『リア王』を観てきた。普段歌舞伎ばっかりの私なので、新鮮。本当はもっと色々観たいのだが。。@池袋芸術劇場プレイホール!
シェイクスピアの『リア王』。
背景は真っ白の壁で、俳優たちはスーツやフードのついたトレーナー、3姉妹はお揃いのピンクのワンピースといったいでたち。でも王であり、伯爵であり、侯爵である。
舞台上にはプリンター、簡素なイス、プロジェクター、電話といった小道具。
いささか戸惑うものの芝居が始まってしまうと、特に違和感はない。なぜなら、『リア王」って、今でもそこらじゅうにころがっている家族の遺産相続やお家騒動などとテーマは同じだから、1600年代に生まれた昔話というより「なんだか身につまされてお尻のあたりがむずむずしちゃう」ほど現代にマッチしている。
江口のりこ扮するゴネリル姉さんも田畑智子扮するリーガン姉さんも、それほど極悪人には思えない。そりゃあ多少遺産が欲しくてちょいと過剰な愛情表現を言っちゃったかもしれないが、実際親父を引き取ってみたらわがまま言い放題だし、とんでもなく迷惑で、押し付け合いたくなるのもわかる。大変よ、こんな父さん。
400年たって技術は進歩したかもしれないが、素の人間がやっていることなんて全く進歩はなく、いじけたり、ごまかしたり、ウソをついたり、かっこつけたり。欲にからんで陥れたり、やってることは古今東西まるで変わりがない。やれやれだ。
段田安則がリア王。怒りっぽくてちょっと滑稽なリア王だった。一番タチの悪いエドモンドが玉置玲央で、冷たい顔に眼鏡が似合った。
小池徹平がエドガーという人のいいお兄さんで、熱演。弟エドモンドに陥れられて捕まえられそうになったため、裸同然になって絵具を体中に塗りたくって気がおかしい「気違いトム」の振りをする。いやあ熱演です。そして終盤、父であるグロスター卿を支える。
リア王は3人の娘のうち、自分が勘当した末娘に救済されるし、グロスターも2人の息子のうち、勘当した息子に救済される。人間、本当のことにはなかなか気づけないものなのですよねえ。
そうそう、ケント伯爵という忠実な部下のことも追い出してしまうリア王だけれど、これも最後までその忠誠心に気づかない。リア王がとりわけ程度の低い人間というわけではなく、人間ってそれほど愚かな存在なのだろう。自分も気をつけよう。権力も財産もないから、誰も近づいてこないけれど(;^_^A
家に帰って大河ドラマを観たら、藤原兼家・段田安則の悪だくみを息子の道兼・玉置玲央が粛々と実行にうつしていて、あらあらこちらの世界でも大変なことで…と思ったことだった。
▲「光る君へ」チームからもお花がたくさん届いていました