「初めての歌舞伎を楽しもう」munakatayoko’s blog

すばらしき日本の芸能、歌舞伎。初心者にわかりやすく説明します♪

新・水滸伝 観劇レポ

17日に、新・水滸伝を観た

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中国の四大奇書のひとつと言われる「水滸伝」は、明の時代に創作された。(1368~1644)。江戸時代には日本に渡り、滝沢馬琴などが訳したという。

「新・水滸伝」は、2008年に横内謙介脚本・演出、現猿翁が演出・美術監督として手掛け、初演は、ル・テアトル銀座。2015年に大阪新歌舞伎座で上演し、歌舞伎座では今回が初上演。

 

スーパー歌舞伎と銘打たれてはいないが、スピード(感あり)、ストーリー(現代でも共感できる)、スペクタクル(ケレンの復活)と3Sを兼ね備えた澤瀉屋作品らしいもので、広い歌舞伎座を縦横無尽にダイナミックに使い、華やかな舞台となった。

 

あらすじ

以下、梁山泊独龍岡は地名だけれど、チーム名と考えたほうがわかりやすいかもしれない。


策略にあい、盗賊となってしまったかつてのエリート林冲は、悪党の親分晁蓋に助けられて梁山泊へ。

脱走した林冲を追うのは、朝廷の重臣高俅。執拗に追うのは林冲が高俅の悪事をすべて知っているからだった。

高俅は、梁山泊チームに敵対している独龍岡チームを味方にして何が何でも林冲を捕らえる好機を狙う。

という林冲VS高俅のストーリー。そこに、林冲と彼を慕う弟子彭玘(團子)のストーリー、
さらに独龍岡チームの跡取りの許嫁である青華(笑也)と梁山泊チームの無骨な戦士王英(猿也)との不器用なラブストーリーが絡んでくる。このラブストーリーはめちゃくちゃかわいい。


青華は許婚のある身、しかも敵対する立場。ところが青華の許婚は心のない人間で青華も心をすっかり閉ざしている。それをひげもじゃ無骨な王英が少しずつ少しずつ近づいて心を溶かしていく。二人で月を見ながらお話しているシーンで、王英の足をぶらぶらさせているところがかわいかった。

ようやく心を開いた青華が、王英にもらったドレスを「どう?」と恥じらいながら見せているシーンが群衆の隅っこであったらしいのだが、見損なった!!

昨年大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で横田栄司が演じた和田義盛巴御前みたいな感じだったかな。王英の恋を応援するのがお夜叉(壱太郎)。いいやつ。

 

脇を固めるのは梁山泊チームのリーダー晁蓋(中車)、女親分姫虎(笑三郎)、美貌の殺し屋お夜叉(壱太郎)で、万全。中車もがんばっていたなあ。私が観た17日は声もよく出ていたけれど、その後見に行った友達は声が出ていなかったと言っていたので、つぶれてしまったのだろうか。

 

最期に御馳走!幸四郎林冲の兄貴分として出てきて、大いに客席が湧いたのだが、私の席ではよく声が聞こえず何を言っているのかよくわからなかったのが残念。そのメッセージに感激していた方が多かったようだ。

 

林冲 中村隼人の目を奪うかっこよさ

目を引いたのは、主人公林冲を演じた中村隼人の凛々しい姿だ。素顔は美しいのだけれどどうも白塗りの顔にすると頬張った印象で世間の印象のほどカッコいいとは、私は思っていなかったのだが、最近の成長ぶり、男っぷりはすごい。(2部の新門辰五郎での彦造もよかった)

立っているだけでも大柄なので、舞台映えがする。広い舞台に一人でも、舞台を支配できる。群衆の中にあっても、華がある。スピード感あり、立ち回りでも美しさを保つ。なおかつその上いいのが、声。太くてよく響き、うっとり聞きほれる。

前半の、エリートだったのに策略にあい、追われる立場となり盗賊に堕ちてしまったやさぐれ感、そして後半の自らの使命を悟り、立ち上がってからのリーダーシップなど。どれもよかった。

大きな赤い旗がバッサバッサと振り回され、ツケが派手にうたれ、スピーディーな立ち回りで圧倒し、宙を舞い、ワクワクする舞台だった。

友人と観たが、彼女もとても楽しんでくれた。「面白かったね、『実は~、実は~』が多いと混乱しちゃうけれど、これはわかりやすくて、とても楽しかった~」と息を弾ませていた。
3階のお迎え席で宙乗り林冲をお迎えし、大満足。5500円は安い。
遅くなるので、当初は終わってからすぐ帰る予定だったが、「一杯だけ行くか!」と、歌舞伎座横のプロントでビールを飲んで、楽しく乾杯。
やっぱりこれが楽しいんだよねえ!