みなさんこんにちは!今年も東京では、歌舞伎座、国立劇場、新橋演舞場、関西では南座、大阪松竹座と無事に初日が明けました。めでたいことです。
▲国立劇場
▲歌舞伎座
私も、今週歌舞伎座の2部と国立劇場にて観劇。有り余るパワーをいただいて帰ってまいりました!
今日は国立劇場について話したいと思います。
国立劇場の歌舞伎は、毎年1月、3月、6月7月、10月11月12月と行われます(年による。昨年は12月はなし)
歌舞伎座との違いなどは詳しくはこちら
お正月の国立劇場
今日は毎年の1月の国立劇場についてご紹介します。
1月の国立劇場は、菊五郎劇団が主宰します。音羽屋は普段菊五郎劇団と銘打っているわけではないのですが、1月だけはなぜか「劇団」。気合が入っています。
毎年、通し上演。そこに時事ネタなどが盛り込まれ、初春の初芝居にぴったりの盛り上がる公演です。お正月の7日までは、獅子舞がロビーに出て踊るというのが恒例でした。みなその獅子舞を囲み、お祝儀を投げ、お獅子に頭を嚙んでもらって、その年の幸せを祈る。そんな昔ながらの華やかな演出がありました。
残念ながら、コロナ禍で昨年は中止。今年は舞台上で獅子舞が行われました。やっぱりロビーでみんなで囲んでワイワイやりたいけれど、ともかく獅子舞が見られたことがめでたい。来年こそは!頭かじられたい!
コロナ前は、手ぬぐい投げなどもあったのですが、コロナ禍で中止。その代りパンフレットを買うと、抽選券が入っていて、「あたり」だと手ぬぐいがもらえます~。
「チリチリン」「チリチリン」幕間に時々のどかに響く鈴の音は、アタリが出たときの音でした。そして今年私当たりました~。うれしい。
今年は南総里見八犬伝
さて、今年の演目は南総里見八犬伝でした。
南総里見八犬伝と言えば、1973年~1975年までNHKの連続人形劇で新八犬伝をやっており、私もみておりました。軽快な坂本九ちゃんのナレーション、怖い玉梓の怨霊。すっごく怖い扇谷定正。そして「さもしい浪人さもじろう」というフレーズ。くらいしか覚えていませんが、「すごく面白かった」ということは覚えています。
仁義礼智忠信孝悌という言葉がするりとでるのも、あのドラマのおかげでありましょう。
その南総里見八犬伝。原作は滝沢馬琴で、なんと28年の年月をかけて106冊で完結したというからすごい。それを3時間にまとめたのが今回の南総里見八犬伝です。
最初はプロローグとして、それまでのお話が説明されました。菊之助のいいお声を堪能できます。とても簡潔でわかりやすくよかったです。
どんなお話?
内容は、不思議なあざを体のどこかに持ち、字の書かれた球をもち、名字の一つに「犬」が入っているという共通点をもつ8人の剣士たちが、里見家の仇、扇谷定正をうつというお話です。
見どころ
八剣士
八剣士は、それぞれ個性的ですし、ずらりと並ぶとまあかっこいい。さながら白波五人男のようでもあり、小さな子どもたちならレンジャーものを見るようなかっこよさがあります。チャンチャンバラバラは、随所にありますし、小学生が見ても面白いことはまちがいなし。
そういえば、私が観に行ったときに、菊之助のお子さんの丑之助クンとお嬢さんおふたりもいました。丑之助クン、ただでさえ小学生男子が興奮するようなおもしろい八犬伝なのに、一番美しい剣士がパパだなんて、興奮しすぎて夜も寝られないのではないかと心配です(余計なお世話(;'∀'))
舞台が美しい
五幕七場の芝居でしたが、場面が変わるごとに、目が覚めるようにガラリと背景が変わってとても美しい。ことに二幕目の「滸我足利成氏館芳流閣の場」は、芳流閣の屋根の上。やはり白波五人男を思い出します。グレーの瓦の上で花四天たちを相手に堂々と戦う菊之助の美しさよ。来年の国立劇場のカレンダーはこれで決まったね。
三幕目の「行徳古奈屋裏手の場」では一面の星空です。キラキラ光って美しく、おや?
水面すれすれのところも光っていると思ったら、それは蛍なのでした。
四幕目馬加大記館対牛楼の場になるとまたガラリと変わって朱の柱も鮮やかな定正一派の館です。
いかにも悪い奴が権力を握って、財力に任せて作ったお屋敷という感じ。そこに、哀れ磔になっている犬田小文吾。剣の舞を得意にする女田楽師に、バラバラにされてしまうのかと思いきや!
