「初めての歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog

すばらしき日本の芸能、歌舞伎。初心者にわかりやすく説明します♪

桜姫東文章(2) 上の巻 くわしいあらすじ

この稿では、上の巻のストーリーを紹介します。

 

桜姫東文章が楽しみな理由を3つこちらに書きました。

こちらもぜひ読んでくださいね。

munakatayoko.hatenablog.com

 

桜姫東文章自体は、それほどむずかしくありませんから、必ず予習が必要というわけでもない。ですので、細かいストーリーを長々ネタバレするのはどうかなとも思ったのですが、にざたまの美しさに呆然として、何がなんだかわからなかったという方も、もしかしたらいるかもしれないし、一応何が起こるのかわかっておくと、もっと深く楽しめるかなと思い、自分の予習もあり、書きました。

呆然と観終わってしまった方が、もう一度復習として読まれてもよいかと思います。

 

ともかく歌舞伎が初めての方にどんどん見ていただいて、どぼどぼ沼に堕ちていただきたいと思っています。

 

1993年の国立劇場で上演された台本を入手したので、それをみながらあらすじを追っていきます。今回違う演出の部分もあるかもしれませんが、あしからず。

 

 

 

登場人物 ()内は、2021年歌舞伎座で演じる役者

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寺の人々

白菊丸 (玉三郎)相承院の美しい稚児で長谷寺の僧清玄と恋仲になり、身投げする。

清玄 (仁左衛門)死にきれず生き残り、高僧となるが、輪廻転生をした白菊丸=桜姫に出会い、身をもち崩していく。

 

残月(歌六) 清玄の弟子。長浦と結託、清玄を追い出し、後釜に座ろうと狙っている。ただし、残月は長浦に惚れてはいない。

 

吉田家の人々

桜姫(玉三郎) 白菊丸の転生。吉田家の息女。生まれつき左手が開かない。父と弟の梅若を殺され、お家の重宝も奪われた。前の年には釣鐘権助に強姦されて子どもをなしたのだが、その権助に恋心を抱く。残念ながら、清玄に気持ちはない。

 

松若(千之助)   桜姫の弟。桜姫とともに、お家の重宝都鳥を探している。

粟津七郎(錦之助)  松若丸家臣。よい家来。

お十    七郎妻。軍助の妹。

軍助   松若丸家来。よい家来。

松井源吾(松之助) 松若丸家臣。 ワルい家来。入間悪五郎と通じている。

 長浦 桜姫付きの局。残月と結託。

 

入間悪五郎一派

入間悪五郎(雁治郎) 桜姫の元許嫁。いったん許嫁になったが、桜姫が不具と知り婚約を解消した。掌が開いたと聞いて、よりを戻そうとする。実は吉田家乗っ取りをたくらむ。

 

釣鐘権助仁左衛門) 入間悪五郎の指示により、桜姫の父と弟を殺し、お家の重宝を盗んだ張本人。ついでに桜姫を犯したワルい人。

あらすじ

発端 江の島稚児ヶ淵の場 冬・夜中過ぎ

 長谷寺の清玄は、美少年の稚児白菊丸と恋に落ちて、江ノ島で心中を図るが清玄のみ生き残ってしまいます。

 

(この場面ですよ。54年前玉三郎を初めてみた三島由紀夫が絶賛したというのは。この場面しか玉三郎は出演しなかったのにもかかわらず)

 

序幕第一場 新清水の場 春・昼日中

 17年後、清玄は生きながらえ、高僧となっています。ある時、没落した吉田家の息女桜姫に出会います。桜姫は、父と弟を殺され、お家の重宝もなくしてしまい、出家を願っていました。

 

あまりに美しい姫の様子に、出家を思いとどまるよう周囲は勧めますが、姫の決意は固いのです。

 

ただ、桜姫には気になることがありました。それは、生まれつき左の手が開かずグーのままであったことです。それを「開かぬ不具は前の世の、報いか、因果か、それゆえに」許嫁も去ってしまったりしていたので、せめて仏にお仕えすれば罪も消えるかと訴える桜姫。そこで清玄が念仏を唱えてやると、あら不思議。掌が開いて、中から香箱のふたが現れます。裏には「清玄」の文字が入っているではありませんか。

 

ややや!と清玄はそれを見て驚愕します。なんと、香箱は17年前に白菊丸と取り交わしたもの。蓋には「清玄」と書き白菊丸が、箱には「白菊」と書き清玄が、お互いに永遠の愛を誓って持っていたもの。白菊丸はその蓋を左手に握り、浪間に消えていったのです。

 

ああ。なんということでしょう。この桜姫こそ、白菊丸の生まれ変わり。輪廻転生して今清玄の目の前に立っているのです。心の動揺を隠しつつ、清玄はそこを去ります。

 

人々が去ると、そこへやってきたのは残月(清玄の弟子)と長浦(桜姫付きの局)。この二人、デキております。(今初めて会ったわけではないようです。その辺の事情についてはわかりません)

会いたかったわ~。

おう。清玄にドジを踏ませて追い出せたら、お前を妻にしてやろう。

おお、うれし。

なんて会話をしています。でも残月は、長浦のこと利用しようとしか考えていません。

 

そこへ来たのは入間悪五郎。この人は、当初桜姫と許嫁であったのですが、桜姫が手が不自由だと聞いて、婚約を解消したのです。それが、手が直ったと聞いてあらためて縁談を取り結んでほしいとまあ、ずうずうしいことを言って来たのです。

 

長浦に体よく断られ、何とかラブレターを渡したいと思うところにやってきたのが、釣鐘権助権助が「あっしが渡しましょう」と引き受けます。入間悪五郎と通じていて、お家の重宝も権助が盗んだことがこの場面でわかります。それを知った端女お咲を、なんのためらいもなく絞め殺すところで、権助というやつ、相当ワルだな…と感じさせます。

