「初めての歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog

すばらしき日本の芸能、歌舞伎。初心者にわかりやすく説明します♪

鏑木清方展2022~明治時代の生活を細やかに描く。芝居絵もたくさん♪

とても素晴らしくて、2回観に行った。

私の印象に残った絵を中心にご紹介。

 

生活をえがく

過ぎし明治時代の生活をえがいた数々の絵。

 

東京は、関東大震災で壊滅的な打撃を受け、大きく様変わりした。関東大震災の前の時代、ことに明治時代を鏑木清方は愛し、昭和になっても明治時代のあれこれを思い出し、絵にしている。

鰯(昭和12年

鰯売りの少年を、家の中から呼び止める女性。家の外には、朝顔が巻き付き、その横を走っていく小さな子ども。すだれを通して、台所の様子が垣間見える。目の前の生活の一瞬を切り取ったような絵。今にも風鈴の音、パタパタ走る子供の足音、「いわし~」という少年の声、呼び止める声などが聞こえてくるようだ。

明治風俗十二ヶ月(昭和10年

毎月の風物詩を描くこの12枚続きの絵も、明治時代の生活をえがいている。

6月 金魚屋

昔はこんなふうに金魚を売っていたのか。大きな生け簀に金魚がたくさんいて、その生け簀に板が渡してあって、板に乗ったお姐さんが袖をまくって金魚をすくい取ってくれる。金魚に見とれる男の子は、パリッと糊がきいていそうな白いシャツを着ていてきっといいところのお坊ちゃんなのだろう。美しい弧を描いてスーっと逃げる金魚たちに見とれている。

8月 氷店

暑い日差しの中で、そこだけすっと涼風が吹いているかのよう。氷をしゃっしゃっとかいている音が聞こえてくるよう。着物の柄が細かくて素敵だ。この柄をもとにして染めた手ぬぐいもミュージアムショップで売られていた。

9月 二百十日

にわかに出てきた黒雲。風に舞う木の葉。「風が出てきたわね」というように不安そうに外を見上げる女性。なまあたたかな雨のにおいがしそう。

10月 長夜

生活そのものの瞬間。子どもは机に向かっている。本のページをめくる音。柱時計はカチコチ。ランプの元で、おばあさんは火鉢で何かあぶっていて、お母さんは縫物。さわさわと布を動かす音、ミチっと針が布を刺すときの音。小さな音が重なり合って、夜が更けていく。

12月 夜の月

雪が積もっている。車夫がお客さんに膝に温かそうなひざ掛けをかけている。客の女性は、顔も口も覆っていて、とても寒そうだ。車夫のむき出しの手は冷たいのだろう。赤みがかっている。

 

どの絵からもストーリーが見えてきて、そのまま一遍のお話が語られるよう。においも音も温かさも冷たさも感じられ、絵の中の物や人が動きだしてお話は始まっていく。

墨田河舟遊(大正3年)

とても大きな絵だった。写真、テレビ、映像ではなく、実際に本物をみることでわかるのが、絵の大きさ。圧倒される。

ドーンと右におおきく屋形船。中にはお姫様の一行が乗っていて熱心に楽しそうに操り人形を見物している。緑のすだれがかかっており、うっすらと中が見える。大きい絵だけれどもとても細緻だ。

その屋形船の上では、使用人?が作業。屋形船の周りにはスイカを売っている舟やら、網を打っている漁師やら、ほんわかとえがかれていて、のどかな情緒が感じられる。

 

続く「築地明石町」「浜松河岸」「新富町」3部作も、大きかった。

築地明石町

さすがのすばらしさ。40歳代かしら。浅葱色の小紋に紋付の黒い羽織、ちょっとだけ見える裏地の赤。鮮やかだ。ふっと後ろを振り返った姿が物憂い。鏑木清方さんは朝顔が好きなんだなあ。よく出てくる。足元に朝顔。背景にはうすぼんやりと船。

物語を描く

幼きころは来る日も来る日も物語を読んで絵におこしていたという清方。歌舞伎にも小さい頃から親しんでおり、明治33年22歳のとき創刊した「かぶき」の創刊号から挿絵や劇評を担当したのでたくさんの絵をみることができた。歌舞伎好きなら思わず足を止めずにはいられない。歌舞伎役者さんも見られたかしら。

芝居絵十二題(大正15年)

これがいい。サッと描いているけれど「あの、あの場面ね!」っとわかるやつ。

助六で、意休に煙管を差し出すところ(足の指にはさんで)や、鳴神上人が雲の絶間姫の介抱で、胸元に今にも手を入れんとしているところや神霊矢口渡で頓兵衛が娘お舟に斬りつけるところ、源氏店でお富に藤八がおしろいをつけてくれと頼むところなどなど~。

どうです?読むだけでワクワクしませんか?

これらが、「築地明石町」みたいな画風ではなく、ぼかしながらささっと描かれていてとてもすてき。

京鹿子娘道成寺 (昭和3年)12枚

花子が道成寺に現れて、木戸からそっと覗いているところから始まり12枚。花笠の赤がグラデーションで美しい。清方さんは字も女性のような美しい字を書く。

本朝二十四孝 十種香の段 八重垣姫 勝頼 濡衣(昭和9年

こちらもよかった。美しい勝頼、勝頼の絵を見て拝んでいる八重垣姫、きりっとした濡衣。

 

展示では、時系列で並んでいたわけではなく、「生活をえがく」「物語を描く」「小さく描く」といったカテゴリーに分けられていたので気づかなかったが、改めて描かれた時期を書いてみたら、私の好きな鏑木清方の絵は、(ほかにも好きな絵は書ききれないほどたくさんあったけれど)主に大正から昭和初期にかけての作品のようだとわかったのもおもしろかった。あと、あれもよかったな~。あれ。と楽しく反芻中。

 

東京での展示はすでにおわってしまったけれど、現在は京都国立近代美術館で7月10日まで開催されているので行かれる人はぜひ。おすすめです。

 

東京国立近代美術館は周りにいろいろあるので、お散歩も楽しい。

1回目は桜の季節だったので、千鳥ヶ淵から千鳥ヶ淵墓苑へ。

千鳥ヶ淵墓苑

 

2回目は、北の丸公園へ。

 

その後、GWに神楽坂周辺を散歩していたら、なんと鏑木清方の住居跡の公園があって、驚いた。