「初めての歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog

すばらしき日本の芸能、歌舞伎。初心者にわかりやすく説明します♪

ド派手で大迫力!鬼揃紅葉狩~三代猿之助四十八撰の内 観劇レポ

「紅葉狩」は、昨年12月の歌舞伎座、今年7月の国立劇場での鑑賞教室でも上演されましたね。歌舞伎らしさが味わえるので、誰にでもおススメです。

また、紅葉狩を出すなら、やっぱり12月より7月より10月がいいですね!

 

あらすじ

あらすじは、紅葉狩りにやってきた平維茂が美しい女たちに出会う。酒宴に誘われて楽しく見ているうちにウトウト。ところが美しい女と思っていたのは実は鬼で、襲いかかってくる。戦う。神刀でついに鬼を打ち負かすというもの。

 

少しずつ違うそれぞれの「紅葉狩」

大筋は変わりませんが、昨年の12月のものも、7月の鑑賞教室のものも、今回のものも、全部少しずつ違います。

 

「紅葉狩」は最後に鬼女と平維茂が1対1で対決しますが、「鬼揃」となりますと文字通り、侍女たちが一斉に鬼になり、最後には毛振りまでやりますからそれはそれは派手で楽しいです。「鬼揃」がついていれば、最後は鬼女ズも鬼となって暴れまわるバージョンだと覚えておいてください。

 

昨年12月の「信濃路紅葉鬼揃」(2007年初演)は鬼女も更科姫も、衣裳や所作が能の「紅葉狩り」に近いものでした。鬼女ズは能面のような化粧で誰が誰だかよくわからないくらい一体感がありました、鱗模様の着付け、紅葉模様の色違いの壺折、紅の半切り姿で一糸乱れず踊る姿が美しかったですね。鬼女ズに左近君もいたのですね。左近君、今回も鬼女ズの一員で健闘しています。

 

7月の歌舞伎鑑賞教室は王道の歌舞伎の「紅葉狩」。観劇レポはこちら

munakatayoko.hatenablog.com

 

今回の「鬼揃紅葉狩」は1994年に三代目猿之助がそれまでの「鬼揃紅葉狩」に新たな工夫を加えて上演して、「三代猿之助四十八撰」の一つとしたものです。昨年12月に上演した「信濃路紅葉鬼揃」より古いのですが、さっすが澤瀉屋という感じで、スピーディで鮮やかで華やかで、圧倒されます。どれがいいとか悪いとかではないので、見比べが楽しいです。

初心者の皆さんも海外のお客様もお子さんもどうぞ楽しんでください。そうそう、音楽も三方掛け合いと言って、長唄、竹本、常磐津と勢ぞろいでとても華やかです♪

ひたすら美しい

今回は、更科姫が猿之助。圧倒的に美しいです。ぽったりとした美しいお顔で、侍女たちとともに平維茂たちをもてなします。維茂は幸四郎、こちらも圧倒的な美しさです。まさに平安貴族ここにありといった風情。

 

侍女は、門之助、種之助、男寅、鷹之資、玉太郎、左近です。これまた美しい。かわいらしい。可憐。衣裳もそれぞれ色が違って舞台が華やかです。

ちょっとお姐さん格の門之助は別として、ぬるで(種之助)のかわいらしさがたまりません。常に微笑んでいて、ぬるでの余裕、ぬるでの自信を感じさせます。鬼女になってからは微笑んではいませんが…(;^_^A

恐ろしい

猿之助の更科姫は、時たま見せる鬼の片鱗が恐ろしくも怪しく、一瞬の後には少しごまかすそぶりなどもあり、片時も見逃せません。瞬きもできません。

 

鬼の気配を見せて、シャーっと全員が走り去っていきます。このあたりも2階以上の上から見たほうが全体が把握できて美しいと思います。

 

狂言では、山神が維茂たちを起こしにかかりますが、さっぱり起きないので神刀を置き、あきらめて去っていきます。その後目覚めた維茂たちは神刀を持って、鬼女退治に向かっていきます。

迫力の戦い

そのあとの戦いぶりは、まさに迫力の一言。猿之助が長袴をブンブンと振り回しながら前に後ろに進み行く姿は本当にすごい。長袴につんのめらないようにするには、ひねるようにして長袴をトルネード状にクルクルさせながら前進しているようで、それが鬼の大きさと恐ろしさをあらわしているようでした。

あんなにかわいらしかった侍女たちもあわれ鬼に姿を変えて、次から次へと襲ってくるのです。1対1の戦いも迫力がありますが、鬼女軍団が次から次へと襲い掛かってくる様子は、スピーディで息をつく間もありません。

猿之助ファンの女の子

私が観劇をした日、行きの地下鉄でかわいい小一くらいの女の子が「えんのすけさん、えんのすけさん」と言っていて、ああ歌舞伎を見に行くのかなとほほえましく観ていました。中央改札口を出ると「あー!えんのすけさん」とポスターに走っていく。なんとまあ本当に大好きな様子。

 

その後、私が2階に着くと、その女の子、お母さんとお父さんと桟敷席に座っていました。そして始まるまでワクワクウキウキと楽しみにしているのが2階席まで感じ取られるようで、なんともほんわかしました。始まると、時にはママとこちょこちょ話をしたり、「あ!出てきた出てきた!」というふうに喜んだり、「ひゃーすごい」と息をのんでいたり、とにかく全身で歌舞伎を楽しんでいる様子でした。猿之助が出てきてからはママも釘付け、拍手喝さい。大喜びの様子にこちらまでうれしくなってしまいました。

家族で歌舞伎。1年に1度でもいいから、見に行けるといいですね。とってもいい思い出になると思います。こちらまで幸せのおすそ分けをしてもらったようなこの日の観劇でした。

ごめんなさいね、なんだか盗み見をしているみたいで。

あの女の子が一生歌舞伎が大好きで、いつか猿之助にも会えて、ますます歌舞伎が大好きになりますように、魔法をかけておきました!