ハラハラドキドキの展開が続きます。
そして大詰めは、一面の桜。
どの場面も鮮やかで、華やかで、楽しい。
劇団の真骨頂は立ち回り
これです。劇団の真骨頂。ふだんの歌舞伎座での芝居は、様々なお家の人たちがその時の座を組んで演じていますが、正月の劇団は尾上菊五郎軍団。名前も「尾上」とか「音」のつく人多め(笑)。息もピッタリ、気合も十分。
しばらく大勢での立ち回りなどできなかった人たちもいるでしょうから、もう半端な気合じゃありません。
序幕では刺客、二幕目では捕り手、三幕目ではまた捕り手、四幕目では刺客、大詰めでは軍兵。多くの人がお役をダブっていますから、大変ですね!楽まで気を付けてけがのないように祈ります!
次から次へとガンガン出てきて、「やあやあ」「やあ」「やあ」「やあ」「やあ」槍を付き、刀を振り回し、それを華麗にさばいていく剣士たち。ドボンドボンと屋根から川に落ちます。
トンボもかえるかえる。ポンポンかえります。クルクル回ります。
花四天の衣裳はいつも美しいですが、今回黒い刺客も、赤の帯をつけていてなかなかしゃれている。すてきです。楽しいです。
芳流閣の屋根の上での刺客たちとの立ち回りもいいけれど、なんといっても犬塚信乃が刺客たちを蹴散らかした後に出てくる犬飼現八との闘い。二人は仲間同士であることを知らずに戦う場面がとんでもなく素敵です。
かっかっかと附けに合わせて見得が決まる決まる。伸びる足、手、反った美しい指先、視線。これでもかこれでもかといわんばかりの、華麗な立ちまわりにうっとりです。
八剣士がそれぞれお役にぴったり
菊五郎は、寂寞道人 実は犬山道節 という役どころ。ドロドロドロとともに出てくるときの存在感といったらない。いつまでもお元気でいてください。
美しい菊之助は美しい犬塚信乃。どこを見ても美しいので文句ありません。凛々しい姿も魅力的ですが、川から落ちて大けがをし、療養中で杖をついている姿も哀れを誘います!もちろん最後はまた凛々しくなって、他の仲間とともに本懐を遂げるのです。
松緑はがっつりとした犬飼現八。情の深い現八です。
彦三郎は、お相撲さんもどきの犬田小文吾。しばらく見られないと思って悲しんでいるめ組の喧嘩のお相撲さんを思い出して、うれしい。ぶんぶん柱をぶん回してどすこ~いと大暴れ。磔の刑になっていても、ぷくぷくしていてなんだかかわいい。二つの乳首が真ん中に寄りすぎのような気がして、気になりました(笑)。
時蔵は女田楽師且開野、実は犬坂毛野。シャキンシャキンと1本の剣を振り回していると、あら不思議、いつの間にやら2本になって、磔の小文吾に近づき、なで斬りにするかと思いきや助けるんだけれど、剣の舞がどこかコミカルに楽しく感じたのは私だけかな。やんややんや~と声をかけたくなってしまいます。
そしてもう一人、少し小さくて美しき人。それが左近演じる犬江親兵衛。
左近君は、松緑の長男で、私はとても注目している一人です。お父さんである松緑と、花道で絡むところはとても美しくて決まっていて、ちょっと胸が熱くなってしまった。左近君、おじいさんの辰之助に似ているんですよ。。楽しみで楽しみでたまりません。
左近君の親兵衛が花道を去っていくのを見る現八松緑はちょっとほっと口から息を出し、「なんだあいつ。無事に行ったか」という体で見届けて、最後自分も花道を去っていくのですが、あそこを含め、花道の絡みはちょっと粋な演出でしたね。
梅枝は浜路。梅枝ファンとしては、ちょっともったいない、そんなに早く殺しちゃいやという感じです。もっと出てほしかったなあ。
お年寄りから子どもまで
誰が見ても楽しめる。国立劇場の南総里見八犬伝。まだ歌舞伎を観たことがない人も、これを機会にぜひ歌舞伎を楽しんでほしいなと思います。
実際、お子さんも多く観に来ていて、楽しんでいました。子どもの姿を観客席に見ると、うれしいですね!
上演スケジュール
12:00開演
序幕
12:00~13:20
幕間 35分
2幕目
13:55~14:25
幕間10分
3幕目
14:35~14:50
幕間15分
4幕目・大詰め
15:05~15:35
です。開演前に軽くお腹に入れておき、最初の幕間でご飯を食べる感じ。
無料休憩所は2階と3階で、お弁当を買ってそこで食べられますが、定員が少ないのですぐ満員になってしまいます。だからといって、芝居の途中に席を立って休憩所の席取りに走らないように!(そういう人がいたらしい)
食事処、売店はあります。
私は遅めの朝食を摂っていき、簡単なサンドイッチを持参して、1時半の幕間でさっとすませました。35分あるので余裕をもって食事を楽しみたければ、食堂がおススメです。
大食堂「十八番」はお休みの日もあるようです。チェックして。
ではでは。ぜひ楽しんでみてくださいね。
私が行った日、雪が降りました。幕間の時に外を見たら一面雪景色でビックリ!
美しかったけれど、寒かったなあ。