台風19号で被害を合われた方、心よりお見舞いを申し上げます。
さて、幕見ツアーを昨日開催。天気にも恵まれ、幕見日和の10月です。そして初めて歌舞伎を観るのにぴったりのこの演目。ぜひ多くの方に見ていただきたいものです。
【概要】
明和2年(1765年)隆積花二代源氏 という芝居で上演された最後の部分です。
蜘蛛の精が様々な人間に化けて源頼光を倒そうというお話。
今回は、小姓、太鼓持ち、座頭、傾城と化けて、最後に蜘蛛の精が出てきます。すべて一人の役者が、早替わりという手法で演じ分けます。
上演時によって、変身するキャラクターは、5人だったり６人だったり、キャラクターも違ったりします。
【登場人物】
薄井貞光(尾上松也)
卜部季武(中村虎之助)
【あらすじ】
源頼光の館では、頼光が物の怪に取りつかれて寝こんでいます。見張り番をしている確井貞光と坂田金時は、今日に限ってねむくてならぬ、と不審がっています。
注1)紫のハチマキは、病気の印です
こういうときは喉にヒリヒリする濃茶を一杯飲みたいものだ。
と言っていると、ドロドロドロ。あら不思議。見慣れぬ小姓が出てきて濃茶を持って来てくれます。
注2)すっぽんから出てくるのは、妖怪変化のお約束
動きが速くなり、小姓を怪しむと、かくれんぼを始めて、すっと姿を消してしまいます。
と思ったら、現れたのは、太鼓持ちの愛平。
京の廓に住んでいるというので、渡辺綱の羅生門での手柄話を知っているかと尋ねると、すらすらと答え始めます。
しかし、奥にある頼光の寝室に入ろうとして、蜘蛛の糸を繰り出して消えていきます。
これは、ぼんやりしていられない。しっかりと番をしなければ！と二人は寝てしまわぬように碁を始めますが、眠気に勝てません。
次に座頭松市が出てきます。
奥州出身の座頭だと知り、貞光たちは仙台の浄瑠璃を語るよう頼みます。それに応えて語りますが、時々見えないはずの目が見開かれたり、ドロドロ怪しい雰囲気。奥の寝室を目指すため、貞光たちは捕えようとすると、ぷしゃーっと蜘蛛の糸を繰り出して姿を消してしまいます。チャカポコチャカポコという下座音楽も楽しいです。
寝室では、源頼光のところに恋人である傾城薄雲太夫がお見舞いに来ていました。
しかし、残念。この薄雲太夫も蜘蛛の精だったのです。
相手が土蜘蛛だと知ると頼光は、貞光、金時、渡辺綱、卜部季武と共に、討伐に行きます。
まさしく曲者。と頼光が気づいてからは、テンポもアップ。鳴り物もどんどんと。
最初はぼーっとしていた頼光も、正気に戻ったか、きびきびと戦います。
現れたのは、おぞましや蜘蛛の精。なんと、この国を魔界に変えてしまうというではありませんか。
最後には兵卒たちもたくさんでてきます。
頼光は、蜘蛛切丸という刀で、見事蜘蛛の精を退治するのでした。
やんや、やんやの大団円。
【見どころ】
★眠い眠い貞光と金時
貞光と金時が、何をしても眠くてウトウトするのがかわいい。キセルを吸いつけたり、囲碁をしたり。寝てはいけないと思えば思うほど眠くなること。私たちもありますよね。まあこの場合は、妖術によって眠くなっているんですが…。
★プシャープシャーの蜘蛛の糸
なんといっても、これ。キャラクターが蜘蛛に戻るとき、ぷしゃーと蜘蛛の糸を繰り出します。華やかで4階からでもよく見えますよ。
この蜘蛛の糸を片付けるのは、後見と呼ばれるサポート役。シュルシュルシュルと一生懸命回収していますよ。そこにも注目。
★別キャラ5人に早替わり
早替わりという手法は、着せ替え遊びになってはいけないと言われています。ただ着替えるだけではなく、そのキャラクターになりきらないといけません。
蜘蛛の精の小姓は、愛らしく。太鼓持ちは明るく軽快に。コツコツと杖を使ってよぼよぼの座頭。目にも美しい傾城。そして、最後に出てくる蜘蛛の精はおどろおどろしく。
※この変化するキャラクターは、上演のたびに少しずつ変わります。小姓が愛らしい女の子だったり、薬売りがいるなど。
今回の早替わりは、どこから出てきてどこへ消えていくかも注目！瞬き厳禁でお見逃しなく！
★勇壮な踊り
この芝居は、ジャンルとしては舞踊。所作台という板を舞台の上に乗せてあります。最後の退治するところでは、頼光と四天王がドスドスと足を踏み鳴らして勇壮に踊ります。
★美しい蜘蛛の衣裳に注目！
衣裳がきれいです。傾城の衣裳にも蜘蛛の刺繍が…。他のキャラクターはどうかな。
2022年5月には、土蜘がかかりますが、どう違うのかな？
