義経千本桜の三段目です。
世話物風で、主人公はいがみの権太です。
知盛の息子維盛をかくまう権太の父弥左衛門は、どうやって維盛を守るのか。そして不良息子権太との決着はどうつけるのか。
椎の木の場はカットされることも多いのですが、仁左衛門が上演するときはこの場を必ずつけるそうです。なぜならここがあるので、ならず者の権太も自分の妻子には非常に愛情を持っていたことがわかり、後のすし屋の場面の悲劇がグッと引き立つからという理由だそうです。その通り!!! なので、私も大好きな場です。
登場人物
いがみの権太 ならず者。
小せん 権太の女房
善太郎 権太の息子
若葉の内侍 三位中将維盛の御台所
主馬小金吾 維盛の家来。若葉の内侍をやっと訪ね当てて、高野山にいる維盛の元へ連れて行こうとしているところ。
六代君 維盛と若葉内侍の若君
弥左衛門 権太の父。真面目。平重盛に恩があり、平維盛をかくまっている。権太は勘当中。
権太は、上方と江戸では演技演出が違います。ちょっと小粋な悪党とする江戸、今回は音羽屋型なので、こちら。言葉使いも江戸弁です。
上方では、田舎のならずものとして演じます。
あらすじ
下市村椎の木の場(木の実)
平維盛を追ってきた妻の若葉内侍、若君の六代君、家来の小金吾の3人が、茶店前で休憩をしています。そこにやってきたのがいがみの権太。
権太は親切なふりをして近づき、荷物を取り違えて持っていってしまいます。すぐに「間違えた」といって戻ってきましたが、取り返した荷物の中にあったはずの20両がないといちゃもんをつけます。
あることないこと言われて悔し涙に暮れる小金吾に、罵詈雑言。ほんとに権太はただのチンピラですね。
若葉内侍らは、鎌倉方に見つからないよう人目を忍ぶ身の上だから、あまりことを荒立てたくありません。そこで、騙りとは承知のうえで、なけなしのお金である20両を渡して、一行はその場を立ち去ります。
これを見ていたのが、権太の女房おせんです。
それはちょっとあんまりひどいじゃないの、と責めるおせんにたいして、うるせい!大体お前が悪いのだのなんだの、相変わらずひどい男なのですが、善太郎には優しく、なんだかんだ言って親子3人仲良いところを見せて去っていくのですが、そこを目に焼き付けておいてください。善太郎の笛を懐に入れていくのも覚えておいてくださいね。
下市村竹藪小金吾討死の場(小金吾討死)
若葉内侍、六代君と、小金吾は、猪熊大之進に追われて逃げているうちにはぐれてしまいます。小金吾は、追手を相手に必死に戦いますが、深手を負ってしまい、ついに非業の最期を遂げるのです。
立ち回りが美しいので、必見です。
夜道に置いておかれた小金吾の遺体。そこに来たのが弥左衛門です。弥左衛門は何を思ったか、知らない小金吾の遺体の首を斬り落とし、家に持って帰るのです。
すし屋に続く
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