「初めての歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog

すばらしき日本の芸能、歌舞伎。初心者にわかりやすく説明します♪

車引~播磨屋親子で三つ子役。魂のこもった演技で圧巻

今回の車引。あんまり素晴らしくて涙が出るほどでしたし、つぶやくことすらできませんでした。

車引のあらすじみどころはこちら!
munakatayoko.hatenablog.com

梅王丸と桜丸が、歌昇・種之助兄弟。そして梅王丸桜丸より一段格が上の役者がつとめる松王丸は、歌昇・種之助兄弟の父又五郎藤原時平又五郎のお兄さん歌六という、血の濃い配役でした! 
杉王丸が鷹之資。力いっぱいでとても気持ちがよいですね。

松王丸・梅王丸・桜丸を演じた三人が、本当の親兄弟なので、三つ子と言われても違和感がない背格好、雰囲気、オーラでした。

見得がいちいち決まる。歌昇梅王丸の重心がしっかり低く力強く、種之助桜丸が色気もあって柔らかくしなやかでありながらしっかりと芯があり強い。堂々とした又五郎松王丸は、弟二人をねじ伏せる強さがありました。

最初、梅王丸と桜丸が出てきて、同じ衣裳で笠をかぶり顔も見えずに腰を下ろす。裾から出る足は桜丸はぽっちりとかわいく、梅王丸はどっしりと外股。

「是非もなき有様じゃあなあ~」と2人で嘆くところは美しいハーモニー。

「牛に手慣れし牛追い竹、位自慢に食らい太った時平公の尻こぶら、二つ三つ、五六百くらわさにゃ、堪忍なんねえ!」の梅王丸も立派に決まりました~!

角々のきまりが美しくてうっとり。

〽詰め寄り詰め寄る兄弟3人、互いに残す意趣遺恨
と詰め寄るところの3人も、ものすごくいい形でした!

といくらでも書けるのですが、なんというかそれだけでは言い切れないすばらしさがあってそれが何かをうまく言えません。

2021年に亡くなった吉右衛門の芸を継承しなければ!と強く心に思っている方たちなので、その気持ちがひとつひとつの動きを完璧にし、よりよいものとし、こちらの心にもまっすぐに届いたということかもしれません。

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8月28日にアップされていたこちらの記事を読むと、本当の親兄弟で三つ子という役をできる幸せをかみしめつつ、吉右衛門に受けた教えを守っていき、少しでもよりよい芝居を見せたいという気持ちが3人共にあふれています。
又五郎松王丸と歌昇梅王丸は共に吉右衛門から直接習っており、種之助桜丸は今回菊之助から教えを乞うたそう。

歌六の時平も、それまで強そうだった梅王丸があっという間に小さく見える圧巻のラスボス感でした。

ていねいに、力強くしなやかに美しくチームワークよく演じられた『車引』でした。

ガシャリ、ガシャリと金棒を引いて時平が来たことを告げて歩いてくる金棒引きの藤内は、吉二郎。今回名題昇進の披露となりました。誠におめでとうございます。

「ハイホウ、片寄れ~片寄れ~」ガシャリ、ガシャリと上手から出て、花道をゆっくりと揚幕まで朗々とした声を響かせて歩いていきました。吉右衛門さんにも聞こえたかな~。

今回の『車引』は、夜の部の最初にあり、幕間をはさんで次の演目が『連獅子』だったので印象がかき消されてしまうきらいもありましたが、私はその素晴らしさ、美しさを目と心に焼き付けました。