「初めての歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog

すばらしき日本の芸能、歌舞伎。初心者にわかりやすく説明します♪

吉右衛門倒れるの報に接した日のこと

昨日、「【速報】 歌舞伎俳優中村吉右衛門さん倒れる、搬送時心肺停止の状態」という衝撃的なニュースを初めてみたのは、千穐楽の2部を観るために東銀座の歌舞伎座へ向かう地下鉄の中だった。

速報・心肺停止という強烈なワードに思わず「えっ」と声が出る。それからは、もう自分でも驚くほどショックで、他のニュースをあさったり、ツイッターを探したりでほとんど何をしていたか覚えていないほど。涙が出てきて、悲しくて仕方がない。しかし、その後、東銀座につく頃までには、倒れたのが昨日(3月28日)であること。今現在入院・療養中であり心肺停止ではないことがわかり、少し落ち着いた。

 

千穐楽の前の日にホテルでお食事をしていて倒れたというから、出演後倒れこむほどお疲れというわけでもなかったようだ。国立劇場が前日は千穐楽だったから、菊之助一家と合流して食事をしたのだろうか。それならば丑之助クンともご一緒だったのだろうか。もしそうなら楽しい楽しい夕餉であったはず。ご家族のみであったなら「いよいよ明日で千穐楽だね」と落ち着いた夕餉であったのか。

 

正月の歌舞伎座から少しお元気なく、休演することもあり、心配されていた。しかし今月は千穐楽に向け次第に調子がもどってきたようで、ここ2,3日のツイッターでの観劇した方の情報によれば、力強さがみられ、まずまずお元気そうで、ネットを見てほっと胸をなでおろしていたファンも多かったはずだ。私が3部を見たのは12日で、それでもお元気に見えたから、それからずっと回復したのであればまず心配のない立派な五右衛門であったことは推察できる。

なのに…。

 

半べそ状態で、こんなことで2部をちゃんと見られるだろうかなどと思いつつ東銀座着。少し時間が早かったので、木挽町広場で今月の写真を購入。仁左衛門玉三郎菊五郎、そして吉右衛門多めと、予算オーバーも致し方なし。

 

いざ歌舞伎座に向かわんとエスカレーターをのぼりきると、なんとなくいつもと雰囲気が違う。多くの報道陣がマイクとカメラをもって、コメントを取れそうな人を探して待ち構えていたのだった。

 

それもお仕事なので、仕方がないのだろうが、なんとはなく嫌な気持ちがして避けて通る。

逃げるように歌舞伎座に飛び込んだ。それから千穐楽の幟だけ写真をとっておこうと思い、再度出場して、写真を撮り、また入場したので、手指消毒を2回する羽目になった。

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こんな気持ちで、と思ったものの、仁左衛門の「熊谷陣屋」と菊五郎の「直侍」は、どちらも素晴らしくて、吉右衛門のことをその場では忘れることができた。お二人の演技のすばらしさは、実力とか千穐楽というだけではなく、吉右衛門さんへの気持ちもこめられていたのだろう。

ツイッターでも2部のことなどをつぶやいていたら、以下のようなリプライがあった。

 

 

 私ごときよりも、仁左衛門菊五郎など役者たちのお気持ちいかばかりか。魂の芸で祈りを捧げているのだと感じる。

この日の隈取については、私もすごく濃いと感じた。

 

幕間時間にスマホを取り出して「悪いニュースがありませんように。安心できるよいニュースがありますように。」と祈りつつ、必死に検索するも、新たなニュースはないよう。少なくとも朝のニュースより悪いことにはなっていないのだなと思った。

 

2部が終わったら、しらたまやに行く予定をしていた。「ああ、こんなときにしらたまやに行くことにしておいて本当によかった」と思った。

しらたまやは、歌舞伎の好きな人が集まる小料理屋で、コロナ禍で、しばらく時短やら休業やら、客席制限やらで以前のようなにぎわっていることはなかなかなかったが、この日はカウンターでは足りず、テーブル席にもお客様。

 

もちろん厳重な感染対策はしているので、お隣同士も天井からぶら下がっているビニール越しマスク越しの会話になる。食べているとき以外は必ずマスクをする厳重なる掟。そうはいっても飲食店ではなあなあになってしまいがちだが、しらたまやの女将は怖い(笑)ので、マスクをしないでしゃべるとすぐに注意をされるのである。私たちお客は、注意されると「はいはい」と皆言うことをよく聞く、よい子たちの集団である。

 

ここでも吉右衛門の話題になったが、皆、最悪のことを考えたくないのか心配しつつも「大丈夫。『療養中』だから」とか割と楽観的に話していたように思う。

 

私は吉右衛門の写真を買いすぎたせいで財布が非常にお寒い状態となり、会計は無事かどうか大変微妙な状態となってしまった。いつものハンドバッグにはこういう時のために封筒で千円札が3枚ほど入っているのだが、こういう時に限って違うバッグで来てしまった。キャッシュカードもない。ペイペイもやっていない。「足りないかもしれない!」というと「ツケでいいですよ。宗像さんならまた来てくれるでしょ」と女将が言ってくれ、うれしい。が情けない(笑)。

 

数人のお客で、吉右衛門の話が出たり、それぞれの推しの話、いつ歌舞伎沼にどんぶらこしたのか、それぞれの後援会の情報を「ふむふむ」と真剣に聞いたり、おいしい料理に舌鼓をうったり、作り方を聞いたり。楽しい時間が過ぎた。みなさん、お目々がキラキラである。

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また最後のデザートを撮るのを忘れる。マグロの煮付けがべらぼうに美味かった。豆好きなわたしとしては、最初の鞍掛豆もイケる味!

 

2部終わってから行ったので、5時過ぎから7時半ごろまでいて家に帰った。

 

昨日は家人もおらず、ひとりだったのだが、家で一人でいると急に寂しくなってきた。またスマホを検索するも、吉右衛門の続報は全然ないのだ。

 

なぜ続報がないのだろう。みんなといて楽しいときには「続報がないから大丈夫!」と笑えたのに、一人になると「続報がないのは、あまりよくない状態が続いているのではないか」と思ってしまう。

 

不安な状態が続いている。

 

どうかご無事で。

 

【追記3月30日】少し詳しく続報が出ました。ICU治療中とのこと。引き続きご無事をお祈りいたします。

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