「初めての歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog

すばらしき日本の芸能、歌舞伎。初心者にわかりやすく説明します♪

逸青会~今年もあふれ出るアイデアとパワーが楽しかった!

16日に渋谷セルリアンタワーでおこなわれた「逸青会」に行ってきました。

 

15回目となる今回も盛況で、私はチケットを取りそこなって「しまった!」と思っていたところ、東京の最後の公演のあとで追加公演が行われることになり、滑り込みで行くことができました。

昨年同様とても楽しむことができました。

4公演で共通する演目は新作の「ひまわり」のみ。それ以外は、全て演目が違います。

私が観たのはこちら!

 

長唄助六(すけろく)

助六って花道の出てきたところで、いくつかのポーズをつけて、それがとても格好いいですよね。その様式をベースに長唄に乗って美しくポーズを決めていく菊之丞さん。歌舞伎では成田屋が河東節、音羽屋が清元、松島屋、澤瀉屋長唄といったように役者の家によって異なるそうですが、舞踊では長唄か清元。今回は長唄で、菊之丞さんポーズも決まってすっきりとした色男ぶりでした。

狂言 音曲聟(おんぎょくむこ)

狂言では、聟殿が出てくる演目は結構あります。結婚後、聟が舅どのに挨拶にいくというところでいろいろと面白いことが勃発するのです。

『音曲聟』は、舅殿に挨拶にいくのに作法を全く知らない聟殿に、悪友が頓珍漢なマナーを教えてしまいます。習ったとおりにするのですが、3歩歩いて3歩さがったり、話すときは必ず謡のように話すといった妙なマナー。舅殿は困惑したものの、相手に合わせて3歩歩いて3歩下がったり、謡をうたったりして聟殿に合わせるのでした。

思わず笑ってしまう楽しい狂言でしたが、もしかしたらばかばかしいマナーや慣習を皮肉ったものなのかな?などとも思いました。

ひまわり

毎度楽しみなのがこの新作。今回は落語家の古今亭菊之丞さんがゲスト。そして脚本は横内謙介さん。

厭戦」がテーマで、タイトルが「ひまわり」ということは…?

そうです。ウクライナとロシアの戦争を描いているのでした。

テーマはとても深いのに、そこはウイットに富んだ脚本で楽しく。でもぐっさり。

 

兵士の胸元から零れ落ちたひまわりの種から咲いたひまわりが古今亭菊之丞さん。平和な生活を奪われたロシアのおばあさんの怨み。兵士の怨みがひまわりに乗り移り、ひまわりの良心と戦います。さすが噺家だけあって、ばあさん、若い兵士、いたいけなひまわりとの語り分けが古今亭菊之丞さん、うまい!!

そしてこの日、古今亭菊之丞さんは、昼の公演のあと朝日名人会で落語をやってその後16時の会と19時の会とこなしたという。お疲れさまでした!!すばらしかったです。ひまわりちゃん。

 

秀逸だったのが逸平さんの「このあたりに住まうもの」。ひまわりの助けてほしいという声に耳を貸さず、「時間がないから」「用事があるから」「政治的なことにはちょっとあまり…」と避けて通ろうとしたり遠巻きに見ているようなこの男は、私たち観客一人ひとりの心の中を見透かしたような存在。グッと胸をつかまれて問われたような気持ちになります。

 

そして、かわいらしかったのが太陽の尾上菊之丞さん。ひまわりを元気づけようと登場して、太陽を模した金の扇二つをぱあっと開いて出てきた菊之丞さんの晴れやかな笑顔に、会場もぱあっと明るくなりました。

 

最後は、本物のニュースの音声のようなものが入り、本当に今まさに世界のどこかで起こっていることなのだとしんとした気持ちになったあとで暗転していた舞台がパッと明るくなると、なんと三味線、長唄囃子連中、囃子方、そしてダブル菊之丞さん、逸平さん、全員がかわいいひまわりになっていました。

 

京都、東京と3回公演を続ける中でネタバレを避けるために撮影禁止だったそうですが、今回はラストということで撮影もOK。そのかわり「撮るなら(SNSに)載せろ!」と強いお達しがあったので、載せますね(笑)。

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逸青会は、あふれ出るアイデアとパワーとエンタメがはちきれそうな、期待を裏切らない会。また来年を楽しみにしたいと思います。

来年はもっと長い期間でやるとの決意表明もあり、楽しみです。

昨年の「逸青会」レポはこちら

munakatayoko.hatenablog.com