「初めての歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog

すばらしき日本の芸能、歌舞伎。初心者にわかりやすく説明します♪

【会期21日まで】「河竹黙阿弥ー江戸から東京へ」 行って来た!

2023年の10月より、早稲田大学の演劇博物館ではじまっていた『河竹黙阿弥ー江戸から東京へ』

会期がそろそろ終わりそうなので行ってきました(21日まで)。


行きは、高田馬場駅から歩いてトコトコ。早稲田大学に近づくにつれ、古本屋が多くなるので思わず立ち寄って時間がかかります。
掘り出し物も見つかりました!

今日の目的は、早稲田演劇博物館。
黙阿弥の展示ですが、国立劇場からの提供が多くて大変充実していました。(国立劇場の蔵書、どうなるんでしょうねえ嘆息)
もちろん、演劇博物館は河竹黙阿弥の養子の河竹繁俊氏が長く館長をしていたこともあり、黙阿弥との関わりも深いのです。

黙阿弥の人生をおおまかに、狂言作者以前、立作者昇進まで、安政の震災と市村座時代、明治維新と黙阿弥の時代、晩年と没後の河竹家に分け、それぞれ膨大な資料とともに黙阿弥の人生を浮かび上がらせていました。


貴重なものとしては『一谷嫩軍記』をはじめとした多くの自筆台本。一番古いものが『一谷嫩軍記』で、天保12(1842)年です。
天保14(1843)年には河竹新七の名前で立役者となります。
大きな転機となったのは、嘉永7(1854)年に『都鳥廓白浪』で四代目市川小団次と組んだことで、このとき脚本に気に入らなかった小団次に対して、黙阿弥(このときは新七)が3度も書き直して、その誠意と真面目なことが小団次に認められたそう。その後、技術は高いが小柄な小団次に合う作品を次々と作り、評価されていきます。残念ながら慶応元(1866)年小団次は急逝しますが、作品を作り続けます。

明治維新後は、いきなり政府も方針変換。荒唐無稽な話はダメで演劇改良運動になりますが、そこでもザンギリものや活歴物を積極的に作る黙阿弥なのです。

黙阿弥の死後、関東大震災で自宅が被災し、かなりの原稿を焼失してしまったのですが、なんとかいくつか残っていて今、私たちが黙阿弥の作品を楽しめることができています。
それは、震災のときに家族が、葛籠に入った大切な原稿を入れて逃げてくれたから。その黙阿弥家の葛籠が現在残っており、これも展示されていました。

『作者の家』にも出てくるエピソードで新派の『糸桜』でもその場面が出てきました。図録にも写真が載っていたので、実物を見ることが楽しみでしたが、さすがになんというか実物には胸が打たれました。


やはり写真だけではうかがい知れない迫力。黒々としていてあちこち剥げており、それは経年劣化ということもありましょうが、実際に黙阿弥の意思を継いで、河竹繁俊氏がこの葛籠を担いで猛火の中逃げたのだと思うと、胸アツ。

また、一方で葛籠ってあまり見たことがありませんから、弥陀六が敦盛を中に隠して去っていく鎧櫃もこんな感じかしらなどとじっくり見たり。

天保の改革で急に芝居小屋が弾圧されたり、明治維新で時の政府がガラっと変わるという時代背景に翻弄されたり、天変地異で環境が変わることを余儀なくされたりしながらも、関係者とともにしたたかに生き、書き続けた黙阿弥。たくさんの資料と共に見ることができ、大変よかったです。
したたかで強いなあと思いますが、それは観客の要望がなければなしえないことでもありますから、本当にしたたかで強いのは江戸の庶民なのかもしれませんね。

・図録は11月のイベント時に購入済みでした。

その後、別室では「黙阿弥・人と作品~鼠小僧を中心に」 など何編か短編で見ることができます。
『鼠小僧』は2022年に、菊之助歌舞伎座で上演したのが記憶に新しいですね。

1993年の時の幸三は菊五郎で、そのすばらしく格好のよいこと。今から30年前ですから、菊五郎50代でしょうか。本当にあふれる色気とほとばしる男気に、目が釘付けでした。
子役の三吉は、ぷくぷく太っていて可愛いこと。。と思ったら、松也ではないですか!?
可愛いですねえ!

その他、何篇か短編が上演されています。お見逃しなく。

長い会期で油断していたら、もう10日ほどで終わりなんですよね。まだ観ていない方はぜひ。
まあ、少しマニアックではありますが(小声)。

■会期:~2024年1月21日(日)
■開館時間:10:00-17:00(火・金曜日は19:00まで)
■休館日:17日(水)
※日程は都合により変更する場合がありますので、最新情報は当館ホームページをご確認の上ご来場ください。
■入館無料
■会場:早稲田大学演劇博物館2階 企画展示室
■主催:早稲田大学演劇博物館・演劇映像学連携研究拠点
■共催:独立行政法人日本芸術文化振興会国立劇場


その後、大隈講堂の上のカフェでのランチ。650円の学生価格はうれしいです。



11月16日のイベントの様子はこちら!

munakatayoko.hatenablog.com

こんなのあったので、またゆっくり散歩してみたいです。