「初めての歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog

すばらしき日本の芸能、歌舞伎。初心者にわかりやすく説明します♪

吉例寿曽我~ダイナミック&美しい一幕

曽我ものといえば、よく出るのが寿曽我対面。
五郎と十郎が出てきて、親の仇とであい、やあやあとなります。
勇ましい五郎と、それを諫める十郎とゆったりと受け止める工藤。そして周りを固める様々なキャラクターがも~素敵!という感じです。

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曽我もののバージョンは色々ありますが、今回のものは20分程度で短いけれど、ダイナミックでした。

それは、「鶴ケ岡石段の場」があったから。幕開け、花道から飛び出してきて走ってきた奴ふたり。どうやら巻物を取り合っている様子。近江小藤太成家の奴早平、八幡三郎行氏の奴色内です。ふたりは争いながら、上手へ引っ込んでいきます。

幕が開くと、鶴ケ岡八幡宮の石段がドーンと真ん前に。そしてそこにやってきたのは、それぞれ先ほどの奴たちが仕える近江小藤太成家と八幡三郎行氏。

奴色内は八幡三郎に一巻を渡せたよう。今度は八幡三郎と近江小藤太成家が一巻をめぐって立ち回り。
そして、がんどう返し。

がんどう返し

がんどう返しというのは、大変大がかりな大道具です。石段がが~っと90度後ろに回転して下から別の景色が見えてくるのです。石段では八幡三郎と近江小藤太成家が戦っていましたが、上がり始めると静止してポーズ。足元がずっとあがっていきますから足を踏ん張っていなくてはいけません。これはなかなか難儀だと思いますが、そこは見せ所。足の親指でしっかりと階段にひっかけて、姿が見えなくなるまで踏ん張る虎之介と隼人でした。やんややんや。

なぜがんどうというか。
がんどうは、こちらです。
ja.wikipedia.org

ちょうちんの中のろうそくは内側の鉄輪に固定されているので、提灯そのものを上にあげたり下に下げたり振り回しても、常に動かないという仕掛けです。がんどう返しの語源は、ここからきているんですね。

石段がが~っとあがると、下からは富士山がサッと見えて、富士の裾野の景色へ早替わりです!


2場「大磯曲輪外の場」は、曽我対面らしく五郎、十郎、朝比奈、大磯の虎、茶道珍斎がでてきます。若干人数は少なめで化粧坂の少将は出てこなかったのですが、紅一点の大磯の虎の美しさがひときわ際立ちました。米吉クンですよ、本当に最近お綺麗になられて…。今回は茶道珍斎が吉之丞さんで楽しかった。コロコロと転がされてかわいらしかったです。


工藤が一巻を改めようとしているところにくるのが、待ってましたの五郎十郎!「曽我」ですからね、この二人を忘れてはいけません!
今回は、なよやかな十郎が千之助、荒々しい五郎が染五郎で、細っこくて大丈夫かなと思ったのですが、なかなかなかなかよかったです!特に期待を大きく上回ったのが染五郎

細いながらも美しい顔立ちに隈取がよく似合い、足の親指をピッと立ててそれはもうかっこいいこと。

染五郎クンは本当に芝居が好きなんだろうなあと思います。ドンドン精進してほしいと思います。

一巻が次から次へと人々の手に渡り、絵面が決まって幕。

ダイナミックな1場。美しい2場で、大阪松竹座7月大歌舞伎の幕開けにふさわしい一幕でした!