10月夜の部の水戸黄門。遅まきながらの観劇レポです。
最初、水戸黄門の役を彌十郎と聞いてちょっと不釣り合いのような気がしました。
水戸黄門というと、なんとなく枯れたイメージ。私の中では西村晃だったのかな。
その後里見浩太朗やら石坂浩二がやっているのだから、それほど枯れたイメージでもないのかしらん、みなさんにとっては。
黄門にぴったりはまった彌十郎
彌十郎は今年1月にも主役を演じています。それは『人間万事金世中』の辺見勢左衛門という役でした。この時はちょっといまいちで、やっぱりこの人は主役というよりも名バイブレーターなのかなあと感じたことでした。
だからちょっぴり心配だった今回の「水戸黄門」。
蓋をあければ、諸々の私の心配をよそに「黄門様らしさ」は失わず「新しい黄門様」をあっという間に確立してしまった感がありました。こういうのをニンって言うんでしょうかね。
彌十郎黄門は、磊落で温かかった。本当に人柄そのもの。
回り舞台を使った演出が効果的
蕎麦屋内から外へと変わる、回り舞台をふんだんに活用した大立ち回り。外に広がる景色は今の季節に合った紅葉で、とても美しかった……。
3階にして大正解!幕見で見た人も大満足だったのではないでしょうか?
虎之助、二役で大活躍
初々しい娘、お蝶実は九紋竜の長次という盗賊なんて、まるで弁天小僧。と思ったら本当に弁天小僧のようでした。虎之助、声もよく通りはつらつとしていて最近注目株ですが、今回もメリハリの利いた演技で観ていて気持ちが良かったです。
歌昇、苦悩しつつ成長する殿さまを好演
歌昇は黄門さまの息子で高松藩の殿様となっている松平頼常というお役。最初の方は出てこないし、なんとなく最後に出てきてその場を締める殿様かと思いきや、苦悩し決断し、黄門さまと和解し、成長するという役どころで、とてもよかった。
特に、悪事に加担していた部下を「やー!」と一撃で倒すところは、まさに苦渋・決断・肝・腰の入った素晴らしい一太刀であったと思います。
最後はもちろんハッピーエンド♪
助さん格さんのキャラ設定は?
ちょっぴり疑問だったのは、助さん格さんのキャラ設定。私はあまりドラマの「水戸黄門」を観ていなかったのでわからなかったのだけれど、舞台を観る限り「格さんがちょっと軟派っぽいのかな?もう少し二人のキャラがはっきり対比しているといいのでは?」と感じました。
一緒に行った友人たちは、長年の水戸黄門ファン。彼女らが言うには「助べえの助さん。四角四面の格さんだから、自分のイメージ的にはキャラは逆」とのことでした。
ただし、東野英治郎で始まった当初はそうだったけれど、しばらくするとキャラは逆になり、また元に戻ったそうな。
今回の水戸黄門は宮川一郎作。昭和50年に上演したものを今回齋藤雅文補綴・演出。
宮川一郎は、水戸黄門のドラマの脚本を74回書いているというから、もしかしたら宮川一郎の脚本の時は格さん軟派、助さん硬派。なのかな?裏を取っていないのでわかりませんが、水戸黄門に詳しい人がいたら伺いたいです。
とにもかくにも、そんなわけで「これ、もしかしたら続編がどんどんできちゃうかもね」「全国漫遊の旅を続けたら面白いね」と期待も含めて会話のはずむ楽しい水戸黄門でした。