第2回 中村福助・児太郎の会『三本の糸』を観に行ってきました。
東京国際フォーラムホールC
東京メトロ有楽町線の有楽町駅からは直結。アクセスのよい場所ですね。
2回目の中村福助・児太郎の会ですが、私は初めての観劇。
行ったきっかけは、
1、歌舞伎以外の様々なジャンルとの共演とのことで興味津々。
2、福助さんは2013年に脳内出血による4年間の休業で2018年に舞台復活をしたのですが、日頃のリハビリの努力をSNSで見るにつけ、応援したい気持ちに。しかもSNSでの投稿を見ていると、とても明るい性格で悲壮感などはまるでなしなのがとても素敵です。
3、芝のぶさんが「魔女」役ででるとの情報をキャッチ。それは観ずばなるまいよ。
ということで行ってきました。
ご挨拶にも
「(様々なジャンルの人たちと)生み出す今回だけの世界観」が目玉の一つですのでこの点を楽しんでいただけたらうれしいです」
とのことだったので、チャレンジングな部分もリラックスして楽しみました。
舞台上手には三味線・お囃子。下手には、バロック・ヴァイオリン、ヴィオローネ(コントラバスみたいな楽器)、チェンバロ、オルガンなど。という布陣。
さまざまな新作でも和洋楽器の融合は観られますが、なかなか合うんですよね。今回も効果的に、要所要所で芝居にフィットしていました。
お話
将軍の落とし胤の椿鬼座右衛門(安田桃太郎)は妖刀雪月丸を手に入れて、悪行の限りを尽くす。雪月丸を作った刀鍛冶(?)は殺され、その息子政(松田凌)はお静という嫁(児太郎)が出産するのを待っている。弟佐吉(莟玉)と共に。出産したのは三つ子だった。
三つ子に殺されると魔女に予言された鬼座右衛門は、三つ子を探し回り、ついに政の家を突き止めてしまう。お静は三つ子を抱いて逃げ、政と佐吉は殺される。
お静は、なんとか子どもたちだけを助けたいと神に祈ると、神使(梅花)が現れて(品がありよい)、子どもたちを18歳までは無事に隠し通してやろう。その後、子どもたちがどういう人生を送るかは子どもたちに決めさせるように言う。そしてバーンと現れる神々しい神は、もちろん福助。
幕間20分で、18年時間がたちます。
18年後、別々に生きていた三つ子、力丸(松田凌)、月太郎(莟玉)、雪(児太郎)は大川端で偶然に出会い、実の兄弟であることを知る。そして、仇を討つために結束。ついに戦いの末、鬼座右衛門を討ち果たすが、自分たちも命を落とす。幕。
前半は、政(松田凌)、お静(児太郎)佐吉(莟玉)というトリオが結構ユーモラスで笑わせてくれます。児太郎の間がいいというか、ユーモアのセンスがいいのです。俳優祭の時も感じたけれど、どこか独特でおもしろいです。いつもかわゆい女の子の莟玉の佐吉が、てやんでい的な意外なキャラでビックリ。そのまま時代劇で使えそう。
立ち廻りも、普段女方で立ち回りなんてしないでしょうに、児太郎、莟玉ふたりともがんばっていた。
後半は、このトリオがグッとかっこよくなって登場。ちょっと児太郎の衣裳はやりすぎ感があったけれど、それはもう個人の好みなので…(;'∀')。
児太郎くん最後の挨拶のときに「どうこの衣裳!」みたいに両手を広げていたので、楽しそうでよしとします(誰様目線だ)
莟玉の月太郎は、髪もメッシュにして大変かっこよかったですね。
鬼座右衛門との立ち廻りはかなり見ごたえありました。
そして芝のぶですよ。FFの時のユウナレスカか、マハーバーラタ記の鶴妖朶王女かってくらい地獄の底から来た感がありました。衣裳も化粧もよかったです。あの魔女は、実は鬼座右衛門の良心なのかなあなどと思いました。
結構小学生くらいの子供たちもたくさん見ていて、楽しんでいましたし、お年寄りもしっかり鑑賞。
だれることなく、楽しみ、チャレンジングには大いに拍手なんですが、少し疑問を感じるとすれば3点でしょうか。
1点目。
鬼座右衛門は将軍の落とし胤?そうするなら、それなりに「天一坊」や「天日坊」のようにストーリーがあってしかるべきだと思うけれども何にもないので、将軍の落とし胤にする意味が薄かったような気がしました。
2点目。
無理やり三人吉三にしなくてもよかったような。大川端の場だけは使っていますが、他は全く関係ないし、大川端のパロディってほどでもないし、実の兄弟だし。大川端にしなくても十分成り立ったのではないかなと思いました。
3点目。
最後に神様が出てきて、「生きることは苦しいこと。だが、何があっても人は生きねばならぬ」と言って幕になります。
福助さんと児太郎さんが「生きる」をテーマにしているということなので、このセリフはとても重要ですし、言いたかったことなのだろうなあとは思うのですが、目の前で鬼座右衛門を始め、三つ子も三人とも死んでいますから。
三人吉三を題材にしたとあるので、3人とも死ぬんだろうなと思っていたので、実はどんでん返しで、しっかり生き延びた。そして神様のこのセリフというならわかりますが、敵討ちで全員死んで、そのうえで「何があっても生きねばならぬ」と言われても、ちょっと説得力に欠けるというか。神様そんなこと言うなら、命を与えてあげてほしかったなという気がしました。
とはいえ、笑いもあり、和洋折衷もあり、多ジャンルの方のめざましい活躍あり、立ち回りありの楽しい3時間強でした。配信もあるそうなので、ぜひ観てみてください。
そうそう。私にとっては、恥ずかしながら松田凌さん、安田桃太郎さんの芝居は初めてだったので、その点は大変良かったです。実力派の俳優さんとして今後も要チェックですね!
カーテンコールもご挨拶もよかったです。児太郎さん貫禄出てきましたね。今後の活躍ますます楽しみです。神様の福助さんはもちろん存在感バリバリでした。
三本の糸
企画・構成 中村児太郎
演出・脚色 市川青虎
脚本・久保田創