「初めての歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog

すばらしき日本の芸能、歌舞伎。初心者にわかりやすく説明します♪

「初世市川猿翁」バージョン「傾城反魂香」。よりわかりやすく。

面白かった~「傾城反魂香」通称ども又。

いつものども又との違いが面白かったのですー。

通常の「ども又」の出

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↑こちらの記事でもご紹介したように、通常の「ども又」は、最初は百姓どもが虎が出た~といって大騒ぎしているところからはじまります。それを修理之助が見事に消し去ったので、やんややんやの大喝采

土佐将監光信は修理之助に印可(師匠が弟子が奥義を身につけたことを認めて与える免許状)の筆を授け、「土佐光澄」という名前も与えます。

 

お百姓どもは、「いやあ、あの絵描き殿に、美しい女性を10人ほど描いてもらって金儲けがしたい」やら「俺は借金の帳面を消してもらいたい」などとてんでに勝手なことを言いながら帰っていくのです。

又平夫婦は道すがら、百姓たちの話を聞いて修理之助の活躍やらお名前を頂戴したことなどを聞いてショックを受け、沈痛な気分で出てくるというものなんですよね。

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それが今回の澤瀉屋バージョンでは違います。正確に言うと澤瀉屋バージョンというよりは、「初世市川猿翁」バージョン。今の猿翁さんは、通常のども又を上演しているそうです。

「初世市川猿翁」バージョンの「ども又」の出

又平たちが登場、お名を欲しいなあとおねだりをしているところで、虎が出てきて大騒ぎ。又平夫婦の目の前で、修理之助がバシバシと虎を撃退。そのおかげでお名を頂戴する。それを又平夫婦のまさに目の前でやられるので、そのショックがまざまざとものすごくわかりやすい。

 

オタオタし、後輩に先を越されたという嫉妬、哀しさ、悔しさが観客の目の前で表現されます。
帰っていくお百姓たちのセリフも違いますよ!


「弟弟子に先に越されて情けない」などと馬鹿にするセリフを吐いてお百姓たちは退場していくのです。


又平ショックですよね。

 

 

また将監の妻北の方は、この型では女中になります。今回は寿猿が軽やかに演じていました。93歳の現役最高齢の歌舞伎役者。

又平住家

そのほか、今回楽しみだったのが、又平住家です。この話では、お姫様がさらわれたので、奪還を手伝ってほしいと雅楽之助が訴えて来ます。それで又平もそれに応じたいのですが、修理之助にその役を命じられてしまいます。

又平にしてみると、

お名ももらえず、姫様奪還という役ももらえず、ダメだ俺。

みたいな感じになるわけですが、最終的には、奇跡が起こって又平の絵の実力がわかり、お姫様奪還の役目をもらえることになり、お姫様を助けに行く!というところで終わるのですが、今回はそのあとの又平住家までつきます。

 

奇跡をおこした又平ですから、敵に向かってガンガン絵を描き、その絵がどんどんとほんものになり、敵をどんどんやっつけるというお話、おもしろいじゃないですか。その又平住家を今回初めて観ることができました。

 

ちょっと不満

面白かったけれども、ちょっと不満。

襖絵に描かれている絵がカラリとひっくり返るとその精が出て、相手と戦って打ち負かすという趣向は面白かったのですが。

 又平が戦わない

なんとなくイメージでは、
雅楽之助が満身創痍でSOSを求めてきていたのに対して助けに行くのですから、

すぐ!行く!すぐに戦う!バシバシと絵筆をかざして絵を描く!どんどん描く!

精がどんどん絵から飛び出し、敵と戦い無事姫を奪還!

というのを想像していたのですが、

なぜか幕間後の又平住家は、おとくと又平がまったりと一献傾ける様子。そこへ敵が来る。

敵がやってきて襖絵がからりと反転すれば、血の通う奴(青虎)や藤娘(笑也)やら座頭(猿弥)やらが動いて敵をやっつける!
それはいいのですが、そのときに又平が全然でてこなーい!

できれば、又平がでてきてシャッシャッャッシャッシャッシャッっと筆を駆使し、最後に「エイ」というとあら不思議やな、精が出てきて、バッタバッタと敵をやっつける

としてほしかったなあ。なんで又平全然出てこないのかしらん?

最後のおまんまの立ち回りは面白かったけど。

 

 そして修理之助はいずこに?先に行って戦っていたのでは?

でも藤娘やら澤瀉屋メンバーがいろいろ出てきて敵をやっつけるので楽しめました。澤瀉屋メンバーのトリはもちろん猿弥さん、がっつりポーズも勇ましく、敵を蹴散らかしてくれるのでした。

姫様は米吉。昨今ますます美に磨きがかかっております。

 

中車(又平)も、頑張っていました。猿之助の代役となった壱太郎(おとく)も好演。團子(修理之助)も清々しく、歌六(土佐将監)はずっしりと貫禄あり、舞台を引き締めていました。

 

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25日まででーす。

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