8月の歌舞伎座にまた試練が訪れている。
- 休演、代役にて再開の嵐
- 本役を超えてやろうという心意気がすごい
- 猿之助、勘九郎らの気迫が、座を引っ張る
- 心配はあるけれど。
- 私たちを勇気づけてくれた8月の歌舞伎座
- 穏やかな日々を願う
- さて、どうなる。私の観劇?
休演、代役にて再開の嵐
8月15日(月)に1部が中止。
16日17日も中止と発表。
18日。中村福之助、歌之助、鶴松が陽性。19日より、1部は代役にて上演と発表。
18日。3部公演中止と発表。(複数名が陽性)
19日。2部公演中止と発表。(複数名が陽性)
19日。2部3部公演、20日より再開と発表。代役発表は20日。
という目まぐるしさ。文字にするだけでもややこしく、この少ない文字の中に、代役選定、代役の衣裳、かつら、演出変更、台本変更、演出変更による大道具、小道具の手配、中止による払い戻し、などなどなどなど。もちろん役者はセリフを覚えなければならない。
そして、代役が発表される。おおむね当日の10時に発表という目まぐるしさ。
第1部の新選組では主役の歌之助→七之助 福之助→勘九郎、鶴松→中村祥馬 このほか勘九郎の近藤勇役が片岡亀蔵、庄内半蔵が亀蔵に代わり片岡仁三郎。
闇梅百物語でも、鶴松のかわりに中村祥馬。
20日。染五郎も陽性が確認され、幸四郎が濃厚接触者となる。
2部の 安政奇聞佃夜嵐の青木貞次郎 幸四郎→猿之助
3部の 弥次喜多 が團子、染五郎、幸四郎の休演により大幅な代役と演出変更。
弥次さんが市川青虎
凡太郎が染五郎→猿弥
正之助が團子→隼人
その他もろもろの変動。
何が何でも幕を開けたろうという松竹、役者、スタッフの本気を観た想い。
本役を超えてやろうという心意気がすごい
そして、どの演目も気迫に満ちた舞台だったらしい。
それは
「代役だからちゃんとできなくて当たり前ですよね、本役戻ってくるまでの一時しのぎなんで」ではなく
「やったろう!本役より、こっちが面白いと言わせたろう!」という心意気が満ち溢れているからではなかろうか。
猿之助、勘九郎らの気迫が、座を引っ張る
一番すごいのは猿之助だろう。
勘九郎七之助も、初日から完璧な演技だったそうだし、本当にすごい。けれどももともと「新選組」の漫画を愛読しており、いつか歌舞伎にと思いながらちょっと年齢が少年剣士には無理があるということで、若手の歌之助、福之助に話を持っていったという経緯があるから、まだわかる。やってくれそうだと思う。それでもすごいけれどね。
けれども猿之助は? 2部の「安政奇聞佃夜嵐」は長く上演されなかった演目。古典だからよくなじんでいるというわけでもない。主役の青木貞次郎はセリフも多いし、簡単ではない。それを、噂では1回の稽古で覚えてしまって本番に臨んだらしい。これは伝聞だから確かではないけれど、時間的にそれほど余裕がなかったのだから当たらずとも遠からず。
もしくは、常にこういうリスクを念頭に入れて、あらかじめすべての役の台本を叩きこんでいたとか?いやー。どちらにしてもすごい。
そして3部の主役の喜多さんまでやって、代役の猿弥、青虎、隼人を引っ張っていく。
代役初日には、最後に花道に出てきて「こういう状況で、お目汚しの部分もあったかと思いますが、どうか歌舞伎をこれからも支えてください(意訳です)」という挨拶をしたとのこと。
「陽性者出ました、休演です。みんながっかり。暗くなる。」ではなく、逆手にとり、本役より、おもしろくしてやろうぜ!という気迫が素晴らしいと思う。応援したい。
特に染五郎のかわりに猿弥という意表をついた配役…。
また、休演となった役者も悔しいだろう。しかも自分の代役が評判を取ったらどれほどくやしいか。それはまた、次なる舞台へのエネルギーに変えてほしい。
心配はあるけれど。
もちろん、「そんなことやって、感染は大丈夫なの?」という心配もなくはない。休演にしたほうがよいのでは?という声も少し聞こえてくる。
心配は尽きない。私などは9月の秀山祭が無事開催されるのかが心配でしょうがない。8月は割と若手が多いので無理も効くかもしれないが、9月はお年を召した方もいるし…。
私たちを勇気づけてくれた8月の歌舞伎座
それでも、何があっても幕を開けるという気概は、私たちをも勇気づけてくれる。明るい気分にさせてくれる。何かふつふつと元気が湧いてくる。
ちょうど、戦争中に空襲があっても芝居をやっていたというのはどなたの話だっただろうか?空襲警報がなると芝居をやめ、空襲警報が鳴りやむとまたごそごそ出てきて芝居の続きをやったというのだ。その話を思い出す。
これからこういう状況が常態となるのであれば、若手や名題下の役者にだってチャンスがいつどんな形で訪れるかわからない。常日頃、どれだけ努力をしているかがモノをいうはずだ。
「いつだれが倒れるかわからない。常に準備をしておけ。セリフを盗んでおけ。すべての演目のだ」そんな猿之助の檄が聞こえてくるよう。
穏やかな日々を願う
ところで、ネット環境に疎いお年寄りの歌舞伎ファンには一体情報はいっているのかどうか?気になるところ。
昨日お会いした方は、ネットをやらない歌舞伎ファン。毎月歌舞伎座に通っており、8月ももうすべてご覧になったようだったが、一連の騒ぎを全くご存じなかった。
「あら、そうなの?勘九郎と七之助が新選組の主役に?まあ」とビックリされていた。
最初のころは休演となると手紙が郵送されてきたが、このところの急な中止、代演の騒ぎだと郵送などと言っている暇はないだろう。郵送書類が届いたころにはまた状況が変わっていそう。行ってみたら、歌舞伎座が閉まっていたとかごひいきの役者が出ていなかったということもあるだろう。ちょっとそこが心配ではある。
どうか穏やかな日々に戻ってほしいと願うばかりだ。
さて、どうなる。私の観劇?
さて、実は私は3部をまだ観ていない。観劇予定は25日。いったいその日は誰が出て、何をやってくれるのか。そもそも幕は開くのか。サスペンス劇場のようだけれど、神のみぞ知る。
本日より、幸四郎復帰。