『一本刀土俵入』に出てくる取的(とりてき) 駒形茂兵衛にモデルがいるのを知っていますか?
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取的ってあまり今では使わない言葉ですが、力士の中でも最下位のもののことだそうです。
駒形茂兵衛のモデルは、十両のころから六代目尾上菊五郎がかわいがっていた真砂石という力士で、役作りをする上で、弥八に頭突きをするあたりの動きをこの力士からとったそうです。
「土俵入り」の芝居のモデルになったと喜んでいたら「取的のところで使うんだ」と言われて、「うれしいような、うれしくないような」と言っていたそうな。
ちぇっ、取的かよ~っというところでしょうか。
この真砂石。大錦という大関と取り組むことになり、どうせ勝てっこないと嘆いているので、六代目が「長くとっていたら、かなわないが、ウロウロしているとむこうにちょっとしたすきがある。そこへ突進しろ」とアドバイス。
6代目が市村座にいると、マワシをしたまま楽屋にきてオイオイ泣いたそうです。
「負けたのか」と聞いたら、「勝ったんです」としゃくりあげたとか。
うれしかったんですね。なんだか茂兵衛を彷彿とさせるようなエピソードですね。
戸板康二の「歌舞伎 ちょっといい話」に載っていました。
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