先日書いた「猪八戒」は、95年前の達筆で書かれた台本を元に書いたが、今回の「猪八戒」はずいぶん変わっていた。
澤瀉十種の内 猪八戒 - 「初めての歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog
なので、観劇レポをば。
あらすじ、すなわち
「人々を困らせている霊感大王を、三蔵法師一行が退治するというお話」
というのはそのまま。いや、三蔵法師出てこなかったな?
ただし、「全然違った」ように感じたけれど、
「どこがどう違ったか」については、もう一度検証しないと、逐一は書けない。
自信をもって全くちがったと言えるのは、最後の「通天河の場」だ。
これから観る人は、逐一ストーリーを予習する必要はないので、前回の記事を読んで「これがどう変わっていたか」ということを楽しんでいただけたらと思う。
「観世音菩薩が現れて、霊感大王は金色の鱗をした一匹の魚だったと告げる」
というのは、なし。「静かな場」どころか、ラストのアクションシーンはとっても派手だ。
「これ、いらないんじゃね?」などと猿之助が言ったかどうか知らないが、勝手に想像すると楽しくて、「これが猿之助のやりたかった『猪八戒』なのだな」とニヤニヤしてしまった。
幕あけは、村人たちが集まって霊感大王が暴れていて困っているという相談をしているところ。村長さんは寿猿。
猪八戒は、女装して身代わりの生贄となり、大王に近づき退治するということになるが、大王を待つ間に酔っぱらってしまって、そこに大王が現れて、丁々発止と大立ち回りとなる。
猪八戒の前に「車引」で恐ろしくも存在感のある「時平公」を演じた猿之助が、幕間を挟んだら、頭にかわいいピンクのお花を3つもつけてロングヘヤーの猪八戒に変身している。
変装した猪八戒である。袖は水色、正面は赤、前垂れはピンク袖口は黄色と、全体的にふんわりしたかわいらしい猪八戒。
衣裳は、前回をなるべく踏襲しているらしい。すごい!霊感大王の衣裳もなかなかおもしろかった。
酒を飲んで酔っ払ってしまうから、足取りはふわふわ、よろめいたり腰が抜けそうになったり、とはいっても立ち回りはスピーディだわ、派手だわ、とにかくほとんど動きっぱなし。
セリフは全部葵太夫さんで、それに合わせた動きであるので、まるで上質の人形劇をみているよう。
さらに、上から糸で操られているような、すとんと腰が抜けたり、ふわりと飛んだり、ふわふわした浮遊感とダイナミック感は、人間を超越した動き。まさか人間ならあんなにずっと踊れないよね、みたいな。
人形劇と言っても、文楽やパペット人形ではなくて、江戸操り人形のような、糸で上から操る操り人形だ。
猪八戒が女装を解いて、ぱっと本来の猪八戒になる早替わりも、人形かくやと思われるほどの速さ。
猿弥の霊感大王も猪八戒に負けじと楽しくダイナミック、笑三郎の女妖緑少娥、笑也の女妖紅少娥も美しく、ラストにむけて、これでもかこれでもかと火花を散らせてヒートアップしていった。
この日、3階席は高校生(中学生?)の団体さんが来ていたのだけれど、終わった後「めっちゃおもしろかった」というつぶやきと目の輝きを、私は見逃しませんでしたよ、ええ。
1部は、車引と合わせて「初めての歌舞伎」にとってもおススメだと思いました~♪