「初めての歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog

すばらしき日本の芸能、歌舞伎。初心者にわかりやすく説明します♪

桜姫東文章(5) 千穐楽に観る

昨日歌舞伎座6月千穐楽を無事に迎えることができた。おめでとうございます。

 

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千穐楽を祝うかのように、青空が広がった。

 

私はありがたいことに、2部を観ることができた。

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 そのあとしらたまやに行って、楽しいひと時をすごした。

 

この一連の流れが、どれほど貴重で、ありがたく、幸運で、幸せなことか。

チケット取れば万々歳のときとちがう。

千穐楽を迎えられるのか。

迎えられてもお目当ての役者はちゃんと出ているのか。

緊急事態宣言なんちゃらで、しらたまやは営業をしているのか。

 

などなど、ハードルがいろいろと。コロナになってからは、すべて滞りなく体験できることがとてつもなく幸運だということがよくわかる。ありがたいことだ。

 

私はおかげさまで、桜姫下の巻は3回観ることができたのだけれど、千穐楽のにざたまは、さっそうとしてより強く、雄々しく、気高く、美しく、圧倒的だった。

 

屏風の中からひょろり~んと出たやせ衰えた清玄。桜姫の香りの残る小袖をつかんでめそめそと未練たらしい清玄。

残月夫婦に毒を飲まされて、倒れる清玄。

 

さほど時間をおかずにさっそうと現れ、墓穴を掘る権助。最初は浅く、次第に穴を深く。円を描くように、回りながら、時には底をならしつつ、ガっと鍬をおろすときは右足を出し、鍬をひくときはスッと右足を左足にそろえ、美しい足を惜しげもなくさらし、ていねいな仕事ぶり。

 

そこへ登場するのが桜姫。

頭巾をかぶり、笠をかぶり、勘六に連れて来られた桜姫は、清玄と同じように高い身分から追われて最下層の身分になったのに、清玄とは違って、自分を見失ってはいないのだ。

 

「わが身は自らを、いずれに連れていくのじゃ」なんて、気高いというより状況がわかっていないというべきか。

 

残月に襲われそうになった桜姫を救うのは権助だ。

残月と長浦を追い出す権助

桜姫を置いて出かける権助

「どりゃ、降らねえうちに、行ってこようか」のときの、しゅっと裾をはしょって立った姿の美しさよ。決まった~!

 

留守の間に、清玄が復活。桜姫に未練たらたら。いやがる桜姫は経本を投げつけ、それがひらひらと美しい弧を描いて極まるさま。

 

絵になっているところを書きぬこうと思ったが、キリがねえや。

 

布団に寝転んで、仲良く語る桜姫と権助

 

恋しい男が、憎い仇と知る心の動きが鮮明な桜姫。

そして、仇を討つ桜姫。そのきりりとした顔!

討たれるときに桜姫に、長い足をかけてポーズの権助

 

なんと美しいこと。どれも緻密で丁寧で、1シーン1シーンあまりにも完璧なので、しっかりと心のシャッターに焼き付けられた。

 

ラストもいい。桜姫が仇を討ち、場面はパッと明るく浅草雷門の前だ。仁左衛門は大友常陸之助頼国として、またまたキリリッとしたお姿での登場だ。ありがたや。

 

めでたいのう。

かたじけなや。

のあとは、全員くるりと後ろを向いてはきものを脱ぎ、こちらに向き直り、座り直し。

まず、今日は

これぎり

 

でチョン。

 

最後は、鳴りやまない拍手の中、再び幕があくと、そこには皆がそのままの姿で座しており、再び上手、下手、正面に丁寧にあいさつ、そして幕。

もう一度われんばかりの拍手とスタンディングオベーションの中、幕はあき、役者たちが再び姿を現してくれた。

 

仁左衛門は感無量、玉三郎は大満足という風に見えたが、それはこちらの勝手な解釈かもしれない。

 

ともかく、これぎりで幕はしまった。これで伝説の桜姫東文章の2か月にわたる芝居はおわった。にざたまの高齢化やコロナの時短の影響で、2部に分けての興行となったが、終わってみれば、却ってそれもよかったように思う。お楽しみが増え、長すぎないので、入魂して(笑)見られたように思う。

 

今は、心からかかわってくださった方々に感謝の気持ちしかない。

役者はもちろん、スタッフ、会社、すべての人々に感謝しかない。

 

また、みたい…。

 

さて、ぼーっとしたまま電車に乗るのははなはだ危険である。こういうときはしらたまやに行くに限る。

 

緊急事態宣言が明けて、ようやく開店となって1週間。ありがたいことに、行くことができた。

店内にいるのは1時間半とか、いろいろお上の制約がある中ではあったが、それでも行けてよかった。

目の前に1時間用のどでかい砂時計が置いてあり笑、本当に1時間半で退出しなければいけないので、語りつくせぬことは多かったけれども、それはまた収束したときのお楽しみにとっておこう。

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しゃべるときはマスクをして。食べるときはマスクを外してという面倒にも慣れてきて、昨日は女将に注意されなかった(笑)。

 

うれしく、楽しく、温かな気持ちの日となった。

 

桜姫東文章(1)楽しみな理由3つ
https://munakatayoko.hatenablog.com/entry/2021/04/03/214637

桜姫東文章(2)上の巻 くわしいあらすじ
https://munakatayoko.hatenablog.com/entry/2021/04/04/170154

桜姫東文章(3)上の巻 セリフにみる権助のワルっぷり
https://munakatayoko.hatenablog.com/entry/2021/04/11/172653

桜姫東文章(4)下の巻 くわしいあらすじ
https://munakatayoko.hatenablog.com/entry/2021/05/14/234406

 

桜姫東文章(6)権助はなぜ死ななければならなかったのか
https://munakatayoko.hatenablog.com/entry/2021/06/30/001721