わかりやすく楽しく、後半は人形ぶりの演出も鮮やかなので、子どもにも外国の方にもおすすめできる演目です。
文楽の「伊達娘恋緋鹿子」を脚色していますが、前半は、グッと砕けた内容にしました。
人形ぶりというのは、義太夫狂言で人形の動きをまねて演じることです。ちょっとカクカクした動きがユニークですが、文楽人形より人形っぽいですよ。文楽人形はあんなにカクカクしていなくて、もっと人間っぽいですから(;^_^A
人間がわざと人形っぽく演じるのが人形ぶり。人形が人間ぽく演じるのが文楽人形です!
人形ぶりは、文楽人形の真似ではありませんので、文楽人形ってあんなにカクカクしているの?なんて避けないで、ぜひ一度見てくださいね(これを言いたかったw)
ばっちり予習をしておかなくても大丈夫ですけれど、ざくっとおさえておきましょう。
登場人物
お七 左甚五郎の彫った天人にも似ていると言われる八百屋の美人娘。おっとりした性格で何をするにもスローなのだが…。寺小姓の吉三郎にぞっこんほれ込んでしまい、結婚したいと言い出してみんなをビックリさせる。
お杉 お七についている下女。しっかり者だからお七はすっかり頼りきり。
吉三郎 お七がほれ込む寺小姓。実は武士で、紛失したお家の重宝「天国の短刀」を探している。(こういうの多いですよね(;^_^A)
紅屋長兵衛 通称紅長(べんちょう)。明るく常に場を盛り上げる人気者。お七を小さな時からかわいがっていたからその幸せをひとしお願っている。「べんちょう」という通称も「紅」と「長」からお七がつけた通称。
おたけ お七の母。吉三郎との結婚には反対。釜屋武兵衛に借金があり、お七には借金の肩代わりに釜屋に嫁いでほしいと思っている。
長沼六郎 源範頼の家来。源範頼は、お七を愛妾に望んでいるため、お七を連れに来た。
釜屋武兵衛 借金のかたに、お七をもらうつもり。
あらすじ
吉祥院お土砂の場はドタバタラブコメディー
寺小姓吉三郎にほれ込んでいるお七。お七をもらい受けたい釜屋武兵衛と長沼六郎(範頼の使いとして)。そして、お七にそれほど興味のない吉三郎。
紅長はじめ周辺の人たちは、みんなお七の味方なので、長沼六郎や武兵衛にはお七を渡さないように、居所を言わなかったり、お七を隠したり、一方で吉三郎とお七はくっつけようとあれこれ画策するわけです。
欄間に飾ってある天女にお七が似ているものだから、欄間に隠して、まんまと敵の目をあざむいたりします。(バカバカしくて楽しい)
一方、吉三郎は、頭の中はお家の重宝のことで頭がいっぱい。お七のことは何とも思っていませんでしたが、紅長の作戦が当たり、お七とラブラブに。
ドタバタついでに出てくるアイテムが「お土砂」です。振りかければ、人の体も心も柔らかくなるというお土砂、ついつい楽しくなって、あっちでパラパラ、こっちでパラパラしてしまう紅長です。紅長役の役者はいつも楽しそう!。前回は猿之助、今回は2003年以来の菊五郎~!
四ツ木戸火の見櫓の場は、ああ!お七ちゃんが…!
天国の短刀のありかを、お杉が突き止めました。これを吉三郎に届けたい!しかしもう町の外には木戸が閉まっていて出られません。火の見櫓の太鼓を打てば木戸は開きますが、それは禁じられていること。
ここから人形ぶりとなって、人形遣いにあやつられます。
お七は禁を犯し、櫓に上り、太鼓を打ちます。そしてお杉から短刀を受け取り、走っていきます。最後花道ですっころび、人形から人間に戻って駆け出していきます。
見どころ
楽しいドタバタ。
前半の見どころは、楽しいドタバタ。紅長が、楽しく場を盛り上げてくれます。みんなお七の味方なので、ほんわかします。
お七と吉三郎が美しい
やっぱり、これは美しい人にやってもらわないと!
「和製ブレイクダンス」の人形ぶりが見事
後半の見どころは、人形ぶり。
今までなんでも「どうしよう、どうしよう」といつも人任せで自立していないお七だったのに、恋のパワーってすごいですね。
前半ぽわーんとして、みんなに愛されていたお七ちゃんが、後半ガラリと人が変わってしまうと不自然なので、あえて人形にしているのかな?
文楽のように口上が入り、お七ちゃんがお人形になってしまい、二人の人形遣いにあやつられてそこには重力さえ感じさせません。息もピッタリあって見事です。文楽人形の女性は足がありませんから、人形ぶりでも足は見せないのがお約束です。どうかな?注目してみてください。もちろんそんなところに注目せずに、全体の美しさを見てもそれはそれでOK!
今回、尾上右近クンがお七を演じますが、9月24日放送のNHKFM「KABUKI TUNE(カブキ・チューン)」で、そのお七ちゃんについて語っていました。
もちろん文楽人形の映像はチェックしているけれど、あえて文楽の人形師ではなく、DA PUMPのKENZOさんに相談するそう。人形の映像と、自身のお稽古映像を見てもらい、人形の動きをどう踊りに取り入れることができるのかアドバイスをしてもらうとのこと。これはまた楽しみですね。人形ぶりを「和製ブレイクダンス」と言っていましたよ!確かに、そう言われるとそうかも。
お楽しみに!