと届きます。

■間狂言

浜の男磯七(種之助)、浜の女おしほ(米吉)、浜の童和吉(丑之助)が、かわいらしく踊りました。

 ・みどころ 踊り達者な丑之助と支える米種に心和む

丑之助クンは言うまでもなく、吉右衛門の愛孫。丑之助クンは取材で「じいたんが大切にしたお話だから一生懸命踊ります」と語ったとかや。涙。そしてその踊りがしっかりと指先まで神経が行き届き、足もよく上がり、腰も落とし、体幹もずれることなくすばらしかったのでした。瞬き厳禁でお楽しみください。

丑之助クンは割とクールなイメージがあるので、陽の眞秀に対して陰の丑之助と思っていたのですが、今回のカラッと明るくかわいい踊りもとてもよかったので驚きました。


菊之助は、「和吉は漁師の息子」と言っていましたが、ストーリー的に漁師の息子であることがわかるようなセリフなり振りなりは特になかったように思いました。

なので、「もういいじゃん!種之助と米吉の息子で!」と思いながら観ました。

 

あれあれ、雲が出て波も高くなってきた。あわてて3人は逃げていきます。

結構むずかしく手数の多い踊りを、丑之助クンも軽々とこなしており、満場拍手喝采でした。

■悪龍現る

さて、寺では盛綱と郎党が誦経をしていましたが、そこへ、どろどろどろ。漁夫の怨霊が悪龍となって現れ、

「いかに弔いあるとても、怨みは尽きぬ妄執の」と一行に襲い掛かります。

郎党たちは、必死になって刀で挑みますが、悪龍強くて全く歯が立ちません。

盛綱は必死に祈ります。
郎党たちもついには刀を捨て数珠をもみ、盛綱とともに必死に祈ります。ここはちょっと黒塚っぽかったです。ついに祈りの力に負け、悪龍は成仏していくのでした。

 ・みどころ 悪龍の成仏 武力に勝る祈りの力が現代にも通じますように

どんなに武力で倒そうとしても倒そうとしても倒そうとしても倒せない相手がついに祈りで成仏していく(だいぶ最後苦しそうだけれど)。そこは、今の世へのメッセージとしてもいいなあと思いました。
最後、幕外となり鳴り物が奏でる中、悪龍は花道で行きつ戻りつしまいにはグルグルと苦しみつつ揚幕に入っていきます。

この最後の最後に苦しむところは揚幕ギリギリのところなので、1階でしたら花道近く、2階席ですと東席でも7番より舞台寄りでないとみられませんが、見られる方はぜひ最後まで。

菊之助の「母の哀しみ」

ところで、菊之助は今年は「母の哀しみ」がテーマなのでしょうか。7月には「ナウシカ」でクシャナと母の確執について演じ、8月には隅田トリュフォニーホールで「隅田川」、そして今回の「藤戸」。どれも偶然なのかわかりませんが、クシャナ隅田川が今回の演技の下地になっていることは間違いないと思いました。母の哀しみ、これからもぜひいろいろな演目で演じてほしいと思いました。


今後も古典として上演を望む

吉右衛門は、「藤戸」を作るにあたり、祈りをテーマにした歌舞伎を拵えたいといって川崎哲男氏に依頼したそうです。そして、哀しみの中に、お能にないちょっとのどかなところが欲しいと考えたそう。そんな吉右衛門の想いたっぷりの「藤戸」。古典として末永く上演されることを望みますー。

買ってよかった観劇パスポート

観劇パスポートなるものを松竹がこの9月に初めて販売した。
松竹歌舞伎会会員のみの限定サービスなので、「初めての歌舞伎を楽しもう」というブログに書くにはふさわしくないかもしれないが、このパスポートを買う前、相当私は逡巡したので、なぜ迷ったか買ってどうだったかを書きとめておきたい。

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■観劇パスポートとは

歌舞伎座の秋の会員特別企画として売り出されたもの。松竹歌舞伎会会員限定で、24000円で初日から千穐楽まで2階席の1等席、2等席を何度でも観られるというサービス。

■パスポートを買う前の懸念

 ・懸念その1 値段

1ヵ月見放題24000円。

普段私は3階A席の1列目を何とかとるために、チケット売り出しには相当の熱量をこめている。1階でいくら良席をとっても、前に座った人の如何で舞台は見えなくなってしまう。だからどうしても1列目にこだわりたいのだ。

3階席1部から3部全部買うと16500円(2022年9月現在)。

24000円だと出費が増える。ただ、一通り見た後でお代わりをすることがある。2等席で1回お代わりをすれば元は取れる。
1等席を買う人であれば、2回分で元が取れてしまう。

しかし、お代わり行けるかどうかもわからないのに、24000円の出費はどうなのか。


 ・懸念その2 申し込み方法

観劇日の1週間前から電話による申し込み!

