「初めての歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog

すばらしき日本の芸能、歌舞伎。初心者にわかりやすく説明します♪

祇園祭礼信仰記~金閣寺~スリリングでアクティブで美しくておもしろい

9月秀山祭の昼の部の最初にかかるのは『祇園祭礼信仰記~金閣寺』です。

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この演目は、とにかく舞台が美しい。たっぷりご堪能ください。

 

あらすじとみどころはこちら

munakatayoko.hatenablog.com

雪姫は今回、児太郎と米吉のダブルキャストでした。

ナウシカ味のある米吉雪姫

さて天井絵を描くか自分の物になるかと大膳に迫られてどうするかと考えているところ、ともかくも夫を殺させてはいけないと、決心するところまでは、弱弱しく見える雪姫なのですが(必死に考えているところはけなげです!)

大膳が持っているのは倶利伽羅丸と知って、親の仇と知るところでは

「その証拠とは、この剣!」と力強く言い放って、気丈にも大膳から刀を奪い斬りかかるところなどは、とてもキリリとしていてナウシカやユウナを彷彿とさせます。(すみません)ちょっと現代的になってしまったかな。

 

児太郎くんは、ぽったりとしたボリューミーな雪姫ですが、人妻の色気もあり、美しくて優雅で古風でした。

 

雪姫は大膳に斬りつけたものの、力及ばずあえなく桜の木に縛り付けられてしまいます。

が、なんとか夫に父の仇は大膳であることを知らせたいと思案します。

 

縄で縛られているところに、どっさとサクラの花びらが落ちてくるところがえも言われぬ美しさ。そして

「絵を描いたら本物のネズミになったという先祖、雪舟に技では叶わないけど、一念なら負けないわ」と健気に念じて、足先でネズミを描きます。それが見事本物のネズミとなり、縄を食いちぎってくれる。

 

ネズミがぱ~っと宙を飛ぶと、小道具のネズミのお腹が開いてぱ~っと桜の花びらが飛び散るところがまた、なんともいえない美しさです。ファンタジックな演出です。

 

縄がほどけ、直信の元に走ろうとするがそれを阻止しようとするのが大膳の弟鬼藤太。しかし、鬼藤太の首にどこからともなく手裏剣が飛んできてばったり倒れます。手裏剣を飛ばしたのが東吉。東吉は倶利伽羅丸を雪姫に渡し、自らは慶寿院を助けに。

 

金閣寺って昔はもったりした時代物という印象がありましたが、こうしてみると結構、スリリングでアクティブで、舞台は美しくておもしろいですよね。

 

東吉、実は真柴久吉は勘九郎で、とてもりりしくてよかった。

最後の大膳の立ち回りも花四天が大勢でてきてとても華やかでした。

 

どこか憎み切れない大膳歌六

極悪人ですが、なんだか歌六さんがやっているせいかどこか憎めない感じの大膳。

いちいち雪姫の意向を聞いているし、雪姫から「お心のままに」という答えをもらって有頂天になって碁の勝負を負けちゃうし、それでブチ切れて碁盤をひっくり返しちゃうし。

「布団の上で極楽責め。声張り上げて、歌え、歌え」なんていっているくせに。

最後は大立ち回りとなって

「やぶれかぶれだ。かたっぱしから死人の山だ~」なんて刀をぶんぶん振り回します。

もしかして、ジャイアン程度かな。的なところがかわいかったです。

演出の違い

以前書いたあらすじとみどころでは、「直信のところに走っていくところで、刀をちゃっと出して化粧を直すのがイイ」なんて書いたのですが、その演出は成駒屋の型。女心が可愛いです。

今回、児太郎はやっていましたが、米吉はやっていませんでした。

 

化粧のほかにも、雪姫の縛られる位置が以前見た成駒屋型とちがいました。

成駒屋の型ですと縛られるのは中央、屋敷の上手側なのですが、今回は下手側に桜があり、そこで縛られていました。中央にグッとより過ぎてこない分、直信が目の前を通って船岡山へ連れ去られていくときに、ちょっと遠くで哀しみながら観ている感じがよくでていました。また舞台を広く大きく使えていいなと思います。

 

雪姫の演出について、以下の方のブログに詳しく載っていました。

平成2年に玉三郎が雪姫を演じたときには、上手の桜で縛られていたそうですが、平成10年以降は、京屋の型を踏襲して下手の桜で縛られていることにしたそうです。

 

また雪をどっさどっさと降らせたのは平成13年の雀右衛門からだそう。

 

玉三郎は、刀を使って髪の乱れを直すことは宝剣であることを考えるとどうしてもできないと語っています。

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ameblo.jp

 

勘九郎の此下東吉、後に真柴久吉がすっきり

 

当初は、小田春永を見限って大膳のもとに来たなどといっていた東吉ですが、実は小田春長のスパイでした。正体を顕してからは、すっきりと美しく、りりしい。

勘九郎の時代物をもっと見たい!と思います。今月は久しぶりに勘九郎を見ることができたような気持ちで大満足です。

おまけに思いがけず、一本刀土俵入りでも観られたし!

 

雪姫のダブルキャストなどで話題になった今回の「金閣寺」。大変楽しむことができました。