最後の日、昼の部を観ました。
夜も見たかったけれど、別件あり断念しました。
秋空に千穐楽の幟が映えます。
マハーバーラタについて2回書きました。
munakatayoko.hatenablog.com
しかし菊之助について書いていないのですよね。
菊之助カルナは、本当に美しく、凛々しく、悩み、戦い、激烈なラストを迎えました。シヴァ神としてしっかり最後を締めましたが。
2点感じたことをば書き留めておきたいです。
その1 菊之助の「月」のようなスター性
菊之助は、とても美しくて主役として間違いのない人なのですが、「俺が俺が」といった太陽のように全部かっさらっていくスターではなく(もちろんそういうスターもOK)、周りを引き立てる「月」のような人なのかなあと思います。地味という意味ではないので、誤解をしないでほしいのですが。いや、誤解されるとまずいな。美しさは紛れもないのですが少し線が細い分、周りの魅力を引き立てて、芝居全体の価値を上げていく手腕がすごいとでもいえばよいでしょうか。
ナウシカでは芝のぶの魅力を引き出し、成功。再演のナウシカでは自らはクシャナとなり、米吉をナウシカに抜擢。ファイナルファンタジーXでは、米吉、芝のぶ、吉太郎。いずれも期待をはるかに超える活躍で話題となりました。
演出家としての目は鋭く、完璧を目指すし、また今回はインスタなどでも積極的に芝のぶをたてていて、本当に力があるだけではなく、真面目さと真摯さと気配りに感心します。
その2 菊之助は、前に立ちはだかる壁を芝居に昇華する
菊之助は、マハーバーラタ、ナウシカ、ファイナルファンタジーX、と新作を手掛けているのだけれども、親との葛藤を抱える子どもというシチュエーションが好きなのだろうか。どれだけ菊五郎という立ちはだかる壁、(しかも最後には吉右衛門という義理の父まで)と戦って来たのでしょうか。
『ナウシカ』では巨神兵がナウシカに、『マハーバーラタ』ではカルナが
「私は、生まれてきてようございましたか?私の選んだ道はまちがってはいませんでしたか」と聞くんですよね。切ない。いつも胸に問うているのでしょうか。菊之助は。
しかし私はそういう物語に引き付けられる菊之助を悲劇の主人公にしたいわけではありません。自らの運命を、俳優として演出家として、作品の中で昇華させているのが見事だと思うのです。
これからのマハーバーラタ戦記
さて、最後にマハーバーラタ戦記について。
長い原作の中からピックアップしただけあって、あれ、ここはどうなるの?と思うところもあります。
12年の間、ビーマの消息はわかったけれど、他の兄弟はどうだったの?とか12年間人にあってはいけないのに、味方の軍隊できちゃうの?とか。
それぞれ原作の中には、そこの答えの物語が満ち溢れているのでしょう。←原作読んでいないのでわからない。
ということは、今後さらに物語は続く要素があるし、忠臣蔵のように外伝、スピンオフ、いくらでもできる可能性があります。
そして、古典へとなっていく『マハーバーラタ戦記』、とても楽しみですね。
そんな『マハーバーラタ戦記』を歌舞伎にしたいと思い、実現した菊之助、やっぱりあっぱれだなあと思います。