2023年1月29日に第2回かぎろひの会が国立劇場小劇場で開催され、私は今回初めて行ってきました。
かぎろひ とは、東の空から射し込む明け方の光、そしてその光で真っ赤に染まった空をあらわす言葉だそう。
かぎろひの会とは、新型コロナウイルスの影響ですべての芸能・文化芸術が活動停止となった2020年、世の中を照らす一筋の光となりたいとの思いから設立された会で、長唄を古典音楽としてだけではなく、今を生きる芸能として伝えることを趣旨としています。
会を立ち上げたのは、杵屋五吉郎(長唄三味線方)・杵屋巳三郎(長唄唄方)・田中傳一郎(田中流囃子方)・福原寛(福原流笛方)の4名。学生時代からの仲良しだそう。40年くらいのお付き合いかな。
コロナって、とんでもない災厄でしたが、副産物としてこういう会ができたのもおもしろいといってはいけないけれど、おもしろいものですね。
今回はほぼ満席。観客からも熱気が伝わります。
素浄瑠璃ならぬ素長唄?いつもは舞台の脇役となりがちな長唄と鳴り物ですが、この日は主人公。私たち観客も集中して音を楽しむことができて、至福の時間でした。
長唄「吉原雀」
遊郭に来る客を吉原雀と洒落た華やかな曲。鳥尽くしの歌詞などを巳三郎さんの高音がいいお声で聞きほれます。華やかに歌ったかと思えばしんみりと、そしてまたにぎやかに。
長唄「狂獅子」
狂い獅子といっても荒々しいものではなく、のどかで艶のある曲でした。
創作曲「かぎろひ」
4人のみなさんがそれぞれ「朝まだき」「かぎろひ」「黎明」「来光」の4つの部分を作曲。どんなにつらくとも開けぬ夜はないという気持ちのこもった作品に仕上げました。照明も真っ暗な夜から次第に明るくなっていく夜明けを連想させ、最後には「我は発つ 我は行く」という歌詞で力強い希望を感じました。語りの声は中村芝翫。
舞台の背景は桜。舞台には鐘こそないものの鐘を連想させる縄が。
「花の外には松ばかり」から始まり、フルで聞けたのでとてもよかった。ここのところ、團十郎襲名12月でも京鹿子娘二人道成寺がかかりましたし、正月浅草では女男道成寺がかかり、さすがの人気作品ですね。
すべて4曲終わると、ほ~っとため息が。幕がいったん閉じ、拍手が鳴りやまずまた幕が開くと、マスクをつけ始めた演者さんたちがまた慌てて取って挨拶をするなどほほえましい風景が見られました。
しかし、終わった後のみなさんの晴れやかな笑顔と言ったら。私も清々しい思いで劇場を後にしました。