これがネック。電話面倒だなあ。
つまり一般のチケット売り出しも過ぎて、日々過ぎて、観劇日の1週間前になるまで、日々松チケを見ながら、ああ、また席が減ってしまった。ああ、1列目はすでになく、後ろの方しか空いていない!なんてこともありうるのでは。
「ああ、もはや3階席を今から取ろうと思ってもいい席はない!」ってなことになるのではないか。

 ・懸念その3 公演中止と払い戻しの場合

全公演の50%が中止となったときは払い戻しをしてくれるという。え。7月みたいに最後の1週間ほど中止のときに払い戻しはないの?(ちょうど8月の購入を考えているときが7波ピークだったので、ここにもだいぶひっかかった)

そんなわけで、だいぶ悩んだが、秀山祭だし、今回ごひいきの播磨屋種太郎クン秀之助クンの初舞台でもある。寺子屋の日替わりは幸四郎松緑の両方みたいし、となるとお代わりの可能性は強いかなとも考えて、1度でもお代わりできればいいと思って、ギリギリで申し込んだ。

■買ってよかったこと

今の私は、ものすごい多幸感にあふれている。10月は国立劇場もあるのでパスポートは買わないつもりだったが、あまりにもハッピーだったので10月も買ってしまった。

 

金銭的に元をとれるかという視点だけではなくていいことがたくさんあった。
何がよかったか。

 ・席がよい

当たり前だが、3階より圧倒的に2階席の見え方はいい。PDFを150%にしたくらいの体感である。声もよく聞こえ、香りもする。寺子屋ではいろは送りのときのほんのりとした線香の香りが漂って来た。(1階の5列目くらいまでだと舞台の檜の香りとかもしますね…)
センターブロックもいいが、東席もまたすばらしくよいのであった。

  ・桟敷席を経験できた

2階の桟敷席なんて一生ご縁がないと思っていたけれど、体験できてよかった。

munakatayoko.hatenablog.com 

 ・いろいろな席から楽しめる

センターブロックだけではなく、花道上。東席。西席と様々な席から楽しみ、この芝居はこちらからの方がいいなとか、お!この席からはこんないいことがあるのかといろいろ楽しめた。東席西席も、舞台寄りとそうでない席とどう違うのか、あれこれ試してみたい。(まだ西席にも行っていないし、西や東の一番舞台寄りとか行っていない)

 

 ・マナーが良い

観劇パスポートは、パスポートを買った本人のみで、当然隣同士2枚とか買えないわけなので、おひとりさまが多い。おしゃべりも少なめ。マナーもいい。チケットの発券は木挽町広場のチケット売り場で身分証明書と歌舞伎会のカードを見せ、さらに入場の時もその二つとチケットを提示するので、人に譲渡はしにくい。
2階はとても快適な空間なのだ。

 ・案外観に行けた

当初、おかわり1回くらいしか行けないかなと思っていたのだが、思ったよりずっと行けた。それには理由がある。

演目が詰まらなくてはいくらパスポートを持っていてもわざわざ行く気にはなれないので、そういう点では役者さんたちには感謝したい。
1部の寺子屋の源蔵と松王丸の日替わり、初舞台、3部の仁左衛門の由良助、藤戸の菊之助、そして脇を固める人たちの活躍に引き寄せられ、何度も観たいと思った。 

  ・仕事のモチベーションアップにつながった

また、これは恥ずかしながら自分の個人的な話。仕事があるからそんなにいけないと思ったのだけれど、1演目だけ観ようとか、明日また観たいからなんとか今日頑張ろうとか、仕事のモチベーションアップにもつながり、意外と見ることができてしまった。私がフリーであることも大きいけれど。

 ・芝居の理解が深まった

何度も何度も違う角度から見ることでとても勉強になった。理解が深まった。特に寺子屋
ぜひ学生にはもっと安い金額で見せてあげてほしい。後ろの席など、まだまだガラガラなので。

