天一坊大岡政談も、いよいよ中日を過ぎてますます盛り上がっているようです。
コクーン天日坊と、今回の天一坊大岡政談を見て違いなどを楽しんでいましたが
さらに、お三のキャラでも、前回の天一坊大岡政談と今回の天一坊大岡政談では違いがありました。
お三とは。
お三というのは、言わずもがな。
むすめ沢が将軍吉宗のお手付きとなり、子を宿し、吉宗のお墨付きまでもらったものの、残念ながら子どもとともに亡くなってしまいます。
今まで17年間、誰にも言わなかったのに、そのことを法澤にポロリと言ってしまう。そして法澤は、将軍の御落胤を偽って天下を取りにいってしまうんですね。
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そういう流れですから、お三はすぐに殺されてしまうものの重要なキーパーソン。
ぼろぼろの着物を着て、腰は曲がり、い汚い。今回は笑三郎さんです!
殺され方はコクーンと今回ではだいぶ違いました。
コクーンでは柱を使って、ギリギリ~と首を押し付けるように殺し、竈に首を突っ込む。かなり残虐性が出ているシーンでした。
一方、今回の天一坊大岡政談は、手ぬぐい?細い紐で首を巻き付けるところで幕となりました。
大岡政談の方が、ずいぶん品よくまとめているのかなと最初は思ったのですが、そうではなく、それはあくまで時間カットのための演出変更だったよう。
平成13年6月歌舞伎座の天一坊大岡政談では、菊五郎が柱で「てこ」のようにギリギリと首を押さえつけ残虐に殺していました。(これは映像で拝見)
さらに従来の天一坊大岡政談が、コクーンとも、今回の大岡政談とも違う部分は、お三のキャラです。
なんと、お三は、法澤の最初の女だったのです!
平成27年の台本を確認したところ、お三はこんなことを言っています。
お三「しかし、法澤さん、二人きりでばーさんはよしとくれ。お前を男にしたのは…」
法澤 「これまたそれをいう」
お三「おお、あやまったあやまった。しかし酒のおかげですっかり身体がぬくもった。早うふとんであたたまろうじゃないかいな」
法澤「今夜は酒を届けたら、すぐにもどれと師匠のお言いつけ。ぼつぼつといなねばならぬ」
法澤、及び腰ですね(;^_^A
平成27年の法澤は菊之助、おさんは萬次郎。萬次郎さんの色気婆、目に浮かびます。怖いわあ!
コクーン天日坊でも「ほんにこなたのようにかわいいことを言うものはほかにないのう」とは言っていますが、そこまでの関係は感じさせません。
さらに下って、平成13年の大岡政談では、法澤の菊五郎に対してお三は東蔵。東蔵さんだとちょっぴりかわいげがあっちゃったりして、おぞましさは軽減されるかもしれませんね。
ところで平成13年の大岡政談では、菊五郎が法澤=天一坊 のほか、池田大助まで演じています。池田大助と言えば、大岡越前守が時間切れで、まさに切腹せんというところに駆け込んできて、天一坊が偽物である証拠をもたらす救世主! これはいかに歌舞伎役者の早替わりがすごいといっても同時に舞台に上がることはむりでしょう。
当然そこの演出は変わっています。
このように、同じ演目でも役者がかわり、演出がかわり、脚本がかわることで、見る印象もずいぶん変わるのが、歌舞伎のだいご味の一つですね。