さて、義賢最期である。
くわしいあらすじとみどころはこちらを見ていただくとして。
2021年8月3部の「義賢最期」を奇数日と偶数日に鑑賞した。
義賢ー幸四郎
義賢は、初役で幸四郎。本当は昨年の春「四国こんぴら歌舞伎大芝居」で襲名披露興行の演目として予定されていたが、中止となった。「その分今回できるということはとてもうれしい」と語っている。
https://www.kabuki-bito.jp/news/6885/
この狂言を復活させ人気作品とした仁左衛門から直接教えを請い、1年余か月の期間をおいての挑戦。まさに臥薪嘗胆の義賢の如く、エネルギー全開である。みなぎるパワーを感じた。
小万ー梅枝
夫に会いに来たワクワクかわいい嫁から、後半敵をバッタバッタと討ち捨てる最強女子を見事に演じた。ほほほとうち笑って、「百にも千にも勝りて万と言われし女」と見得するところなんて、かっこよすぎてしびれちゃうほど。
スケベな顔で寄ってくる男を一蹴し、大勢でやりをもって「やー」「やー」と襲撃してくる男どもをなぎ倒し、なお源氏の白旗を守るという使命を受けて、立ち上がる小万。
しかも、子どもを世話して、ととさんをサポートして、葵御前を守って優しく、夫を想っていじらしい。義賢を最後まで看取って、とても芯が強い。最強の女ヒーローだ。この話のあとの実盛物語でさらにそれが明らかになる。
いやあ。ほれぼれしますね。宝塚でもやってください。(しつこい)
以前浅草で見たときの小万は新悟だった。新悟は、この時の小万役がとても印象的だった。いろいろなお役を見てきたが、一番よかったのではと思っていたのだが、要するに小万は、女方を美しく凛々しく見せる、女方にとってうれしいお役なのかもしれない。特に背の高いすらっとした女方には、はまる。
太郎吉ー小川大晴くん・小川綜真くん
今回、子役太郎吉は梅枝の長男の大晴(ひろはる)くん(奇数日)と歌昇の長男の綜真くん(偶数日)。
大晴くんは、5歳。昨年11月の国立劇場で「彦山権現誓助剣」で初お目見え。この時ものすごくしっかりしていてびっくりしたので、今回はすでに先輩の風格もあり、堂々としていた。綜真くんも半年遅れの5歳。お顔ががっちりしていて、すごくかわいい。頼もしい。
余談。浅草でのエピソード
以前浅草で見たときは、義賢が松也で、これもよかったのだがちょっと忘れられないことがある(笑)。
前から4番目のどセンターという良席で、すごいド迫力だったのだが、私の横にいたおば様が、ずっと寝てた。てか、本当に最初から最後までずっと寝ていた。
私も歌舞伎を観ながら寝てしまうことはまあまああるので、寝ていたくらいで驚くことはない。寛容です。
「ああ、疲れていたんだろうな」とか「楽しみにしていたんだろうに、肝心なところで寝ちゃって悲しいだろうな」とか思ってとても優しい気持ちで生ぬるく見守るのだ。(イビキかいたら怒るけど!)自分も悲しみにくれることがあるからね!
しかし、前から4列目でセンターブロックで「義賢最期」の最初から最後まで寝るというのは、さすがに驚いた。
100歩譲って、前半にトロンと眠くなるのは、まあわかる。
しかし、前半だけではなく、後半になっても!
松也が討たれて血だらけになって出てきても!
ドンチャンドンチャン、ほら貝と陣太鼓が響いても!
戸板倒しをやっても!
仏倒しをしても!
で前から4列目でセンターブロックだから、役者さんからも絶対見えていたはず。
私は松也がおば様を意識していたのを感じた。おば様を見てたもん(個人の感想です)
絶対、俺の演技で目覚めさせてやる!これでどうだ!さあどうだ!
とますます演技に力が入っていくけれど、戸板倒しをど真ん前でやろうとも、スカー。蝙蝠見得から仏倒しをやろうとも、スピー。というわけでとにかく一度も目覚めなかったのだ。
終わって幕間になったら、急に目が覚めてお土産買っていました。
松也、何気に敗北感。。もし松也に聞いたら
「あ~。あのときね~。覚えてますよ~。なんとか演技で起こしてやろうと思ったんですけれどね~。ダメでしたね~。ははっ」というのではないかなと。
そんな思い出の「義賢最期」でした。
さて、そんな松也さん。昨日「挑む」の初日が無事あけたようですね。SNSを見る限りとっても好評のようです。おめでとうございます。皆様ご無事で最後まで走り抜けられますように!
行きたかったな~~~。