1日に、9月の歌舞伎座秀山祭・初日に行ってきました。夜の部。大変美しいです。
演目は、吉野川 らくだ 元禄花見踊 の3つです。
毎年9月に行う秀山祭ですから、季節にこだわりすぎると演目が限定されてしまうからでしょうか。「吉野川」も「元禄花見踊り」も春の演目なので、ちょっと違和感あります。
▲緞帳も秋と春がいりまじり…
けれども、ぶつくさ言っていたらFBのグループの方が玉三郎さんの公式サイトを教えてくれました。そちらの玉三郎の今月の言葉によれば
この9月のまだ残暑の有る時に桜の演目が二題続きますのも皆様にお恥ずかしい気も致しましたが、会社とも相談しまして「今の時代には華やかなものがよいだろう」ということになり季節外れの桜二題でございます。
とのことです。玉三郎公式サイトより。もうぶつくさ言いません!笑
さて、この秀山祭・夜の部で、もし初めて歌舞伎を観に行く人、一幕見で見るのなら、私は「らくだ」か、「元禄花見踊り」をおすすめしたいと思います。
明るくて、楽しめる「らくだ」は、「え?こんなものも歌舞伎なの?」と意外な新鮮さを感じさせてくれるでしょう。元は落語で、仲間が死んだことをいいことに「お酒と煮しめを大家に出させよう」という遊び人(松緑)。使いにやらされる小心者のクズ屋(染五郎)とケチな大家(歌六)とのやり取り、遺体(亀寿)が動くのがおもしろい。
今回は吉野川が重い芝居。花見踊りが美しい踊り。その間にあって、ほっとできて、楽しい芝居がこの「らくだ」。観客のみなさん、本当に心の底から楽しんでいましたね。
松緑、初日でまだちょっとセリフがついていなかったですけれど、次第にべらんめえ調にも油がのってくることでしょう。松緑は、私は好き嫌いというより、応援しているんです。おじい様の松緑もお父様の辰之助も好きだったので、頑張って欲しいなという思いです。
死体を踊らせて、大家を脅すというとんでもない奴なんですけれど、どこか憎めない。死体の踊りも見ものですが、めでたく(?)酒をゲットし酒盛りをしていると、小心者のクズ屋が酒癖が悪くて次第に人が変わってきて…という、おもしろい芝居です。
貧乏長屋の話ですから、汚い衣装に崩れかけた長屋という舞台で、美しさには欠けますが、「なんだ!歌舞伎ってこんなに楽しいんだ!」とわかってもらえるのではないかと思います。
いえいえ、せっかくの歌舞伎なのだから華やかで綺麗なものを観たいと思うなら、「元禄花見踊り」をぜひ!本当に美しくて、玉三郎の美しさ、元禄の男たち、女たちの美しさに酔ってしまいそうです。
幕が開けると、上からチラチラと桜吹雪。そしてその下に玉三郎。これだけでもう,ヤラレマス。
玉三郎もいい意味で、力が抜けている感じで、ほかの皆さんと楽しんでおり、とても美しかったです。ちなみに、「らくだ」で遺体役だった亀寿が、こちらの舞台では、いと美しき元禄の男として、たおやかに踊っております笑。
この踊りは、私は初めて見ましたが、昭和30年4月、平成9年3月、21年9月、24年3月、と最近よく演じられているんですね。9月は2回目なんですねえ。
特にストーリーもないので、外国人の方や、綺麗なものを観たいという人におすすめです。一瞬のうちに衣装がかわる「引き抜き」を見ることもできます。
さて、吉野川に戻ります。
美しい舞台でした。私は3階席の一番前でしたので、両花道のやりとり、舞台上の脊山、妹山の掛け合いなどがとてもよく見えました。
吉野川というのは「妹背川婦女庭訓」の三段目です。
歌舞伎版ロミオとジュリエットとも言われ、仲の悪い家同士の子どもが愛し合ってしまうのですが、政治もからんで悲しい最後を迎えます。
吉右衛門=大判事清澄 染五郎=久我之助 定高=玉三郎 雛鳥=菊之助 という豪華布陣。4人ともすばらしかったです。
吉右衛門は、やっぱりこういう役が堂々としていてすばらしいです。吉右衛門のためにあるような役でした。2月に籠釣瓶を見ましたけれどやっぱりこちらのほうが、断然合っている。
そして玉三郎。母親定高役ですが、その苦悩、悲しみなど表現力が凄まじく、グサグサきます。
哀しく、楽しく、美しく、満足の夜の部でした。
パンフレットも美しい
お土産は聖護院八つ橋の歌舞伎座バージョン。ペロンと紙を丸筒のまわりに貼ってあるだけでしたけれど(笑)。