「作者と劇評家のコトバで読み解く歌舞伎の世界」の近松シリーズ。その3回目が3月11日(月)に開催されました。
神楽坂での初開催
会場は神楽坂にある赤城神社参集殿(あかぎホール)。雰囲気ありますよ~。
3回全出席の方には、受付で木ノ下さん田中さんのイラストがプリントされたクリアファイルがプレゼントされました。
近松は何をテーマに創作をしてきたか
まずは配布資料の近松の略年譜全体を見ながら、近松の人生を3つのタームに分けての振り返り。
第1タームは近松が人形浄瑠璃を書いていた20代~です。駆け出し時代ですね。
第2タームは歌舞伎にフィールドを移した40代。
第3タームは、人形浄瑠璃作者に戻った50代です。
近松は、3つのタームを生きる中で、何をテーマにしてきたのでしょう。資料を基に掘り下げ、さらに映像『傾城仏の原』を観ながら再確認していきました。この映像は近松座のものでしたが、4代目坂田藤十郎さんの渾身の演技が見ものでした!
第1タームで、近松が大切にしたことは「すべてのものに生きているかのようなリアリティを持たせる『情』」ということでした。
第2タームでは、初代坂田藤十郎との出会いがありました。そして練りに練った言葉だけではなく肉体からほとばしる言葉や「芸とは実と嘘の皮膜の間にあるもの」という気付きを得るのです。第3タームでは、それらが血となり肉となり円熟した作品を発表していきます。
『心中天網島』の深掘りをしてみた
講座の後半は、近松の円熟期となった第3タームでの傑作『心中天の網島』を深掘りして、作品の魅力に迫りました。
生涯のうちで近松が書いた11の心中物のうちの10作目である『心中天の網島』は、初期の『曽根崎心中』に比べ、登場人物も構成も複雑になっています。また好景気の元禄時代とは異なる社会情勢も踏まえながら、作品を追っていきました。
マクロの視点からミクロの視点へとグーグルマップのように入り込んでいく木ノ下さん独特の作品の読み解きかたが圧巻でした。
水・恋の縁語をちりばめた詞章。神と紙といった対語などに代表される神聖なるモチーフと俗のモチーフが同時並行して迫る作品の構造。衣裳や小道具にまでモチーフがちりばめられていることなどが細かく解説され、あらためて作品の深さ、近松の偉大さに気づかされました。
駆け足ながら、人形浄瑠璃と歌舞伎の世界を行き来した近松の生涯を追うことで、どちらの世界の深さも味わうことができたと思います。
次回の詳細は未定ですが、決まり次第銀座楽学倶楽部のHPで発表されます。こちらのブログでも情報を流していきますね。
講座を終えて
講座が終わって撤収を完了したのが9時。それからスタッフで遅い夕食兼打ち上げに行きました。私はこの講座のときだけ参加する臨時スタッフで、他の方もそんな方が多いよう。しかしさすがに9回目となり、チーム感が出てきました!
「神楽坂、いいですね。またここでやりたい」
「次回は、こんなところに気をつけないと…」
和気あいあいと課題点を話したり、今後の話をしつつ、飲んで食べて英気を養い、又の再会を約束して解散となりました。
シメのお茶漬け!