「初めての歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog

すばらしき日本の芸能、歌舞伎。初心者にわかりやすく説明します♪

弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)

人気演目、白浪五人男!
今までにもブログでも紹介していますが、バラバラしているのでまとめました。

 

■あらすじ

「浜松屋店先の場」←2022年5月上演します♪ 
南郷力丸と弁天小僧菊之助が、浜松屋にゆすりに入るも失敗する 

「浜松屋店先の場」に至るまでのお話もありますが、カットします。いろいろな出会いがあって、5人の盗賊団ができました。5人とは、日本駄右衛門、南郷力丸、弁天小僧菊之助、赤星十三郎、忠信利平です。

悪党5人組のうちの二人が浜松屋にゆすりに入ります。南郷力丸と弁天小僧菊之助です。お姫様と連れの若い者といった風体です。
ゆすりがうまくいったかに見えたときに、奥から玉島逸当という侍が出てきて、お姫様が男であることを言い当て、正体をばらされてしまいます。
2人は、居直ったものの、しょうがなく、帰っていくのでした。

「蔵前の場」
弁天小僧菊之助の実の親とは?

カットになることが多い場ですが、ここがわかっていると、後がスムーズに理解できます。

玉島逸当にお礼をするために幸兵衛がもてなしていると突然玉島逸当が「有り金全部出しやがれ」と刀を振りかざします。実は玉島逸当は、日本駄右衛門でした。弁天小僧や南郷力丸もグル。浜松屋に玉島逸当を信用させ、夜に仲間を手引きして強盗に入るためにとった芝居だったのです。

ところが話しているうちに、幸兵衛と宗之助親子は実は本当の親子ではなく、幸兵衛の実の息子が弁天小僧菊之助であり、日本駄右衛門の実の息子が宗之助ということがわかります。

真実がわかって、日本駄右衛門は、実の息子宗之助に「幸兵衛を実の父親だと思って孝行を尽くし、もし自分が死んだら花でも手向けてくれ」と頼み、幸兵衛は実の息子菊之助に、実は自分は元武士であったことを告げ、紛失した主家の重宝「胡蝶の香合」を探してほしいと頼むのです。

(最初の「初瀬寺」「神輿ヶ嶽」をカットしてしまったのですが、実は弁天小僧菊之助は、「胡蝶の香合」を持っています)

親子の再会を果たした4人でしたが追手が迫ってきていました。

 

「稲瀬川勢揃の場」←2022年5月上演します♪ 
追い詰められた5人がそろい踏み

捕り方に追い詰められつつ5人がきれいにそろって、名乗りをあげます。

大概、上演されるのは「浜松屋店先の場」と「稲瀬川勢揃の場」のみですが、その後、どうなるのでしょうか。

極楽寺大屋根立腹の場」
弁天小僧菊之助の最期

胡蝶の香合を幸兵衛に届けたかった菊之助ですが、残念ながら捕り手に阻まれてしまいます。立ち回りを演じているのは、極楽寺の屋根の上。そこから、大切な重宝「胡蝶の香合」を落としてしまい、観念して立ちながら切腹をして果てるのです。

極楽寺山門の場」
日本駄右衛門、下っ端をやっつける

日本駄右衛門のもとに、手下が来て菊之助の最期を伝えます。ところがこの手下、実は日本駄右衛門を追っている青砥左衛門の手下でした。日本駄右衛門に斬りかかりますが、そんな下っ端に負ける駄右衛門ではございません。

「滑川土橋の場」日本駄右衛門VS青砥左衛門

山門の下で、青砥左衛門が登場。胡蝶の香合を拾い上げ、日本駄右衛門を見逃します。

■見どころ

七五調の流れるようなセリフ回しとかっこよさ!

「浜松屋店先の場」の見どころは、何と言っても河竹黙阿弥の流れるような七五調のセリフが次々と繰り出されるところ。お姫様のふりをしていた弁天小僧が、ばれて、「兄い。もうばれちゃー、いられねー。もうしっぽを出しちゃうぜ」とスパッと男に戻って居直るところが、すばらしい。尾上家伝統の芸ですね。

お姫様のときはかわいらしい声、手、爪なのに、男になったとたん、どすの効いた声になり、にょっきり伸びる腕に足。

見逃し厳禁ですよ。南郷力丸との息の合ったところも楽しいです。

勢ぞろいの場は、スーパー戦隊の原型

一人ずつの出囃子ならぬテーマミュージックが違うので、役柄に応じたお囃子などの下座音楽にも耳を傾けてくださいね。衣裳にもご注目。なんでこんな格好しているんだよなんて茶々を入れずに、美を堪能してください。粋だよね。