 

二人が去った後で出てくるのは軍助と松若。桜姫の弟松若は、お家の重宝を失った責任を感じて死んでお詫びをしようとしますが、軍助に止められます。ともかく今は逃げて重宝を探し続けるよう諭し、松若は逃げていきます。

序幕第二場 桜谷草庵の場 春・午後より夕方へ

 桜姫は、出家するつもりで「早く剃髪を」と局たちを急がせているところに来たのが、権助

悪五郎からの手紙を渡そうとしますが、今から仏の道へ入ろうとしているのにラブレターとは「目に触るるさえ忌まわしい。ちゃっと外面へ捨ててたも」とつれなくします。

 

しかし権助は、お局たちにも幽霊噺などをしながら、ずいずいと興味を自分に惹きつけていきます。この辺さすがワル色男ですな。役者に寄せた話などをして、ほっと笑わせてくれます。

調子にのった権助が、腕まくり上げてしゃべっているのを見て、桜姫が驚きます。その腕には見覚えのある入れ墨がありました。桜姫は、局たちを下がらせて、権助と二人きりになります。

 

1年前の寒い夜にいきなり暴漢に襲われた桜姫。その賊の腕に彫られていたのが釣鐘の彫り物でした。恐ろしい思いをした桜姫でしたが、身ばかりではなく、心もその時の男に奪われてしまったのです。

 

(南北さん。これちょっとどうなの。そんなレイプ犯を好きになっちゃうなんてありえないでしょ。と思うものの、もし、それがとても素敵に思える人であったなら?いやいやありえないですよ。でもでももし想像をはるかにはるかに超える夢のような。そう夢物語。ありえない話。それを納得させちゃうには、よほどのイイ男じゃなくっちゃねえ。キムタクとか松潤とか仁左衛門とか?(笑)そんな感じなんでしょうねえ。いやちょっとまて。顔を暗くて見ていないんですよね。桜姫、ほんとになんて子なの)

 

そして、わずかにその男の個人を特定する証拠である彫り物と同じものを自分の腕にも彫っていたのでした。

 

愛しい人に会えて、うれしい桜姫。さっきまで出家をするつもりだったことはもう露ほどもなく忘れ果て、「そなたの女房に…」と権助にしなだれかかるのでした!

 

すだれがするすると降りてむにゃむにゃ。

 

悪五郎、七郎、源吾と現れ、わらわらとしているときに聞こえてきたのは艶っぽい桜姫の

「必ず二世も夫婦ぞえ」という声。。

 

御簾の中を開ければ、あっと驚くしどけない姿の桜姫。相手はとみると、権助はさっさと逃げており、替わりにもっていた香箱のため清玄が疑われてしまいます。

 

(ここ、権助から清玄への早替わりですよ。裏方さん大変だ!)

 

清玄は、これも人のためと罪をかぶる覚悟をするのです。(人のためといっても、桜姫が好きだからですが)

残月は、しめしめとばかりに清玄なきあとの跡目を願いでますが、残念!残月も長浦との密通がばれて、追放されてしまうのでした。

 

桜姫は、無実の罪をかぶってくれた清玄に感謝をしますが、それは愛ではありません。清玄は、桜姫と共に生きることを誓って迫りますが、桜姫にその気はなく、ギョギョっとされるところで、幕。

 

目まぐるしい第2場ですが、復習。

桜姫は権助に惚れ、清玄は桜姫に惚れ、権助は出世のみ考えている。

 桜姫、想い人権助と出会えるもののまた離れる。

桜姫と清玄は追放され、残月と長浦も追放される。

松若は、姿を隠し、お家復興の機会を狙う。

 

と、ここまでのご理解よろしいでしょうか。

 

二幕目 三囲いの場 晩春・夜

 百姓の十作とお早は、桜姫の子どもを預かっていたのですが「桜姫も乞食になったんじゃ、お給料ももらえないわね。それなら赤ん坊を返しましょう」と相談しているところから始まります。

とはいえ、桜姫がどこに行ったかもわからないので、まあ、縁もあるので清玄さんに預けようということになるのです。

 

(ここでは悪五郎が出てきて人質として赤ん坊をさらっていくといったもう少し複雑な演出の場合もあります←2021年版は、こっちでした)

 ふたりが去ると、浅葱幕がさっと落ちる。ここから、桜姫と清玄の「すれちがい」劇。

 

赤ちゃんを抱いた清玄と、桜姫は近くにいて、さまよいながら会えずにすれ違っていくのです。

 

二人は、お互いを探し求めあっているようですが、清玄は桜姫を求め、桜姫が求めているのは赤子(切ない!)。割台詞といって、交互に違うセリフを言いながら、最後に同じセリフを言いますが、微妙に二人の心がすれ違っているところが切ないです。

 

桜姫 逢いたい

清玄 見たい

桜姫 仏神様

清玄 姫に

桜姫 わが子に

清玄 どうぞ逢わせて

二人 くださりませ!

 

二人は本舞台で近づき、顔を近づける瞬間に、春雨がさっと降ってきて焚火が消えて、相手の顔に気づかないというような演出です。

 

ちょっ南北さん!!あなた、残酷です!!(ほめてます~)

 

さて上の巻は以上です。続きがチョー気になる終わり方ですね。

 

 下の巻は、6月上演が決まりました。下の巻は、いよいよというかますますというか面白くなっていきますよ。

乞うご期待!ネットの盛り上がりからすると、チケット争奪戦もすごそうな予感(;^_^A

 

下の巻については、こちら!

munakatayoko.hatenablog.com

 

こちらは上の巻のセリフに見る権助のワルっぷりです

munakatayoko.hatenablog.com

 

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