浅草1部は、『本朝廿四孝』と『与話情け浮名横櫛~源氏店』のあとは、かろやかな『どんつく』で浅草メンバー全員が出てきて軽やかに踊ります。
いつもの『どんつく』は亀戸天神の前という設定ですが、今回はせっかく浅草での上演なので、浅草寺の前という設定。後ろには浅草寺と五重塔がしっかりと描かれていました。この地が江戸の街にタイムスリップしたよう。
▲浅草公会堂4階からみた景色。どんつくの世界ですね
どんつく(荷物持ち 坂東巳之助)はじめ、太神楽(大道芸人)の親方(歌昇)や大工(隼人)、太鼓打ち(種之助)、若旦那(橋之助)、子守(莟玉)、芸者(米吉)、白酒売り(新悟)、田舎侍(松也)などがそれぞれ踊ります。
メンバー全員もとても楽しそう。他の演目では大きなお役を抱えて緊張の連続だったと思いますが、『どんつく」は皆さんリラックス。浅草歌舞伎のメンバーの配信でも「どんつくは癒し」という声が出ていましたが、皆本当に楽しそうでしたね。
特に、『十種香』で長尾謙信と、2部の『熊谷陣屋』で熊谷直実という重い役を演じた歌昇が、この『どんつく』では親方として、様々な神楽芸を披露しましたよ。ずいぶん練習したようで難度の高い芸に毎日チャレンジ。やんやの歓声は、観客のみならず、舞台のメンバー(特に田舎侍のあたりから(笑))からも盛んに飛んでいました!
ミスすると「あ~残念!」そのあとで成功すると「よおよお!よおよお!」と田舎侍。
「おおおお」!と会場も盛り上がり。
私が観た日は、玉がコロコロ客席にまで落ちてしまったのですが、どんつく巳之助がひょいひょいと際まで行って「どうもどうも」と投げ返してくれるようにお願い。そして「これが本当のおとし玉!」なんて言って笑わせてくれました。ナイスです。
内容は、浅草寺の境内で様々な人が踊るというものですが、今期浅草メンバー1部最後の大集合ということもあって、観客も一緒に盛り上がり楽しんでいました。
主人公のどんつくは巳之助。これは以前にも踊り、踊りの名手である父三津五郎の当たり芸でもあります。
巳之助は『十種香』では原小文治といういかつい役、2部『熊谷陣屋』では源義経という白塗りのクールなお役、『魚屋宗五郎』では岩上典蔵という悪役ですが、このどんつくは、かわいくてちょっと抜けていて、ちょっとずるい愛嬌のあるお役。振れ幅が大きいですねえ!ちなみに、今大河ドラマの「光の君へ」では円融天皇を演じていて、
円融天皇とどんつくのギャップの違いだけでも、思わず手を叩きたくなります。
どんつくどんつくどんつくどんつくどどんがどん
とリズムが頭についてしまうのは、いつものことです…。