今月の文楽は、国立劇場小劇場にて一谷嫩軍記を通しで上演しています。私は2部の、寿式三番叟・一谷嫩軍記(弥陀六内の段、脇ヶ浜宝引の段、熊谷桜の段、熊谷陣屋の段)を見てきました。
寿式三番叟は、国立劇場50周年の祝いということで、めでたく楽しく演じられました。
一谷嫩軍記といえば、熊谷直実が敦盛の首と偽って、自身の子ども小次郎の首を切ってしまう悲劇です。当初自分の子どもが死んだと思って嘆く藤の局と小次郎の母相模の立場が逆転するところも、知っているだけに「おいおい、余裕なのは今のうちだよ」と声をかけてあげたくなってしまいます。
だから、頭の中で「今日は悲劇だぜ~」と脳内シュミレーションで臨んだのですが、意外とコミカルな場面も多く、楽しめました。ほっとする笑いの部分を、ちゃんと入れてくれるのですね。そのせいで、そのあとの悲劇がより際立つという部分もありますけれど…。
コミカルというのは、常にはあまり上演しないのでしょうか、脇ヶ浜宝引の段のことです。のんきにぞろぞろと出てくる百姓どもと、侍とのやり取りが楽しめます。若干長いけど(笑)。
楽しいけれど、これめっちゃ義太夫泣かせではないでしょうか。なにせ出てくる百姓は、雀忠、びしや五、喉たん、歯抜け与、吃又、石弥陀、茶碗五郎、釣りいぼ、総〆十、という面々。名前からわかるように、歯が抜けている人とか吃りの人とか、喋り方に癖のあるやつばかり、それに加えて、敦盛、娘小雪、藤の局、女房お岩、石屋(実は弥平兵衛宗清)と登場人物多っ!
石屋(実は弥平兵衛宗清)なんて、「今は庶民のふりしているけど、本当は武士だからね」という雰囲気をそこはかとなく出さないといけません。
これを全部ひとりの義太夫さんが、声を変えて演じます。す、すごいです。
この百姓どもが、「これまで平家の領地に住んだご恩のため、何と一働きせうぢゃないか」と追っ手の梶原景時配下の郎党相手に、ぶんぶん鋤鍬をふりまわしてやっつけるんです。
そして運平という追っ手をついに殺しちゃうのですが、そこの描写はこうですよ。
運平を追っ取り捲き、投げたり、踏んだり、蹴飛ばしたり、つめつたり、噛んだり、こそぐったり、かいたり、なめつたり、ひねつたり、ついたり、ゆさくつたり、ひつぱつたり、よつてかかつてうち叩く 急所にや当たりけん(ここで、チーンの効果音あり笑)『ウン』ともなんともいはずに白眼をぐつとむいて死してんげり」
舞台では、百姓どもがリンチ…(^_^;)
そして、急所にあたって死んじゃったんです。ここは、もちろん義太夫なんで、今みなさんが読んだように、ズラズラと30秒ほどで読まれるわけではありません。
そのあと、本当に死んでいるかどうかなど、延々と続くのですが、それは略します。
でも、この段に関しては、小学生の男の子でもとても喜びそうですよ♪
さて、本日のセクシー文楽はこちら!ヽ(´▽`)/
戸をほとほとと叩く音(ほとほとと叩くって、面白い表現ですね!)
来てくれたみたい!と喜び勇んで 胸せかれ
「顔は上気の恥ぢ紅葉、差し俯いてもぢもぢと、」っていい感じ♪
もじもじと紅葉をかけていますね。
そして、もじもじしていないで、やっちゃえやっちゃえと、無理やり部屋に二人きりにした下女お岩。
無理やりにおしやり突きやり後ぴっしゃり
『ああ、世話やの、どうやらかうやら首尾なつた、これから休もとままなれど、たつた一重の壁越しに隣の餅搗き聞くようで、ねられそむない夜さりぢゃ』
とぼやくのです。
結局餅搗きは聞かれず、ふられちゃうのですけれど、「餅搗き」って!ヽ(´▽`)/
さて、下女のお岩とは違って、藤の局、相模はさすが品があって所作が美しいです。
身をよじっても、体勢が崩れても、斜めに体を入れるから決して大股開き、どーんみたいなことにはならないんですよね。
ちょっと思い出しました。リオ五輪の閉会式で和服を着つつも、旗をぶんぶんふりまわして大股開きになっていた人のことを…。
旗を渡したあとも(土砂降りの中、気の毒ではあったけれど)外股になっていたあの人のことを…。
ちょっと体を斜めにしてみたり、内股にすることでもう少しかっこよくなったのではないかな…などと、思いを馳せ、ぜひあの方には文楽を一度見て、人形から所作を学んで欲しいものだななどと、ふと思ってしまったのでした。
さて、今回の文楽は9月19日まで。ぜひみなさんも楽しんできてくださいヽ(´▽`)/
あ。そうそう。お弁当は、2部が始まった時点で、すでに少ししかありません。中の「十八番」で食べるか他で調達してきたほうがよいかもしれません。
焼き鯖寿司は、小さめの焼き鯖寿司が4つ入っていて美味しいです。満腹にならなくてよいかも。