「初めての歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog

すばらしき日本の芸能、歌舞伎。初心者にわかりやすく説明します♪

俳優祭39~夢心地で楽しんだ♪

9月28日に第39回俳優祭に行ってきました。大変楽しゅうございました。まさにそこは夢の国でした。

俳優祭39~サンキュー俳優祭

俳優祭とは、日本俳優協会が主催する俳優が企画運営する文化祭!のようなもの。今回は39回目。そしてコロナ禍もあり、実に7年ぶりの開催なのでした。国立劇場で開催されるのは、2回目ですが、これが初代国立劇場での開催は最後ということになります。初代国立劇場最後ということもあって、「サンキュー俳優祭」が合言葉。ハッシュタグをつけてSNSでも大いに盛り上がっています。

 

私が行ったのは夜の部。4時半開場5時開演で4時10分頃に着いたかと思いますが、すでに国立劇場の周りはただならぬ雰囲気。見たこともないほどたくさんの人とタクシー。劇場の周りに並ぶ行列で、ドキドキします。

行列に並んでいる間に、金券を売りに来てくれたのでまずは金券ゲット。金券売り場が混むと聞いていたので、まず第一関門無事通過。中に入ってプログラムもスムーズに買えました。このあたり、どんどん実行委員が改善してよいイベントにしようとしてくれているのだなと思います。

後から聞いたのですが、好きな役者さんから買うとサインもしてもらえたようです。

座席について下から見上げると、1階から3階までびっしりの観客で、国立でこんな様子は見たことないのでなんというか複雑な思いでした。

菅原伝授手習鑑~加茂堤の場・車引の場 若手奮闘!

まずは、俳優協会財務理事梅玉さんのご挨拶。

理事長の菊五郎さんと、常任理事の白鸚さんが体調悪くてご欠席とのことで心配です。

そのあとは、マジなお芝居。やっぱりこれがなければ!
これから歌舞伎界を担っていく若手が中心となっての勉強の場とのこと。

千之助の八重。千之助は最近見るたびに成長を感じます。今回も声がお父さん似でとてもよいなあと思いました。義太夫しっかり学んでいるのでしょうね。

梅王丸の鷹之資!声の大きさ、張りに、国立劇場がビリビリと震えるよう。型の決まりなどもしっかりと。細身の染五郎も松王丸をしっかり頑張っていました。憧れのお役ですもんね。将来楽しみです。

f:id:munakatayoko:20230929232730j:image

▲まつ虫くん(左)と梅王丸で奮闘した鷹之資くん

 

鷹之資24歳。千之助23歳。染五郎18歳。左近(車引で桜丸)17歳。

いや~。若い芽がどんどん伸びていること、素晴らしいですね。

浅草歌舞伎もこの世代に代替わりしてもよかったのでは…?などと思えるほどたくましい世代です。(てか鷹之資が年上になっていくのか…。)

藤原時平は、松緑。さすがの貫禄でした。

「加茂堤」で、普段であれば下がっている御簾が上がっていたのは、松緑の提案だったそう。

「竹本さんも研修発表なので御簾をあげていただいたらいけませんか?」との提案があり、御簾をあげての出語りとなったそう。(葵太夫さんのツイッターより)

竹本最若手の和太夫さんにとっても貴重な経験になったのではないでしょうか。

若手もいろいろなトライアルをどんどんしてほしいものです。いずれは歌舞伎座の舞台で見られる・聞けることを楽しみにしています!

模擬店~これぞ夢の世界

芝居が終わる前にだーっと席を抜けて、模擬店に殺到する不逞の輩がいるとかなんとかいう噂を事前に聞き、そんな本末転倒なことがあるのかとびっくりしていましたが、今回実行委員長の彦三郎さんが舞台が終わった時点でバシーっと「まだ席立たな~い!」と大声で制し、模擬店の説明などをしてくれ(合間に時平のひょっこりはんあり)とてもスムーズだったのではないでしょうか?

担当の彦三郎さん、又五郎さん本当にご苦労さまでした!もちろん他の役者さん、スタッフさんたちも!

 

模擬店は確かにバーゲン会場のように込み合っている場所も一部ではありましたが、私はどうしても欲しいある公式グッズに的を絞り、おとなしく行列に並び、その後は次に行きたいところに、おとなしく行列に並び、その後は、ちょっとフラフラしていましたので、あまり大変な騒ぎの渦中に入らずにすみました。

f:id:munakatayoko:20230929221011j:image

▲萬太郎さんと時蔵さん。早々と売り切れてほっと一息

 

普通にその辺を歩いている歌舞伎俳優さんの、一般人とは違う美しさに驚いたり、お願いして写真を撮らせていただいたり、勇気を出して「いつも応援しています!」と言ったり。とっても楽しい時間でした。

f:id:munakatayoko:20230929215746j:image

▲とっても美しい女方好蝶さん

 

f:id:munakatayoko:20230929220131j:image

▲最近美しさが際立つ廣松さん

 

菊之助さんがフランクフルトやたこ焼きを手渡ししてくれる夢の世界

あとでTLに流れてくる写真を見ると、わ!こんな人もいたんだ。こんな人もいたんだ。全然会えなかった!どこにいたの?とビックリしたりしましたが、時間も限られていることですし、私は私で大満足です。

 

「何がしたいか。何が欲しいか。誰に何を求めるか」の優先順位を決めておくといいと思います。

事前にルールがきちんと説明されるので、それをきちんと守れば皆さん楽しく過ごせると思いました。

初代国立劇場の思い出~名優の数十秒に泣かされる

昭和41年11月のこけら落としから周年ごとの公演を中心に57年間の歴史を映像で振り返るという趣向だから、大変です。しかしこれがとてもよかった。編集は咲十郎さんとパンフレットにありましたが、めちゃくちゃ大変だったことでしょうね。あれも入れたい、まて、これも入れたいと悩んだり、思わず時間を忘れて見入ってしまったり。苦労がしのばれますが、とてもよかったです。(監修とナレーションは菊之助さん.ナレーション作は竹柴潤一さん)

なんと昭和41年11月国立劇場での第一声はだれか?15代仁左衛門。若かりしにざ様でした!

