「初めての歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog

すばらしき日本の芸能、歌舞伎。初心者にわかりやすく説明します♪

松本で観る『木下蔭狭間合戦』松本その2

今回松本に行った目的は、人形浄瑠璃文楽『木下蔭狭間合戦「竹中砦の段」』を観ることです。

木ノ下裕一さんが昨年秋にまつもと市民芸術館の「芸術監督団」に就任。
今年度は参与として活動し、令和6年4月から「芸術監督団」の団長として、演劇部門の芸術監督に就任するとのこと。

今後、松本では興味深い公演がいろいろ観られるかと思います!その最初の期待大の公演でしょうか。
勘十郎、錣太夫、藤蔵というキャストも豪華すぎて、行かない手はありませんでした。

公演は25日のみ。3部構成。
1部は木ノ下さんの解説。
2部がいよいよ文楽
3部は、アフタートーク。それぞれ部の間には15分の休憩が挟まれ、文楽初めての方にも無理なく楽しめる構成でした。

解説は、木ノ下さんの真骨頂ですから今回もまた楽しく。
文楽の楽しみ方から演目説明まで微に入り細を穿ち、漏れなく丁寧です。
今回とても感心したのは、人形遣いさんの説明の時のこと。

これは、こんなふうに遣っているんですよと、三人遣いの説明はよく観賞教室などでもやることです。でも一味違ったのは、そのあとで、人形なしで三人で動いて見せたんです。こんな動きを見るのは私も初めてだったので、びっくり感動。というのは、とても三人の息があっていて流れるように美しいんです。踊っているようでした。人形遣いさんたちはやりにくかっただろうけれど。

もう一つ、感心したのは字幕です。文楽では字幕がスクリーンに出ますが、今回は、「ここ重要!ポイント!」というところにセリフの字幕の上に字体をかえて、木ノ下さんの一言が入ったのです。その数20ヶ所くらいでしたか?

【ここ大事!木陰に、義龍が隠れている!】
なんて一言があると、ハッとしますね。

後から思えばコロンブス的発想ですが、どちらもとても良い。
エアー人形遣いは、これからぜひ鑑賞教室などでも取り入れてほしいと思いました。字幕も親切。

第2部はいよいよ文楽。3年前に京都で87年ぶりの公演となった『木下蔭狭間合戦』の再演です。
ガッツリ時代物、しかも齋藤義龍と小田春長との戦にそれぞれの軍師、竹中官兵衛と此下当吉が虚々実々の騙し合い、そこに官兵衛の娘と小田方の家来左枝犬清との恋あり、親子の情あり。木ノ下さん曰く「前菜からステーキガッツリ、その次がまた焼肉で(大意)」というようなハードな演目でした!

今回、観客のなんと8割近くが初めて文楽を観るとのことでしたが、熱い舞台には終演後に拍手喝采でした。
特に、これは長く上演されなかった理由でもあるのですが、切れ目なしに続くので太夫が変わるタイミングがないということで70分通しで語らないといけません。これを錣太夫さんと藤蔵さん、がっつり熱演でした。

3部では、アフタートーク

木ノ下さんを司会に、人形遣いの勘十郎さん、太夫の錣太夫さん、三味線の藤蔵さんのトークが楽しく盛り上がりました。
途絶えていた作品をもう一度上演するというのは、簡単なことではないのですね。勘十郎さんの師匠でも1歳の時に上演されたきりですから、誰も聞いたことがありません。幸い曲は残っていたそうで、ラジオで残っていた音源や、語る人ごとに違う語り方をひとつずつ「これはこうやった方がいいだろう。こっちはこの人のやり方の方がいいだろう」とひとつずつ取捨選択して再度作り直す地道な作業があったそうです。

また、どういうところが難しいのかという質問に対しては、意外と静かに抑えるところが難しいということを錣太夫さんも藤蔵さんもおっしゃっていました。我々観客は、バリバリバリと激しく語り、つま弾くところが難しいのではないかと感じますが、そうではないと。
特に最初の部分は、前段からのつながりを観客は知りませんからその空気を伝えるように語らなければならず、むずかしいそうです。
勘十郎さんも「今回はじっとしていなければいけないところが多くて、動きたかった~。注進(戦況報告をするご注進が派手でした!)がうらやましかった~」。場内からは笑いも。

そういえば、歌舞伎でも「出」が難しいとはよく言われますね。

藤蔵さんからは、代々伝わる貴重な床本も披露され、芸の伝承の大切さも感じることができました。

アフタートークで至芸員さんたちの本音や苦労話も聞くことができ、大変充実した時間となりました。

この日、松本は雪で昼間でも1℃という寒さでしたが、行ってよかったです。

▲1℃よー。

1泊して翌日は観光。まずは松本城です♪
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