 ・幕見的楽しみ方も

電話さえしてしまえば、当日もし行けなくても金銭的なダメージは全くない。また予約をしておけば演目のうち一つだけ見るというのもOK.幕見と同じ感覚だ。もちろん、気軽にポンポン予約して、ぽいぽいキャンセルはよくないのは言うまでもないけれど「せっかく予約したのに、あああ!行けなくてお金損したぁ!」ということはない。

 ・もはやいつでもタダで見放題感覚

もはや、もとを取ったと思った瞬間からあとは「いつでもタダで見放題!!」的な王侯貴族になったような感覚。

当初の懸念であった予約の取り方。これは初日が日曜に重なったこともあり、初日の予約だけは電話がつながらずかなり焦った。しかしその後はほぼいつ電話をしても通じて、対応も悪くなかった。

 ・金銭的ダメージは少なかった

通常、もう一度観に行きたい、でもお金が…、どうせなら1階で…、いやそれは…など、だいぶ「時間」と「お金」の間で行ったり来たりするが「時間」のことだけ考えればいいので精神的に楽。また、今月は行ける時間はすべて歌舞伎座に集中しようと決めたおかげで、文楽や遠征などはすべてやめた。おかげで、かえって節約できたという面も!

 ・フォロワーさんに会えた!

大体、2階席にいるのは同好の士。「もしやお近くの席かも!」とツイッターでつながっていた方と確認したらお隣だったりしてご挨拶など。笑ってしまうのは、推しが同じで、一番よく見える席を狙ったところ、お隣同士だったなど。常々お会いしたいなあと思っているフォロワーさんと会えるのは楽しいこと!

また、歌舞伎友達さんにもよく会ってしまうので「お互い好きですねえ!」と笑ってしまう。

 

■まとめ 今後への期待

 ・悪状況と表裏一体ではあるが、継続希望

とってもよかった観劇パスポート。別名感激パスポート。ただ、これは今のガラガラな空席状態であるからよかったという残念な面と表裏一体で、人気があれば電話で予約を取るのも大変だろうし、そもそも売り出しと同時に売り切れとなるような状況なら観劇パスポートなる存在も生まれないわけで。
痛しかゆしではありますが、1月以降もできれば続けてほしい。コロナ禍が落ち着き、団体客などを受け入れるようになっても、少ない枠でもいいから継続をしてほしい。

もともとチケットを早めにとれるゴールド会員が3階の良席を買い占めてしまい、歌舞伎を初めて観る一般の人が売り出しの時にはすでに安いチケットがないという状況を何とかするために作られたという面もある観劇パスポートだと思われ。
その意味では大成功ではないかと思う。事実私が3階席を買わなかったことで、少なくとも3席は空席が生まれたはず。

寺子屋など、難しい古典と言われているものを、何度も何度も観て理解が深まる人が増えるのは歌舞伎の未来を考えることへのヒントにもつながると思う。

 ・学生にはぜひ学割を

そして、2階席の後方2等など、まだまだガラガラなので、ぜひ学生さんたちに何度でも見に来られるような安い学割チケットを販売してあげてほしい。

 ・できれば当日申込も受け付けて

前日5時までの予約受付なので、当日も席が空いているなら販売してほしい。

―――
こういう記事は、10月の観劇パスポート売り出し前に書けるとよかったのですが、すでに10月の売り出しはおしまい。その後、どうなるかは全く未定です。

もし今後も(いずれにしても襲名興行後になると思うので来年の話になると思うが)売り出されるようなら、御自身の働き方の状況などと比べて、購入の参考にしてください。

 

とにかく後1週間。どれだけ行けるかわからないが、私にとって忘れらない夢のようなひと月となったことは、間違いありません。

2部 松浦の太鼓 揚羽蝶繍姿 観劇レポ

 

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松浦の太鼓 追善口上

松浦の太鼓は、白鸚初役で松浦候。白鸚なりの松浦候を作っていて、吉右衛門の松浦候がイメージにある身としては、あれ?なんだかちがうな的な感じでしたが、あれもまた正解なのでしょう。

 

あらすじと見どころについては、こちら!

munakatayoko.hatenablog.com

 

うしろの近習たちの中に染五郎クンがおり、生き生きと楽しそうに演じていました。

 

松浦の太鼓のあと、追善の口上がありました。

「苦労に苦労を重ね、播磨屋の芸を後世に残るよう努めてきた弟を誇りに思う。たった一人の弟との別れは、寂しい。わびしい」

と語る齢80歳の老優、白鸚

 

80歳での初役は弟のため、どうぞ鷹揚の御見物を。と深々と。

 

