「初めての歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog

すばらしき日本の芸能、歌舞伎。初心者にわかりやすく説明します♪

『夏祭浪花鑑』その5 逃げた団七の運命は?舞台は備中玉島へ

さて、続きです。追っ手から逃げた団七と徳兵衛、いったいどうなったでしょうか。

 

備中玉島で徳兵衛にかくまわれていた磯之丞と団七。磯之丞新たな災難

礒之丞も団七も、備中玉島の徳兵衛の家にかくまわれていた。

浜田家より介松主計が来た。お家の大切な「千住院力王」という刀が紛失し、その嫌疑が磯之丞にかかっているといい、取り調べに来たのである。佐賀右衛門が、「磯之丞が刀を盗み、売った金で傾城を買った」と証言したという。

身に覚えのない罪。あまりの屈辱に磯之丞は身の潔白を晴らすため、切腹をしかける。しかし身の潔白を晴らさずに死んでは、親に恥辱を与えるだけ、まずは刀を探すことが大切とお辰に諭される。

 

礒之丞の殺人はおとがめなし。

夕方になり、三婦がお梶と市松を連れてくる。三婦は、磯之丞が弥市を殺したときに、細工をして、伝八が弥市を殺しその申し訳なさに自殺をしたように見せかけたていた。ところがその時の細工(礒之丞が書いた遺書を流用)が、遺書の筆跡が伝八とは違ったため、詮議の手が礒之丞に届くと聞き、恐れていた。ところが、磯之丞が殺した弥市はお尋ね者であり、殺した咎は問われず、さらに伝八の筆跡が違ったこともおとがめなしということで、万事解決したとうれしい報告。

【―ここで話はそれるけれど、『引窓』でもお早が「都」という名の遊女だった時、与兵衛は誤って人を殺してしまい、都が別人に罪を負わせているんですよね。その後のことが『引窓』でも語られていますが、「殺された太鼓持ちは、盗人の上前取りで殺し得。」つまり、殺しちゃったけれどおとがめなしだったよ~ん。なんてセリフがあります。それを聞いて長五郎は、「同じ人殺しでも運のいいのと悪いのと」と思わずつぶやきます。殺人をしても相手が相当悪い奴だと、おとがめなしなんですね、昔は。】

 

さらに、道具屋ではお中と琴浦を兄弟分にして待っているとのこと(兄弟分とは…??)。

離縁の細工は、日にちが合わず無効に!

嬉しい報告があったものの、残念なことも。それは市松に手錠がかけられていたことだった。

 

せっかく三婦と徳兵衛が腐心して、義平次と団七の親子の縁を切ったにもかかわらず、義平次が死んでから1週間経っての離縁だったため、有効にはならないとのこと。そのため、あわれ息子の市松にも手錠をかけられてしまったのだ。

 

そこにこっぱの権となまの八がしのんでいたことがばれて、三婦、お辰、徳兵衛は2人を追いかけていく。

 

捕り手がやってくる。表から代官が。裏からは佐賀右衛門が。しかし隠れていたはずの団七は逃げており、お梶と市松も追っていく。

宝刀を盗んだ真犯人とは。

磯之丞がとぼとぼしおしおと縄にひかれてやってくる。

佐賀右衛門は、介松主計に「こんな囚人を国まで連れて帰るのは国費の無駄だ。首にして帰ればいい」と刀をするりと抜き放ったところを主計すかさず腕を捩じ上げ、刀をもぎ取り、磯之丞に刀をパス。縄をかけたと見せかけてかけていなかったのだ。

 

礒之丞が刀を明かりにすかしてみれば、おお!これは紛うかたなき「千住院力王」の刀!

 

盗賊は佐賀右衛門その人であった!徳兵衛と三婦がグルグル巻きに締め上げる。

 

礒之丞は、紛失した刀を見つけ出した功により帰参を許される。

殺人も不問となったことだし(笑)、一安心。

市松、罪人をお縄にする

「磯之丞を守る」という使命もなくなった団七は、義平次殺しの裁きを受けることとなるが、徳兵衛は市松の手かせをとり、嫌がる市松に手を添えて団七に縄をかけさせてやる。親子の縁を切っている市松に罪人を捕まえたという功をつけさせてやったのである。

 

ようやく無実となり、国に帰れる礒之丞は、「わが身に替えても団七の命乞いをしよう」という。おっつけめでたい知らせも届くことだろうということで

 

「義理の縄、情けの縄と怨の縄。皆引き連れて和泉の国浜田の館へ、立ち帰る」

 

で幕となる。

 

礒之丞、「わが身に替えて」なんて言っているけれど、ホント頼んまっせ!ちゃんとやってくれるのか不安だなあ!礒之丞だけに…。

これだけ長い話だったので、最後に磯之丞が改心してバシっと決めてくれて、晴れて団七が親殺しの罪を免れるところでチョンだとよかったのですが。

 

ちなみに、この話の元になった大坂境の魚売りの殺人事件ですが、あっさり下手人は斬首されています。

 

前の「団七九郎兵衛内の場」は、よかったのですが、こちらの最後の段は最後のつじつま合わせが大変な感じで、ちょっとバタバタとしていますね。

「団七九郎兵衛内の場」はたまに出ますが、こちらの最後の段は出ないのも、わかるような気がします。

 

普段芝居には出てこないお話のその後のお話でした。

 

芝居のあらすじみどころはこちら。

munakatayoko.hatenablog.com