さてさて。宵宮の祭に紛れて逃げた団七。その後どうなったのだろうか?
義平次がカーっとなって団七の額を割った団七の雪駄。これが、殺人現場に残っていてそれを徳兵衛が拾い、義平次を殺したのは団七であると悟る。
徳兵衛の説得に耳を貸さない団七に、ついに奥の手
第八 友達に心を砕いた石割雪駄の合印 (というのは浄瑠璃のタイトル)
義平次殺しの下手人は上がらぬままに日が過ぎ、お梶は下手人に心当たりはないかと毎日のように役所へ呼ばれていた。倅市松は、わんぱくで棒をもって振り回し、近所の子どもたちと敵討ちごっこ。じいさまの仇がわかったら俺が殺してやると息巻いている。それを引きこもっている団七が聞いて、胸もふさがる思いでいる。
お梶は「父は悪い人だから畳の上では死なないだろうとは思っていたから斬ったやつにそれほどの思いもなかったけれど、悪い人でも親ではあるから粗末に扱っていたのが悔しい。哀しい」と泣いている。
そんなところに徳兵衛が、備中玉島へ帰国する挨拶にやってくる。徳兵衛はさりげなく一緒に玉島へ下ろうと誘うが、団七は断る。それならばと雪駄を見せて、下手人がお前だということはわかっているから、いっしょに玉島へ下ろうと心を尽くして説得するが応ぜず。
「早く、行きゃ」とまた引きこもろうとする。
徳兵衛は、蚤を例に出して説得を続ける。蚤はすぐに命を取られることも知らず身体の中をうごめいている、いくら飛ぶ術を得ていても天下の息のかかった指で押さえられては、あっという間に身動きが取れなくなってしまうと、団七の身を蚤になぞらえるのだが、団七は「蚤もじっとして縫い目の中にいればとらえられることもない」などと部屋にこもってしまう。
そこで徳兵衛は、今度はお梶に話しかける。帷子のほころびを繕うように頼み、なんとお梶をクドキにかかる。そこへ団七入ってきて喧嘩。外より三婦も来て、団七に離縁を勧め、離縁状を団七はたたきつける。
ところがこれは、徳兵衛と三婦の考えた策だった。昔は、親殺しはただの殺人と比べて罪が重く、親殺しをした者は、妻や子どもにも塁が及ぶ。それを避けるため団七とお梶を離縁させることで、団七と義平次を赤の他人としたのだ。
三婦がうまく家の外に徳兵衛とお梶を追い出し、3人と市松が門の外で嘆いているところに捕り手の足音。駕籠かきからも証言があり、ついに団七が下手人であることは確定的となったよう。徳兵衛は、自らが捕縛をしましょうと名乗りをあげ、団七の元へ急ぐ。
「やあやあ、とても逃れぬ身の大罪!尋常に縄かかれ」と大声で呼ばわりながら、銭一貫文を貫く縄を路銀にせよと首にかけ、落ちのびるのを助けたのだった。
―私はこの九郎兵衛内の場がなかなか好きで、徳兵衛の団七への友情、説得、いきなりのお梶へのアタック、実は…、さらに追っ手から逃れてという流れが見事だなあと思うのだ。歌舞伎でもこの場は時々出るので、またいつか見られる日を楽しみにしたい。「蚤取った!」から通称「蚤取り」と言われている。友情、色気、男気満載の場だ。
その後、まだ続きます。
どうなる。団七。徳兵衛。
そして、磯之丞の殺人隠蔽に対する詮議の目は。
隠蔽を手伝った三婦は。
お辰、磯之丞は無事に玉島にたどり着いているのか。
いったいどうなるのか。
その後どうなるのかについては、こちら!いよいよ大詰め。
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