梅玉は、松浦の太鼓では6回吉右衛門と共演したとのこと。今回の秀山祭では、「全ての演目に出たかった」と、いつものようにちょっと早口、ちょっとモソモソな愛情たっぷりの語り口でした。

 

「まだ病院にいらっしゃるのではないかという気がする」というのは歌六。本当だ。ずっと病院にいると思っていた期間が長いので、私もまだそんな気持ちがします。(その後、その期間ずっと意識が戻っていなかったと聞いてショックを受けました)ひょっこり戻ってきて…、欲しいですね。そうであれば、降るような「播磨屋!」の大向うがかかるでしょうに。

揚羽蝶繍姿

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これは、吉右衛門の当たり役である籠釣瓶花街酔醒、鈴ヶ森、熊谷陣屋の名シーンでぱっぱとつなぎ、最後はだんまりで締めるというもの。

 

どうやって物語をつなげるのかと思ったら、全部ぶつ切りで、本当に名シーンのカット集のよう。かえって無理やりストーリーにつなげなくてこれはこれで良かったと思いました。

 

よく知る人は、「ああ、これもよかったなあ。あれもよかったなあ。鈴ヶ森は、昨年の7月に出演予定として名が挙がっていたじゃないか」などと思いを馳せ、吉右衛門の姿を重ねて見てしまいます。

 

初めて観る人は、ちんぷんかんぷんかもしれませんが、いわば映画の予告編のようなものだと思っていただければいいかと思います。

映画の予告編って本編が始まる前に、パッパパッパと数編出てきますね、その中でこれは面白そうだなとか、このジャンルは興味なし!とか楽しみながら観ますよね。

 

そんな見方をしてみては。

 

最初に出てくる花魁道中。籠釣瓶です。とても美しいでしょう?今回福助が八ツ橋を。花魁道中はまだ足が不自由なので、どうなさるのかと思ったら、あっと驚く演出でした。アイデア幸四郎が出したらしく、さすがのアイデアマンです。

 

きれいだなあと思ったらぜひ次回この作品がかかるときに見てくださいね。

 

幸四郎が佐野次郎左衛門と熊谷。よく研究しているのでしょうね、ハッと思うほど吉右衛門と似ている瞬間もありました。

 

吉右衛門の芸を継承していきたいという気持ちが強い人がこれだけたくさんいて秀山祭が叶ったこと、本当によかったです。ずっと続きますように。

松浦の太鼓 あらすじと見どころ おもしろいよ

松浦の太鼓のあらすじ・見どころをご紹介します。

わかりやすいので予習もいらないかと思いますが、其角、お縫い、大高源吾の関係だけは押さえておいた方がいいかと思います。お時間がなければ、登場人物だけ読んでおいてくださいませ。

 

登場人物

松浦候 吉良上野介の隣の館に住む。浅野内匠頭切腹後、四十七士たちに心を寄せ討ち入りを今か今かと期待している。

宝井其角 松浦候の俳諧の師。大高源吾も以前の弟子。その縁で大高源吾の妹を松浦候の屋敷の奉公に推薦してあげた。

大高源吾 元赤穂浪士。其角から俳句の指導を受けていたが、浅野家断絶となり、今は落ちぶれている。俳名は子葉。

近習たち 松浦候の俳句の付き合いをさせられる人々。おだてたり、すかしたりしつつ日々松浦候のご機嫌を伺う。

お縫い 大高源吾の妹。其角の推薦で松浦候に奉公をしている。

 

あらすじと見どころ

 <両国橋の場>

両国橋のたもとで、宝井其角と大高源吾が出会います。今や、浪人となってしまった大高源吾は、そそくさと立ち去ろうとしますが、其角は呼び止めてしばし話をします。

源吾は、煤笹売りの浪人となってずいぶんみすぼらしい。でも実はこれ、吉良家の近辺をうろついて情報収集に努めているのです。だから身をやつしているし、あんまり知り合いにも会いたくないのですね。

源吾は、其角に推薦してもらって妹のお縫いを松浦候の屋敷へ奉公させてもらっているので、そのお礼をいいます。

其角は、あんまり源吾がみすぼらしいので、士官をすすめますが、いやいや町人の方がましと言って、その場を繕います。其角は、その姿に心を痛め、松浦候から拝領した紋服を譲るのでした。

別れ難い気持ちから其角は、上の句を詠んで、下の句をつなげるように言います。
「年の瀬や水の流れと人の身は」 という其角に
「明日待たるるその宝船かな」と源吾は返します。

