6月昼の部のしょっぱなは、妹背山婦女庭訓です。
ちと、しっかりおさえておきましょう。予習なしでいくと、5分で爆睡です!
予習しておくと、おもしろいですよ♪
予習する場合も「三笠山」で予習しましょう。「吉野川」は和製ロミオとジュリエットなんて言われていますが、「三笠山」は見てても見ててもロミオとジュリエットになりません(;’∀’)
妹背山婦女庭訓は、1771年(明和8年)1月に大坂竹本座で人形浄瑠璃で初演。
作者:近松半二・松田ばく・栄善平・近松東南ら。後見:三好松洛。歌舞伎での初演は同年8月
大化の改新(645年)が題材。
三段目の「吉野川」と四段目の「三笠山御殿」が上演回数が多いけれども、今回は「三笠山御殿」です。
カンタンあらすじ
悪人蘇我入鹿をやっつける話です。蘇我入鹿は超人的パワーを持つ悪人なので、そんじょそこらのやり方でやっつけることができません。必殺アイテムが必要です。ひとつは手にいれたけれど、もう一つのアイテムを手に入れるのが、今回のお話。
恋愛も絡んできます。しかも三角関係。しかもアイテムがらみで一人は死んじゃいます。
おもしろそうでしょう?
ではいってみよう!
登場人物
・曽我入鹿(楽善) 悪い奴。藍隈という隈取の中でも「公家荒れの隈」をしており、最高の敵役です。白塗りの上に藍色の筋をいれるもので、陰気なすごみや冷たさ、邪悪をあらわしています。
母親が、白い雌鹿の生き血を飲んで入鹿を懐妊したことから超人的なパワーを持つ設定。敵となる藤原鎌足を追い出し、ますます権力を掌握しつつあります。
まず舞台中央ど真ん中の悪そうな奴がそれです。
・求女実は藤原淡海=藤原鎌足の息子 (松也)
・橘姫(新悟)入鹿の妹。求女のことが好きだが、求女は、兄(蘇我入鹿)を仇と狙う人なので、兄と恋人の板挟みとなる。
・漁師鱶七 (松緑) 実は、藤原淡海の手下、金輪五郎今国。藤原鎌足の手紙を持ってくる。やけにざっくばらんな物言い。豪放磊落。蘇我入鹿に酒を持ってきたが、入鹿が「毒でも入っているのでは?」と飲まないため、自分で全部飲んでしまったり、寝ているところを襲撃されても意に介さなかったり。
・杉酒屋娘お三輪 (時蔵) 求女のことが好き。求女につけた苧環を手繰り手繰り追ってきたが、会えない。女官たちに囲まれて意地悪される。
・女官Aグループ 入鹿の世話をするのは美しい女形の女官たち。女形たちがつとめる。
・女官Bグループ お三輪をいじめるのは、立ち役の怖い女官たち。立ち役たちがそろいもそろって、怖いどすの効いた声でお三輪をいじめる。
このお話のポイント
・悪い奴をやっつける 曽我入鹿(楽善)vs 求女実は藤原淡海&漁師鱶七
・ふたつの恋愛模様 橘姫→求女 お三輪→求女
・お三輪の恋の哀しい結末
それまでのお話から以下を押さえておこう。
藤原淡海は、其原求女と名前を変えている。隣に住む酒屋の娘お三輪と深い仲。橘姫とも深い仲だが、橘姫が入鹿の妹とは断定できていない。怪しいと思っている。七夕の夜にお三輪と橘姫が鉢合わせ、橘姫は逃げていく。正体を追うために求女は、糸を橘姫の着物につけ、苧環(おだまき)を手に取り後をつける。お三輪も求女の着物に糸をつけ、苧環を手に取りあとを追う。
入鹿はどれほど悪くて強い奴なのか。
・天皇を追い出し、宮廷を乗っ取ってしまった。しかも不死身の悪人ナノダ。
誰が入鹿をやっつけることができるのか。
・藤原鎌足しかいない。が現在行方不明。藤原淡海はその息子。
・入鹿を倒すためには、どうすればいいの?
入鹿は、めちゃくちゃ強くて悪のパワーを持っている。
子どもに恵まれなかった母親が白い雌鹿の生き血を飲んで懐妊したから。殺すためには、二つのアイテムが必要だ。「爪の黒い鹿の血」は手に入れた。「嫉妬に狂って疑着の相になる女の生き血」がまだない。そのふたつを混ぜ、笛に注ぎ、その笛を吹かないと倒すことができない。
お話の展開
1蘇我入鹿登場
・蘇我入鹿が権力の座につき、政権を掌握しようとしている。三笠山に御殿をつくり、ますます意気揚々。
【見どころ】曽我入鹿の隈取。
2鱶七登場
・鱶七登場。藤原鎌足の書状を持ってくるが、入鹿は気に食わない。鱶七のことも全面的に信頼できず、人質にすることに。鱶七を殺そうと毒を飲ませようとしたり、鱶七が寝ているところをやりで突いたりする。鱶七は酒は飲まずに庭の菊にかけると、花がしおれる。
【見どころ】鱶七の豪放磊落なところやトンチンカンな衣裳。言いぐさ。お酒を全部飲んでしまったり、やたら馴れ馴れしいしゃべり方であったり。菊がしおれちゃったりするところ。
3橘姫登場
・橘姫登場。曽我入鹿の妹であり、求女の彼女。着物の裾に糸がついている。官女たちが糸を手繰ると求女が現れる。
4求女登場
・恋人の求女(実は藤原淡海)が糸を手繰って、登場。橘姫は求女と会えたものの、兄の曽我入鹿と求女は仇同士。求女は自分の正体を知るからには生かしては置けないと、橘姫を殺そうとする。
・殺してください。覚悟を決める橘姫。
・求女は、入鹿のもつ皇室の宝「十柄の剣(とつかのつるぎ)」を取り戻してくれれば結婚しようという。
5お三輪登場
・お三輪登場。お三輪は、苧環の糸が切れたから求女を見失ったとぷりぷりしながら追ってきた。お城に迷い込む。きょろきょろして、庶民の娘らしさが出ている。
・求女が、夕方には祝言をあげるという情報を得る。なんとしても阻止したい。
・官女たちがでてきて、田舎娘をいじめ、歌を歌わせたり、舞わせたり。さんざんにいじめる。
・そこに祝言の音楽が聞こえる。
・お三輪の表情が変わる。嫉妬に狂ったお三輪が、髪を振り乱して駆け込もうとする。
6 鱶七が出てくる
・鱶七がお三輪を刺す。
・お三輪怒り狂う。
・「それでこそ高家の北の方」と鱶七。なんでやねん?
鱶七が語るには
求女は、実は藤原の鎌足の息子、淡海なんだよ。お三輪ごときが相手にできる人ではないわけ。でもね、お三輪も役に立ったんだよ。嫉妬に狂ったお三輪の生き血が取れたから、これで蘇我入鹿をやっつけることができるわけ。
・それを聞き、ああ。そんなにお役に立てるならよかった。でも最後に求女(淡海)に会いたいわと、糸を結び付けていた苧環を探し、糸をたぐるが、求女は見つからず。糸切れていましたものね。役に立つことを喜びながら静かに息絶える。
というお話でした~。非情ですね~。
アイテムの設定が、すごい発想ですよね!