初代吉右衛門が定めた家の芸「秀山十種」に入っています。全3幕ですが、今回は淀川御座船の場のみ?それは残念ですね。
あらすじ
太閤豊臣秀吉が死んだ後、徳川家康が天下を掌握し、すでに豊臣家の行く末も風前の灯。
秀吉につかえていた加藤清正も病身となっています。それでも秀吉の忘れ形見、秀頼を命の限り守り抜くという気概がこの老いた武士にはあるのです。
家康に招待され二人は二条城に赴きます。老獪な家康は何とかして豊臣家を滅ぼそうと考えていますから一瞬たりとも油断はできません。しかし、秀頼も立派に対応、清正も秀頼を無事守り抜いての帰路。
淀川御座船で、清正と秀頼は静かに語り合います。実は、清正は悲壮な決意で二条城に向かっていたのでした。。
今回は加藤清正が白鸚。聡明な秀頼が白鸚の孫、染五郎が演じます。
「何としても秀頼を守る」という思いと、秀頼が立派に育ったという安堵、「今宵ばかりは命、お、惜しゅうなった」という絞り出すような吐露。それはそのまま白鸚の気持ちかもしれませんね。
概況
原作:吉田絃二郎。
初演:1933年(昭和8年)
清正もので評判をとっていた初代吉右衛門は、自分にあてがきされた清正ものを望んでいたそう。「完本中村吉右衛門」には、そこについて詳しく書いてあります。
劇中でも、短刀は大切なアイテムとして出てきます!
吉右衛門は、「古典のようになっていますが、もっと工夫を加えたい演目の一つです」と語っており、もっと生きていてくれれば、どんな工夫を加えて深い物語にしてくれたのだろうかととても残念だけれど、想像がふくらみます。
三菱財閥の有力実業家、木村久寿弥太から清正ゆかりの短刀を譲られた初代は、それを好機として、吉田に書きおろしを依頼する。それが「二條城の清正」である。続けて吉田が執筆した「蔚山城の清正」「熊本城の清正」とともに初代の当たり役を集めた「秀山十種」に数えられる。(完本 中村吉右衛門)
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