「初めての歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog

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桜姫東文章(6)権助はなぜ死ななければならなかったのか

まだまだ桜姫東文章で続きます。

 

権助はなぜ死ななければならなかったのか。

 

人を人とも思わず、入った家にいたおなごを犯し、なんとも思わぬクズ野郎。桜姫東文章上の巻では、そのクズっぷりが鮮明である権助だ。そのレイプシーンを思い出して語るのがこちら。

 

問答無用に引き寄せて見れば、バージンだったぜ。初物を食えば75日生き延びるというからこりゃ縁起がいいわいと、手間をとってしまったがちょうだいしたよ。朝になったのでそのまま出て行ったけどよ。

 

そんなこと、言っているんですよ権助。とんでもねーわ。

詳しくはこちら。

munakatayoko.hatenablog.com

 

 

飛んだワルだぜ、権助は。

それが下の巻では、そのワルっぷりがすこーし、下火になったような気がする。

 

もちろん長屋の連中や残月や長浦に対しては、相変わらず容赦ない。びた一文負けず、ケツの穴の毛までむしり取ろうという気だ(はっ!お下品な言葉、ご容赦)

 

桜姫に対してだって、女郎屋に売り飛ばすんだから、容赦ないという意見もあろうけれど、すこーし風向きは変わっている。ほかの人間に対する態度とは違う。

 

権助は死んだ。その理由は二つだ。

 

 その1 権助は、桜姫のことを気に入り始めた。

 

すこーしずつ、お姫さんのことが気に入っているのだ。

自分に惚れているというのもまんざらでもない。しかもお姫さんなんて、自分に縁がなかった人種に惚れられるのは初めてだ。器量だって悪くない。どこかとぼけていて今まで知っている女とは違う。肝のすわったところがあるのも面白い。行燈の火の灯し方など、当たり前のことを知らないのも新鮮だ。

 

雷を怖がるのもかわゆらしい。よーしよーしと撫でてやろう。

 

もちろん女郎屋で稼ぐくらいは、やってもらうつもりだ。それでも、気に入ってきているのだ。

 

その2 桜姫に対する劣等感

 

「愛する」なんて言葉は似合わないが、桜姫のことをなんとなく気に入り始めている権助だ。なぜ、「愛する」が似合わないかと言えば、「愛する」なんて概念は、権助は知らないからだ。だから、「なんとなく気に入る」「なんとなく気になる」が適当だと思う。

 

そんな権助だが、桜姫との間には大きな隔たりを感じないわけにはいかない。それは桜姫がお姫様だということだ。野卑な自分は、そこに劣等感を感じないではいられない。歪んだ愛情として、わざと強く出たりすることもあるかもしれない。

桜姫はお姫様で、自分と釣り合う身分ではない。それでも釣り合うためには、自分が武士として出世する必要がある。もともと信夫の惣太という武士だったのが落ちぶれているのが今の権助だ。出世するためには、あの、あれが役に立つだろう。

あの、あれというのは吉田家の重宝「都鳥」だ。あれを使って大名になってやらあ。そうすれば、お姫さんともつり合いが取れて、ナイスカップルとくらあ。

 

そう思ってしまったのだな。で、調子に乗って、ペラペラとしゃべってしまった。

 

ケチな男だ。狭量で、おつむが軽くてどうしようもない。

そこへもってきて、桜姫をちょっと気にいってしまったことと、劣等感がもとで、権助は死ななければならなくなったのだ。もっと冷血で、桜姫のことをなんとも思わなければ、死ななくてすんだのにね、そう思うと、ちょっぴり愛しいよ。権助

 

次は、桜姫について書きたいけれど、もう眠いので寝ます。

 

桜姫東文章(1)楽しみな理由3つ
https://munakatayoko.hatenablog.com/entry/2021/04/03/214637

桜姫東文章(2)上の巻 くわしいあらすじ
https://munakatayoko.hatenablog.com/entry/2021/04/04/170154

桜姫東文章(3)上の巻 セリフにみる権助のワルっぷり
https://munakatayoko.hatenablog.com/entry/2021/04/11/172653

桜姫東文章(4)下の巻 くわしいあらすじ
https://munakatayoko.hatenablog.com/entry/2021/05/14/234406

桜姫東文章(5)千穐楽に観る
https://munakatayoko.hatenablog.com/entry/2021/06/29/201426