?どういう意味かな?と其角が考え込みます。

  見どころ

ここでは、源吾がうら寂しい浪人になっていること、源吾の妹お縫いが松浦候のお世話になっていること、歌の意味など注目しましょう。

 <松浦邸の場>

松浦候が、其角を招いて家臣たちと句会を催しています。
おおらかな殿様ですが、家臣たちは機嫌をそこなわないよう、おだてたりすかしたり。とにもかくにも今日も無事にご機嫌麗しく過ごしてくれればよいみたいな、のどかな感じです。

そこに腰元お縫いが来ると、松浦候は急に不機嫌になります。
実は、松浦候は赤穂浪士に同情しており、早く仇討ちをすればいいのにと今や遅しと待ち望んでいるのです。

何をグズグズしているのだろうとイライラ。
大石内蔵助は京都で遊び歩いているらしいし、大高源吾だって情けないことにちっとも敵討ちをする気がないらしいじゃないか、大高憎しが高じてお縫いまで憎く感じられてしまっているのです。

暇を出すと言われて、すごすごと去ろうとするお縫いですが、其角が昨日源吾と会って句を詠んだ話をすると、俄に気が変わります。

「明日待たるるその宝船」という宝船という意味は「仇を取ったという吉報」ではないのか!

俄に元気になる松浦候。現金なんです。

そこにドンドンドンと太鼓の音が響き渡ります。太鼓の打ち方で山鹿流の陣太鼓だと気づき、吉良邸に討ち入りをしたことがわかった松浦候、大いに喜び、助太刀すると立ち上がるのでした。

  見どころ

松浦候がイライラしたり、家臣がオタオタしたりなだめたりするのがかわいいのです。

 <松浦邸玄関先の場>

何やら大騒ぎ。松浦候が馬に乗り、吉良邸へ向かおうとしています。危ないからと止める家臣たちが大慌て。

そこへ子葉というものが来たとの知らせ。子葉は、源吾の俳名です。

「すぐに通せ!」
昨日とは打って変って、立派ななりの大高源吾。見事本懐を遂げたことを報告し、

「山を裂く 刀も折れて 松の雪」という辞世の句を残します。

大いに心を打たれた松浦候は、お縫いは、ずっと面倒を見るから安心しろと告げるのでした。

 

  見どころ


玄関先で、馬に乗って助太刀に行こうとする松浦候もかわいいのですが、しょぼくれていた大高源吾が立派に報告に来るので、松浦候ならずとも我々観客も「あっぱれあっぱれ」という気持ちになります。

 

「松浦の太鼓」は、「忠臣蔵」のスピンオフですが、悲壮感などはなし。気のいい松浦候がイライラしている様子は、いわば贔屓のサッカーチームがなかなか勝てなくてイライラしている親父、いや、もう少しお品のいい社長?のようなモノ。(と言ったら怒られるかな)
セリフもわかりやすく、楽しめるのではないでしょうか。

2世吉右衛門の松浦候はかわいらしさ、品の良さで絶品でありました。

実際の大高源吾

大高源吾は実在の人物で、大石内蔵助の信任も厚く宝井其角との親交もありました。茶道にも堪能で、吉良家の茶会を通じて吉良上野介のいる日程を確かめることに成功したといいます。

討ち入りのあと、松平家へお預け、その後切腹。享年31歳だったそうです。
その時の辞世の句は、「梅を呑み 茶屋もあるへし死出乃山」

「山を裂く刀も折れて松の雪」という句は討ち入り直前に母親相手に書いた書簡に書かれており、討ち入りの際には袖につけてあったそうです。

 

参考:赤穂市忠臣蔵の部屋へようこそ

 

大高源吾の碑は、両国橋のたもとに今でもあります。

あ!「いもづらで猪首」だったとのことなので、イケメンではなかったようです(^。^)

歌舞伎座2階東席〜初めての桟敷席

本日、2階の東席です。はじめての桟敷席に浮かれています。

初めての桟敷席

今月は観劇パスポートを購入したので、行ったことのない席をいろいろ試すつもり。で、2階の東席です。

3階の東席は、上手の役者が下手に向かってしゃべるセリフが聞こえ辛かったりしましたが、2階の東席はほぼそんなこともありませんでした(声の小さな人いなかったし)、義太夫が聞きづらいこともありませんでした。
尤も、東席の1番だったから、舞台に近いとまた違うかもしれません。

