さて、4月歌舞伎座で一番の注目は「桜姫東文章」です。私も楽しみで仕方がありません。残念ながら今までに見たことがないのですが、なぜこれほど楽しみなのか。理由は3つあります。
一つは玉三郎だからです。もう一つは、仁左衛門と玉三郎だからです。なんのこっちゃと思われるかもしれませんが。
もうひとつは南北のどろどろストーリーだからです。これをにざたまがやってくれるところに意義があります。
三島由紀夫も絶賛した、花道を駆けてくる白菊丸が見たい
玉三郎が初めて桜姫東文章に出たのは、1967年のこと。冒頭の江ノ島稚児ヶ淵の場面でのみでわずか数分だったのに、その印象を強烈に観客に残したようです。中川祐介氏の「坂東玉三郎」によれば、それを見た三島由紀夫や堂本正樹に勧められて澁澤龍彦は国立劇場でそれを見た。そのときの描写がこちらです。
“この時は清玄が勘彌、桜姫が雀右衛門で、玉三郎は発端の稚児ヶ淵の場で、清玄と心中する白菊丸として登場しただけであった。それでも花道を小走りに出てきた少年玉三郎の、なよやかで、しゃっきりとして、気品のある美しさに息をのんだのを私はありありとおぼえている。 「玉三郎讃」『魔法のランプ』収録 中川祐一「坂東玉三郎」”
これですよ。これが54年前のお話。先代の玉三郎とかではないんです。今も舞台に立ち続ける玉三郎の54年前の姿です。そしてなお変わらずその美貌は輝いているのです。テクニックは当然磨き上げられているでしょう。
これを観たい。小走りにかけてくる少年白菊丸を観たいと私は思います。
時空を超える美しいにざたまが見たい
もうひとつは、仁左衛門玉三郎とのこと。仁左衛門と玉三郎のコンビで桜姫が上演されるのは、これも久しぶりのことで1975年以来36年ぶりだとか。この時、仁左衛門(当時孝夫)が釣鐘権助、12代目市川團十郎(当時海老蔵)が清玄、玉三郎が桜姫だったそうです。
36年ぶり?54年に比べれば大したことがないと感じてしまうほど、もう時空がどうなっているのやらわかりませんが、にざたまコンビのすばらしさは、神田祭とかお染久松とかをみればわかるように、なんら老いを感じさせないのです。
神田祭もたった20分で観客を鳶と芸者の粋な世界に引きずり込んだ。美しさはもうたとえようもなかった。軽々とひょうひょうと立ち回りをし、色っぽくつかず離れず。
その二人が、がっつりと通しで(ただし、今回は上の巻のみ)36年ぶりにやるのです。これ、私は観たいです。何が何でも。
今でもその当時の写真はいくつか見ることができますが、その通り、もしくはもっと美しく、けなげに、怪しく、グロテスクに、ずるがしこく、二人は舞台で演じてくれることでしょう。
お祭りどころか、桜姫は公家のお姫様から遊女まで演じますし、仁左衛門は、桜姫を犯す釣鐘権助、清玄と二役。どれだけすごい世界が目の前に繰り広げられるか。楽しみです。
エログロナンセンス?でもきらびやかで美しい南北の世界が見たい
そしてストーリー。これまた、ドロドロです!楽しみです。BL、心中、輪廻転生、子殺し、復讐、お家騒動も絡んで、すごいわあ。
仁左衛門がインタビューで応えていたらしいのですが、通しで桜姫をやるのは、もう無理だと思っていたが、上の巻、下の巻に分ければできるかもしれないと思ったことと、お客様が楽しみにしているという理由でやることにしたといったとか。
本当か?それほどリクエストの力はすごいのか。焦らずあきらめず、リクエストするって大事なのだなあと深く感じ入った次第です。リクエストをし続けてくださった方々、ありがとうございます。
というわけで、あらすじまでいくことなく、これぎり。後日また書きます。てか、今月はこればかりでいくかも(;^_^A
あらすじ書きました、こちら!
もう初日。どうだっただろうか。ドキドキします…
こちらは、セリフに見る権助のワルっぷりです。
桜姫東文章(2) 上の巻 くわしいあらすじ - 「初めての歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog