「初めての歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog

すばらしき日本の芸能、歌舞伎。初心者にわかりやすく説明します♪

『喜撰』華やかで多幸感あふれる♪

3月の千穐楽で、夜の部。
『伊勢音頭』のあとは、『喜撰』です。

『伊勢音頭』が結構凄惨なので、そのあと『喜撰』でよかったですねえ。華やかで多幸感いっぱいになって帰路につくことができました。

古今和歌集で優れた歌人として挙げられた6人のうちの一人が喜撰です。この6人は六歌仙と呼ばれるようになります。
優れた歌人といっても、確定される歌は一首しかないそうですし、詳しいことはわかっていない人物らしいのですが、粋でちょっとエロくて、洒脱なお坊さんがお梶という茶くみ女にちょっかいを出します。

舞台全体が、桜満開で華やか。喜撰法師ヒョウタンを下げた桜の枝を担いで登場です。ひょうひょうとしていて軽やかに花道で踊ります。

〽世辞で丸めて浮気でこねて、小町桜の眺めにあかぬ きゃつにうっかり眉毛を読まれ


って歌詞、なんともいいですねえ。
眉毛を読まれというのは、本心がバレたみたいな意味でしょうか?

そこにカタカタカタと下駄の音。お梶が出てきて、お茶を勧められた喜撰はその美しさにすっかりほれ込みクドキます。

積極的な喜撰をうまくかわすお梶。喜撰が松緑でお梶が梅枝なのですが、実はこの二人私生活でもとても仲がよいのですよね。

紀尾井町家話を聞いていたり、松緑のブログを見ていればわかりますが、しょっちゅう飲んでは「愛人かよ!」と松緑自ら言うほど。

それもあってとにかく二人の踊りがピッタリと息が合っていることと、二人とも踊りがとてもうまいこと。
梅枝の姿の美しさ、芯があって柔らかくて、指さきから着物の裾まで流れるような動き。

お梶の踊りに続いては、転調して明るくチャカポコチャカポコと小鼓がなり、チョボクレを軽やかに踊る喜撰松緑。チョボクレとは、江戸時代の大道芸。

最後には、お梶と入れ替わりで弟子たちがなかなか帰ってこない喜撰を迎えに来ます。この所化軍団が、年齢層幅広くて、ミニチュア所化から大きい所化まで総勢16名。最年少は大晴くん(梅枝長男)8歳。最年長は権十郎かな?70歳。
チビーズトリオは大晴クン、眞秀クン、亀三郎クン。元気いっぱい笑顔いっぱいで、かわいかったですねえ。
大晴くんは、6月には梅枝襲名です。

萬太郎、種之助、鷹之資トリオもニコニコと。萬太郎は甥っ子の大晴クンをずっと眺めていてニコニコがはちきれそうでした。

所化たちが住吉踊り(当時の流行りだったそう)を踊れば、喜撰はますます楽しくなって女郎の様子を踊ります。上半身は男、下半身は女でという口伝はここらあたりの踊り方に対しての口伝でしょうか。

こうして坊主集団は皆で楽しく踊り、華やかに幕。

幕が下りると場内にほ~~~っという幸せのため息が充満していました。

初演は、1831年。『六歌仙仙容彩(ろつかせんすがたのいろどり)』。これは、六歌仙が1人ずつ出てきて踊る舞踊で『喜撰』もその中の一つだったのですね。

3月の歌舞伎座を締めくくる良い演目でした。
『喜撰』は、シネマ歌舞伎にもある演目ですので、上演されたらぜひご覧ください。幸せになれます笑。