「初めての歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog

すばらしき日本の芸能、歌舞伎。初心者にわかりやすく説明します♪

宗家藤間流いろは会~未来の宝が集う

宗家藤間流いろは会が、8月21日昼夜8月22日昼夜と4公演、日本橋劇場にて行われました。

 

4公演のうち、22日の夜の部に行ってきました。

 

いろは会というのは、藤間流の勉強会として今の藤間勘十郎さんのおじい様が立ち上げた会ですが、東京での開催は30年ぶりとのこと。(大阪では平成30年に開催)

 

私が行った22日の夜の部は、歌舞伎界のちびっ子たちがずら~り、そしてしっかりと大人も魅せてくれて、大変充実したプログラムでした。

 

宝船

中村秀乃介クン(2018年生)はお兄ちゃんの種太郎クン(2016年生)がしっかりとサポートしつつパタパタと足音もかわいらしく。首を右に左に振るたびに、揺れる秀乃介クンのマッシュルームさらさらヘア。よく最後までできました。種太郎クン、一人で踊りたかったんじゃないかな。

雨の五郎

小川大晴クン(2015年生)は、時蔵の孫、梅枝の長男です。私は何度か踊りの会で観ていますが、本当に大晴クンは物おじしないし、度胸満点。

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雨の五郎も、りりしく、指先まで神経が行き届き、視線もきっぱりと決まり、将来が楽しみです!

 

文売り

梅乃さんってば、土日はフェードルで大奮闘だったのに、パッと切り替わっての文売り。今回は、素踊り。梅乃さん、いつも美しいけれど、素顔も美しい!しぐさもたおやかでとても色気がありました。

文売りの詳しい内容は、こちら。とても楽しい内容なので、読んでくださいね。

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供奴

坂東亀三郎クン(2013年生)

いやあビックリしました。あっという間になんちゅう立派に大きくなられたのでしょう。とてもいい面構え。がっちりとした体幹の強さを感じる。首が太いのかなんなのかわかりませんが、とてもしっかりとしました。春興鏡獅子で、丑之助くんと胡蝶を踊ったのが、まだおととしだぞ、あの時からすでにクールビューティといいますか、ちょっと大人っぽい雰囲気はありましたが、さらに亀三郎クン、スケールアップして安定感が増していました!

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歌舞伎美人の歌舞伎DE自由研究では、かわいい姿も披露していますよ♪

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鞍馬山

出ました。チビ獅童。陽喜クンの登場です。(2018年生)すでに超歌舞伎などでスターになっている陽喜クン。國矢天狗を従えて。見得も決まり、タンタタンタと花道をかわいく、かっこよく引っ込んでいきました。

 

浮かれ坊主

 

願人坊主は吉之丞さん。私は吉之丞、吉兵衛を見ると、吉右衛門さんを思い出さずにはいられません。軽妙洒脱に踊る吉之丞さんはさすがにすごいの一言です。

 

鷺娘

 

一番びっくりしたのは、これだったかも。プログラムを見ると、鷺の精に米吉。そして烏天狗梅寿、蝶也とあります。鷺娘なのに、烏天狗とは、これいかに。

「妄執の雲晴れやらぬ朧夜に」で始まる鷺娘。出てくるのは、セリではなく花道のすっぽん。しかも素顔の素踊りで、ちょっときついかなあ、と思ったのですが、踊りに魅せられているうちに素顔も衣裳も気にならなくなりました。

 

そして、この鷺、大小3本の傘を次々と操ったり、素踊りなのに引き抜きがあったり、烏天狗と戦ったりして、滅法強い鷺娘だったのでした。

そして、最後死・な・な・い!2段の台に乗っての見得。

 

資料をひもとけば、こういう演出もあったそうで、木挽町日録さんのブログより。

皆さんいろいろなさっていたのですねえ。

昔は宙乗りをした鷺娘まであったそうです。

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鷺娘のバージョンについても知ることができて、大変興味深く見せてもらいました。やはり、こういう試みがないと、以前の演出がそのまま絶滅してしまいますから、貴重なものを見せてもらったという気がします。

