国立劇場の歌舞伎はこちらでした。
いつもは歌舞伎座中心に観劇をしている私ですが、今月だけは国立劇場に集中。
観劇パスポートのおかげで5回観ることができたので、1回ではわからないことがいろいろわかりました。
ちょっと気に入ったのは、作り阿保をしている大蔵卿のこの言葉。
「果報は寝て待て、旨い物は宵に喰え、言いたいことは明日言え」
これをあほ面で言うので軽い印象ですが、すごくいいことを言っている(笑)。
やりつくしたらあとはいいニュースが来るのをまて。よいことは早く行い、腹が立っているときは一旦落ち着いてから言え
と言う意味です。
座右の銘にしようかな(笑)。
鳴瀬の死を悲しむお京
今回は曲舞の場があったのが話題でしたが、そこではお京と鳴瀬が仲良く息が合っているようすが表現されていました。それは冒頭の入間川の部分です。
埼玉県の入間川は、昔水が逆さに流れていたそうです。(下流から上流へという意味でしょうか)
それをふまえて、逆さコトバのことを入間コトバというそうです。
お京と鳴瀬が、この逆さコトバで笑っているところがあるのです。
「稽古させて下さらいで、狂言も覚えもせず、御前で勤めも致さぬが、ご褒美にもあづからいで、おほめもござりませぬ」
稽古もさせてくれず、狂言も覚えず、勤めもせず褒美もなければお褒めもない
と、鳴瀬は、ちょっとおどけながら全部逆さのことを言っているのですね。
それを聞いて賢いお京は
「そうおっしゃってくださらねば、かえって迷惑にも存じませぬ」と応じます。
そうおっしゃられたらうれしい。んですね。
そして、二人は笑い合います。和気あいあいとした関係が見えます。
鳴瀬は、大蔵卿の家老、八剣勘解由の妻です。勘解由は播磨大掾広盛と結託してお家乗っ取りをたくらむ強欲な男で、最後大蔵卿に殺されます。妻の鳴瀬も責任を感じて自刃します。
その時、お京は取り乱したりはしないのですが、「はっ」として、数回まばたきをし、とても沈痛な表情でした。
ほとんどわからないような、細かな表情などもじっくり見ることができました。
今まで曲舞を観たことがなかったので、鳴瀬が死ぬところのお京の心理なんて考えたことはなかったのですが、スパイとして大蔵卿館に入り込んでいたお京が、鳴瀬とは「敵ながらあっぱれ」というか、リスペクトできる関係というか「そうか、仲良かったんだ」という新たな知見を得ることができました。
緊張を余儀なくされる現場。その中で心の通い合えた存在だった鳴瀬の死。
お勤めとはいえ、ツライ現場でしたね、お京さん。でも、常盤御前の本心がわかってよかった。
お疲れさまでした。