勢ぞろいの場での衣裳も凝っています。

弁天小僧:名前にちなんで、菊模様

忠信利平:神出鬼没を表す雲竜の柄

赤星十三郎:朝のときを告げる→明け方にちなんで、鳥と星

南郷力丸:荒くれ物の象徴であるいなづま模様

日本駄右衛門:「身の生業も白浪の沖を越えたる夜働き」の生活を続けてきたことを象徴する白浪の裾模様。

すべてツラネのセリフの中に関連したものが衣裳に入っているんですね。

 

もっと詳しくはこちらに載っています。

www.kabuki-bito.jp

あの衣裳は、誰がいつあつらえた?

ところで、この衣裳いつあつらえたんだよ!と突っ込みたかった人。実は芝居の中で答えが出ています。

松屋の最初の場面、最初に出てきて、ワーワーいちゃもんつけていなくなった男。覚えていますか?

あれは、悪次郎と言って日本駄右衛門一味の仲間です。

何を、ワーワー言っていたかというと、注文した友禅の五枚の小紋を催促しに来たんです。あの小紋は、浜松屋が作ったんですねえ!

さらに、蔵前の場の最後に悪次郎が出てきて、注文しておいた小紋を受け取りますよ。

悪次郎はその後も出てきます。

極楽寺大屋根立腹の場」はセリフは少ないけれど見せ場たっぷり

迫る追手から逃げて、各自バラバラに。立腹の場では弁天小僧の戦いに焦点を当てます。切り捨て、切っては捨て、切っては捨て、見得を切り、くるりと回って、また追手を落とし。無駄のない動き、手、足、肩、視線。

立腹の場で弁天小僧菊之助から胡蝶の香合を奪おうとして斬られてしまうのが、悪次郎です。仲間を裏切ったんですね!

極楽寺大屋根立腹の場」「極楽寺山門の場」では、それまでの幕ととても違う点があります。それは、セリフがほとんどないこと。あれほど朗々と美しいセリフを聞かせていたのが、今度はセリフはほとんどなくて、立ち回りで見せる、魅せる、魅せる!もはや瞬きする間もありません。

がんどう返し

がんどう返し(どんでん返し)と言われる大仕掛けが見ものです。弁天小僧が腹に刀を突きたてると、屋根がぐぐっと後ろに傾きます。90度、後ろに傾いて、弁天小僧は我々の視界から去っていき、今度は下から桜の山が現れ、山門がせりあがって来るのです。

これは、ただ舞台が下からせりあがって来るだけとは違います。90度後ろに下がって、少しずつ屋根と弁天小僧の姿が視界から消えていくのは、たとえば、今映画などでドローンやヘリコプターが撮影するような、視線なんです。

屋根の上にいた主人公を空の上から見ていたカメラが、グーンと下に降りていく。鳥のような視点で、何秒かのちに、主人公を下から捉える。そういうカメラワークっていくらでもあると思うのですが、それなんですよ。

尊王だ、攘夷だって時代に「どうやったらお客をびっくりさせることができるだろうか」と朝から晩まで、それしか頭になかった人たちがいっぱいいたんでしょうねえ。すてきです。

極楽寺山門の場」は「楼門五三桐」のパロディ

山門の場は、「楼門五三桐」というしばいのパクリです。そこに出てくるのが青砥左衛門。「楼門五三桐」では石川五右衛門が屋根の上から、「絶景かな絶景かな。そこへ下手に真柴久吉が現れる。五右衛門がぴしゃっと手裏剣を投げると、はっしと久吉がその手裏剣を受け止めるという芝居なのですが、構図がそこと同じです。(手裏剣はないです)

最後に出てきた青砥左衛門藤綱ってだれ?

この青砥というのはこの演目の本外題『青砥稿花紅彩画』(あおとぞうし はなの にしきえ)の青砥です。裁判官ですが、川に落ちた10文銭を探させるうちに胡蝶の香合を拾い上げました。藤綱は「窮鳥懐に入るときは、漁師もこれをとらず」(追い詰められた鳥が懐に入ってくれば漁師もこれを捕ることはできない)ということわざを出して日本駄右衛門を見逃すのです。

いやあ、本当に面白いですね!

 

概況

弁天娘女男白浪は、河竹黙阿弥作。文久2年(1862年)作。当時19歳の5世尾上菊五郎が演じて大当たりをとり、今日まで人気の演目として上演されています。

1862年坂下門外の変和宮降嫁、生麦事件なんてあった年です。桜田門外の変は、その2年前でした。そんな世情不穏なころにこの素晴らしい舞台ができました。