立三味線が宗家藤間勘十郎さんだったとのこと、気づかぬ大失敗。

 

鞍馬獅子

演目の中で一番長い36分だったんですね。あっという間でした。鷹之資クンの妹の愛子さんと種之助(1993年生)。

義経の妻である卿の君が、夫の生死がわからず狂乱状態となっているところに、義経の家来である喜三太が来て、なだめたりすかしたり、という流れ。

卿の君(愛子)が長刀をぶんぶん振り回したり、喜三太(種之助)が軽妙に踊ったり、かと思えば卿の君がちょっといい雰囲気になったり、喜三太の首を絞めたり。

なるほど狂乱していたのですね。種之助は相変わらず踊りが達者で、普通に足をひょこひょこと上げるところでも腿が胸に着くかと思うほどよく上がる。獅子頭をかぶっているときには、足を凝視していましたが、まあ軽やかにリズミカルによく動き、八の字を描いていました。

卿の君に翻弄されて、汗だくの喜三太。文字通り、汗だくの大熱演でした。

 

紅葉狩

上臈じつは滝夜叉姫が男寅(1995年生)。従者が玉太郎(2000年生)。とても丁寧に真摯に一生懸命踊っており、好感が持てました。(ほかのみんなもそうですけれどね、もちろん。)男寅は、今年亡くなった左團次の孫。玉太郎は人間国宝中村東蔵の孫。東蔵さん、ロビーでお見かけしたので、この日は観客席で孫の活躍を見守っていたのでしょう。

通常の「紅葉狩」は、竹本、常磐津、長唄の三方掛け合いで華やかににぎやかですが、今回は長唄のみ。

敵である平維茂役が、師匠の藤間勘十郎。男寅ちゃんがいくらがんばっても平維茂に勝てる気が1ミリもしません!

 

最強なのは

なんといっても、いろは会最強なのは、平維茂ならぬ宗家藤間勘十郎その人ではなかろうか。

このいろは会をすべてを企画、演出、統率。しかも私が紹介したものは、全体の1/4にしかすぎず、日夜4公演すべて違う演目、素人さんも玄人さんも、子どもも大人もいて、決まりきった演目をやらせるのではなく、その個性に合わせて変えるべき演出を変えています。

しかも、本人自ら21日昼の部には「連獅子」、21日夜の部には「苫舟松竹梅」、「道成寺」の住僧、22日の昼の部には、「五條橋」で弁慶、夜には「紅葉狩」にご出演。三味線などには22日夜の部に「鷺娘」で出ていたので、他の回でももっと出ているのでしょう。もしや、宗家が10人くらいいるのでは?と思うほど。

 

勘十郎さんの会は、昨年、宗家藤間流藤間会の名披露目舞踊公演に行きました。この時は、御長男の康詞さんの名披露目でしたがまた企画がとてもよくて。子ども用のパンフレットには、QRコードで動画がついていたり、わかりやすい説明であったり。さすがお子さんが3人いるだけあって、ツボを心得ていらっしゃると感心したものです。

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その企画力は今回もいかんなく発揮。

ほかの回では体験ブースなどがあったそうで、新たな客層、特に子供たち(役者も観客も)にも大きく門戸を広げている姿勢が素晴らしいと思います。

 

今回は、ちびっ子たちの頑張りを見せてもらい、とてもよかったです。しかし同時に、ちょっぴり寂しさも。

なぜなら、今4歳~10歳くらいのこの子たちの10年後は、多分お役の付かないお年頃。そして、ぱあっと花開く若手役者として出てくるのは15年後、さらに成長して力をつけていくのは20年以上先のこと。

それを私は観ることができるのだろうかという気持ちになってしまいました。

長生きして、見届けたいものです。。