一つひとつのシーンは数秒だったり、長くても数分だったりするのですが、さすが名優たちの演技は数秒でも、こちらのハートをぐっとつかみにきます。

 

「おおおお」とジワが起こったのは、昭和61年の『仮名手本忠臣蔵』斧定九郎役での初代辰之助(現・松緑の父)の登場です。稲架け藁から ぬうっと出たところで「おおおお」とどよめき。「ごじゅううりょう~~~」。このシーンわずか数十秒で観客ノックアウト。まさに現代の中村仲蔵です。これは自慢ですが(笑)、小学生の私は辰之助が大好きでした。「ね。ね。すごいでしょ。辰之助」と誇らしい気持ちになりました。(全然私が誇るべきことでもないのですが(笑))

 

それからたまらなかったのは、平成18年『元禄忠臣蔵』の城明け渡しの場面での2代目吉右衛門です。花道七三からお城の門を見つめて「は~~~~~」と、ハラハラ涙をこぼす場面のみ。あそこだけで、これまた涙腺崩壊です。

 

本当にすごい役者の力ってすごいものですね。ほんの少しのシーンでも、感動させてしまう。満席の国立劇場の観客からは惜しみない拍手が送られていました。ハンカチで涙をぬぐう人も多かったのではないでしょうか。

 

そして、しつこいですが編集すばらしかったです。お疲れさまでした。咲十郎さん。

f:id:munakatayoko:20230929212216j:image

▲咲十郎さん、ありがとうございます!模擬店もお疲れさまでした!

 

戯場八景名残隼(ゆめのくにへようこそありがとうこくりつ)~大いに笑う

俳優祭名物のちょっとおふざけの創作演目。ちょっと先ほどの映像で、ぐぐっと来ていたハートが楽しくほぐれました。今回は幸四郎さんの演出。

思いがけずあの世に迷い込んだ人たち、幸四郎獅童、巳之助、新悟が、冥途の国でいろいろな人と会っていきます。バックの美術を描いたのは表紙と同じく種之助さん。とても素敵な絵でしたね。特に閻魔様がよかった。

f:id:munakatayoko:20230929220524j:image

▲素敵な表紙のパンフレット。

 

f:id:munakatayoko:20230930003443j:image

▲種之助画伯。グッジョブでした!黒衣もナイスでした

 

鬼やら閻魔大王やら冥途のメイドやら。テレビでも放映されるそうですからネタバレはあまり言わないほうがいいのかな。

私的にツボだったところをいくつか。

 思い切っても凡夫心

俊寛」の「思い切っても凡夫心」。これがあんなシーンで出るとは!参りました!(笑)

 猿弥の歌唱力

すでにミュージカルにも出ている猿弥。ですから知っている人は知っていたし、噂はかねがね聞いてはいました。が、実際聞いてみてほんとにうまくて、あごが外れるほどビックリしました。最後の最後まで伸びやかな高音で、もう一度聞きたい。というか、なんて芸達者な人なんでしょう。歌って踊って芝居もうまい、代役もバッチリ(笑)、猿弥さん万歳。

 花四天

通常の花四天は若い名題下の役者などが、クルクルと回ったり、飛んだり跳ねたりしますが、今回の花四天は…。中年4人組。普段は花四天をすることなど絶対ない人たちがやったので、拍手喝さいでした。もたもたドスドス、観客も大笑い。本人たちも苦笑い。でも花四天の衣裳をまとって、かわいらしく何よりとっても楽しそうでした。

 太鼓

そして、太鼓の4人組!とてもよかった。後は皆さん、お楽しみに。

楽しかった俳優祭~ありがとう!みなさん

最後のご挨拶は、専務理事の仁左衛門さんでした。にざ様は、「僭越」という言葉がでなくてまた頭をかきかきにざ様スマイルでその場をなごませ、三本締めで今年の俳優祭も幕を閉じました。

 

私自身はとても楽しめました。企画、運営、設営、実行はすべて、協会に属する歌舞伎俳優と新派の役者さんたち。イベントのプロでもない役者たちが、全力でサービス精神をぶつけてくれました。

 

俳優祭の収入は俳優協会を運営するための資金に充てられるので、私たちもなんだか財布のひもをゆるめて、心置きなくばーっと楽しんでしまえるビバ!俳優祭!なのでした。個々人によって財布の大小はありますが、それなりに紐をゆるめて楽しんだのだと思います。

 

ちなみに、大きな財布と言えばこちら。吉右衛門さんの押隈は550万円で落札されたとか。(Twitter情報なので真偽のほどはわかりませんが)いやあ、すばらしいじゃないですか。桁違いの太っ腹に実行委員の人々の苦労も吹っ飛んだのではないでしょうか。

 

関係者の皆様、お疲れさまでした。大きなけがやトラブルなどなくて本当に良かった。次回もいつあるのかわかりませんが、また楽しく俳優祭が開催できますように。