このサムネを観ると、お年を召した好好爺という雰囲気も感じます。
しかし、当代片岡仁左衛門のすごさはその舞台で発揮されます。
ほんのり垂れた目じりがキリリと引き締まり、冷徹で無情な悪役もいなせなボンボンもおおらかな殿様も悲劇のヒーローも、この方にあっては自由自在。
また、姿勢が美しくて、『籠釣瓶』で見せた柱にもたれかかる栄之丞。ぷんぷんしながら着替えるところ、その甘えや憤りをチラッと見せながらすたすたと姿勢よく歩くところなどにも見惚れたことでした。
3月14日で80歳となりました。芸を追求するその姿勢と、厳しい指導と、時折見せるかわいらしさ(私などが言うのもおこがましいのですが)にいつもノックアウトされる気分です。
今回、3月と4月で出演する歌舞伎座での役についてのインタビューがこちらです。
神田祭の仁左衛門に関しては、本当に鯔背でかっこよくてとんでもないのですが、
「伯父(二世花柳壽楽)が、二人の雰囲気を活かす振りをつくってくださった。日本一のええ男とは思えないですが、正直、ちょっとは自惚れていないと照れくさいですよ」
とおっしゃっており、いえいえあなた、日本一のええ男ですよとしか思えませんでした。
常に探求を欠かさない姿勢は、以前から敬服するところでもありましたし、それがまた観劇の楽しみでもあったりします。
たとえば、『すし屋』で、本物の火を使い、涙を煙が目に入ってごまかしたように見せたところや、『俊寛』ですっぽんを使ってざぶざぶと海中に入っていくところを表現するなど、新しい演出をみるたびに「アッ!」と驚かされ、その姿は目に焼き付いて忘れられません。
惰性で舞台に立つだけではなく、80歳近くなっても常に前進を続けているところが素晴らしいと思います。
今回のインタビューでは、探求するだけでなく
「自分があまり深く掘り下げすぎても、お客様に通じるとは限らない。思いを込め過ぎても、お客さんがくたびれてしまう恐れもある。その兼ね合いが難しいです」
とおっしゃっています。
時々体調を崩されることもあり心配ですが、3月はずっとお元気な姿でウレシイ限りです。どうぞ無事に千穐楽までお勤め下さい。そして4月も。いつまでもお元気で。