「初めての歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog

すばらしき日本の芸能、歌舞伎。初心者にわかりやすく説明します♪

第7回研の會~夏祭浪花鑑

尾上右近の自主公演今回が7回目。

8月2日と3日に、昼夜4回。私は初回と千穐楽の4回目の2回観てきました。

今までは国立劇場小劇場(座席数590席)で開催していたけれども今回は満を持しての浅草公会堂(1070席)。これが4公演完売ということなので、本当におめでとうございます。

私は6回目から観ている新参者ですが、6回目も文楽人形との共演で「かさね」を上演。常にかなりチャレンジングな右近君。
今回のプログラムは、「夏祭浪花鑑」の団七とお辰の二役。長町裏で泥にまみれて義平次と組んずほぐれずのどろどろの戦いをした35分後に「京鹿子娘道成寺」。
チャレンジングにも程がある。千穐楽のカーテンコールで米吉クンが「馬鹿じゃないの?」と言っていたが、会場内全員激しく同意したと思う(褒めてますよ)

グッズとパンフレット

グッズもパンフレットも完売とのこと。
パンフレットはとてもいいと思った。
右近君の団七と「道成寺」の花子の写真が、これでもかこれでもかと出てきてそれはそれは美しい。まるで写真集の趣き。
まるで浮世絵を観るよう。

あらすじもわかりやすい。

グッズもいろいろと売られている。右近くんの人気がいかにうなぎのぼりなのかがよくわかる。

グッズのアイデアもいい。最近アクスタが流行りだが、今回の右近のアクスタは後姿まで入っていたそうで、なかなかそんなものはないと思う。

また、今までの自主公演の写真から、好きに選んでカレンダーを作るというものもあった。これはマイオリジナル右近カレンダーができるという素敵なアイデアではないか。

コロンブスの卵のような「なるほど」。でも今まで誰も思いつかなかったアイデアを次々と具体化する。
とにかく熱量の高い右近君。半端じゃない。

数年前には、自らリュックを背負って自主公演のチラシを配っていたのにすごい。

ザクっと感想をご紹介。

夏祭浪花鑑

大坂のヤンキーが、舅を殺してしまう話。(ざっくりしすぎ(;'∀'))詳しいあらすじは別稿で。

右近 団七もお辰も大変よかった。団七がきれいに決まりすぎていて、ほれぼれ。お辰は顔に鉄弓を当て、心意気を見せる。おつぎに「そんな顔を傷つけて、徳兵衛さんに嫌われないかい?」と聞かれて「惚れているのは、ここ(顔を指さす)ではなく、ここ(胸を指さす)でござんす!」とポンと胸を叩くところが見どころで、知っている客はみんなここを「今か今か」と待っている。原作の文楽にはない歌舞伎ならではの入れごとだ。
「ここでござんす!」と右近が威勢よく胸を叩くと、着物の内側についていたおしろいの粉なのか、ほわ~っと立ち上り、客が「ほ~っ」っとため息をついた。心の中で「待ってました!」と声をかけたいところだ。と思っていたら、渡辺保さんの劇評で「胸を叩いたらゴツンと音がしたのは、色消し」とあったので、なかなか難しいものだなと思った。

鴈治郎(三婦) 夏祭は大坂の芝居なので、上方の言葉が不自然だと全然よくなくなってしまう。それが、鴈治郎が幕開けから出てきて、がっつりと大坂の言葉で話してくれるので、違和感なく大坂の芝居に入っていけた。
また三婦という侠客がいいのよねえ。懐の深い三婦を、さらに明るく、まるまるとがっちりとした親分として描いてくれた。喧嘩もめっぽう強かった。

巳之助(義平次) これがすごくて。。出てきたとき、役者誰?巳之助じゃないの?と思ってなんどもオペラグラスを覗いて確認してしまったほど、顔がちがっていた。そして義平次という男のいやらしさ、品のなさ、強欲、団七に対するねじれた感情、ぎらつく感情、汗臭いを超えたすえたにおいはこちらまで匂ってくるような。

いやいやお見事でした。

種之助(磯之丞)大体この玉島磯之丞というのが諸悪の根源なのである。磯之丞のお父さん兵太夫に刑期を短くしてもらったという恩義があるものだから、団七ほかの皆さんはその息子である磯之丞を守るという妙な使命感を感じているのだが、磯之丞は、悪い奴にそそのかされて、遊び狂うおバカなのだ。その後、団七の世話で道具やに奉公したのに、そこでもまた色恋沙汰。道行までした挙句に、殺人事件にまで絡んでしまう。
何とか無事にと周りがおぜん立てをしても、あっけらかんとしていてちっとも成長しないし、周りがどんなに自分のために苦労しているかも気づかないのだ。目の前にきれいな人がいれば、ふらふら。そんな磯之丞、種之助があっけらかんと演じた。3回目かな?4回目か。案外数をこなしている。渡辺先生には、「琴浦とともに色気が足りない」とバッサリ斬られた。私はよかったと思うぞ。
琴浦は、恋人の磯之丞が、奉公先で心中騒ぎまで起こしたのだからぷんぷん怒っているのに、磯之丞って全然平気の平左なのだ、どこかねじが抜けている礒之丞。

菊三呂(おつぎ) 三婦の女房。よかった。お辰が三婦を訪ねてきたときに、「すわ、浮気か!」と心中穏やかならず妙な顔をして、心ここにあらずというところがおもしろかった。

おつぎは、繊細というよりは、どちらかというとおおざっぱなのに、それでもそれなりにいろいろ気を使って、琴浦を迎えに来た義平次に渡し、磯之丞を無事にお辰に託し、やれやれほっとしたのも束の間。琴浦はさらわれてしまい、なにぃ!と息巻く団七に腹をあてられて苦しむことに…。団七に悪気はないのだけれど。侠客の女房は大変である。

巳之助(徳兵衛) かっこよすぎの巳之助兄さん。これがそれほど時間もおかずに義平次から徳兵衛となって出てきたときの衝撃たるや。(最初、琴浦を拉致するときの義平次は吹き替えですね、多分)白塗りできっぱりと格子の浴衣。三婦とともに団七は柿色、徳兵衛が藍色のお揃いの浴衣を着て颯爽と出てくるところは、しびれる!義平次からのギャップもありしびれる!


千穐楽のカーテンコールではなんと義平次の扮装に、ご丁寧に天冠つけて出てきて、「金金いうから出てきたら、なんだ鐘じゃねえか」と言って、満場の爆笑を買った。夏祭のあと道成寺があったので、その間、義平次のまま待っていたのか、一旦着替えてお風呂にはいってまた義平次になったのか知らないけれど、すごいわ。

楽しませてくれてありがとう。

京鹿子娘道成寺についてはまたのちほど。