東の桟敷席は、2席ずつ区切られています。
親しい人とならいいけれど、知らない人が隣はちょっとどうかな?
と思っていたのですが、実際は普通の席よりずっとスペースが空いているので問題ありませんでした。


▲これだけ空いています

靴を脱げる。机があるということで、とっても居心地が良いです。

お茶や資料を置き、足もリラックス。
そして後ろや前に人がいない安心感たるや。

舞台の見え方ですが、3階東もそうですが、舞台から花道まで視界に入るので、歌舞伎座の舞台の広さを実感できます。

寺子屋では、子供たちが呼ばれて、人相を確認されて、解放されて、親のところに走っていく、という一連の流れが、120度くらいの視覚で見ることができます。次から次へと走り出てくる子供たちがかわいい。

過日、子供と行く歌舞伎で、1等席とって子供にぐずられて退席するよりは、3階東席に行っては?
とお薦めしましたが、

こちらの記事↓
munakatayoko.hatenablog.com


もし、同じ一等席の値段を払うつもりがあるのなら、桟敷席がお薦めです。

靴を脱いでリラックスできるし、周りに気兼ねがいりません。

幕間は、「鳳」で。

幕間には、2階の「鳳」で。予約なしで入れて、「花篭」よりおしゃべりも少なくて落ち着いていました。
サンドイッチ800円。コーヒー500円。

ほかに本日のケーキ600円など。

【受付開始】作者と劇評家のコトバで読み解く歌舞伎のセカイ 第5回「河竹黙阿弥」

作者と劇評家のコトバで読み解く歌舞伎のセカイ

第5回「作者編」テーマは河竹黙阿弥

 

申込がはじまりました(^^)/

 

毎回、木ノ下さんと田中さんの軽妙な語りと深い洞察が人気の本講座。

今回は木ノ下さんの作者編、テーマは満を持しての「黙阿弥」です!

 

今なお多くの人に愛されている黙阿弥の作品。七五調のリズムが心地よい世話物の「弁天小僧」に「髪結新三」、「三人吉三」。大胆な舞踊の「連獅子」や「土蜘」など、現代に残る名作をその生涯で多く書いています。江戸時代の風俗を色濃く残した作品が印象的ですが、実はそんな作品ばかりではありません。

 

黙阿弥が生きた時代は幕末から明治時代にかけて。時代の波に翻弄されて新しい歌舞伎を求めて模索した黙阿弥は、驚くようなとがった作品も書いています。「え?こんな芝居も書いているの?」そんなビックリも当日のお楽しみ。

 

新しい歌舞伎とは…?

今の歌舞伎界にも通じるテーマへのヒントが得られるかもしれません。

 

木ノ下さんと田中さんの深い知識、広い歌舞伎愛をがっつり堪能できるマニアックな2時間講座です。

 

  • 開講日時:2022年10月16日(日)13:30~15:30
  • 受講料:4500円(定員60名)
  • 登壇:木ノ下裕一【木ノ下歌舞伎主宰】

      田中綾乃【三重大学准教授・演劇評論家

※今までと会場場所が変わっています。お間違えのないように。 

お申込み/お問合せ

https://lets-grace.com/contact

講座名A15・名前・連絡先電話・メールアドレスを明記してお申し込みください。

前回のレポ 寺子屋深掘り↓

munakatayoko.hatenablog.com前々回レポ 並木宗輔深掘り↓

munakatayoko.hatenablog.com

第2回 熊谷陣屋の深掘りはこちら!

munakatayoko.hatenablog.com

今月の銀座百点

2022年9月号の銀座百点。

歌舞伎座横の松崎煎餅でゲットしました。

お目当ては、百点対談。

今月は中村又五郎さんです。

山川静夫さんとの対談は、幼い中村光輝時代から播磨屋中村吉右衛門さんとのさまざまな思い出、今月の秀山祭でのお孫さんの初舞台など、とても幅広くお話が弾んでいます。

写真もとても柔らかな表情をされていて、素敵です。

今月の秀山祭では、
1部では「白鷺城異聞」で、イケメン本多平八郎忠刻

寺子屋」では、打って変わって涎くり

3部では「藤戸」で佐々木盛綱で泣かせるという、大車輪のご活躍。

どうぞお怪我のないように!

襲名でのお怪我のお話、びっくりしました。

詳しくは銀座百点で。

銀座百点をゲットできるのは
こちら。無料です。

http://www.hyakuten.or.jp/map/map.html